「2045年、Worst・World・Work社(WWW社)の技術により、
全世界の人間へ「プレジール・システム」が導入されました」
「プレジール・システム、PSとは、その名の通り「快楽システム」
人間の脳とコンピュータを繋ぎ、より「快楽」な生活を提供するというものです。
国によって様々ではありますが、脳へのPSインストールは義務では無いのです。
ですが、様々な利点や、PSインストールは無償で行われるという事から、
2058年現在、日本人の99%以上はインストールを行い、【PS脳】となっています、そして・・・・・」
歴史の小早川先生の説明をぼーっと聞きながら、
僕は、窓からグラウンドで行われている、隣のクラスの体育の授業を眺めていた。
どうやらソフトボール授業らしい。
ピッチャーを務めている、女が力いっぱいのストレートで、バッターの男を三振に収めた。
政府は「男女平等」を謳っているらしく、学校や仕事など様々な箇所で基本男女混合である。
一昔前の「男女平等」は、名ばかりの「女尊男卑」パターンが多かったのだが、
PSの導入により、本当の意味での「男女平等」になった、らしい。
らしいというは、僕が物心ついたときには、既にPSが存在しており、
PSの無い時代をあまり知らないからであるが・・・・。
「・・・・のように、PSの導入により人々の生活は飛躍的な向上を遂げ、
現在の君達が知る、日本となったのです。さて、無闇君。ひとつ問題ですよ。」
いきなり自分の名前を呼ばれた僕は、少し驚きながら「はいっ?」と返事をした。
「PSの導入により便利になった世の中ですが、なぜ全てのものがPSのみに対応した製品でなく、
20世紀と同じような機器が残っているか、わかりますか?」
男子生徒の憧れの的、小早川先生はやや悪戯めいた顔で問いかけてきた。
なぜ僕なんだと、思いつつ少し間をおき、
「今までの生活から変化したくないという考えの人もいて、全員がPS脳の望んでいるわけではないので、
PS脳では無い人も使えるように配慮したため、だと思います」
と答えた。
「ん~、半分正解!」
先生は僕の答えを予想していたのであろう、にこやかな笑顔で即座に返答してきた。
「PSのインストールは、望めば誰もが行えますが、稀にPSをインストールできない脳の人もいます。
ですので、インストールができない人を考慮し、国はすべての製品に非PS脳の人でも扱える機能を付属させることを義務としているのです。
もちろん、無闇君が答えたように、PS脳を望んでいない人のためでもありますけどね」
と、先生の説明が終わったと同時に、チャイムがなる。
「さて、今日の授業はここまでです。今日教えたところは再来週のテストの範囲だから、しっかり復習しておくように!」
【テスト】という単語に反応した嫌そうな生徒の声をよそに、小早川先生は教室を出て行った。
まとめて読む
「いらっしゃいませー!ってなんだ創ちゃんかー」
僕が喫茶店のドアを開けたとたん、マスターがそんな言葉を発してきた。
「なんだとはなんですか。コレでも立派な客ですよ」
毎度のやり取りをしながら、僕はいつものカウンター席へ座ると、
何かを作りながら「高校はどうだい?」とマスターは尋ねてきた。
マスター。本名は香取雄介。年齢は29歳だっけな。
放課後、この喫茶店に立ち寄るのが僕の日課になっていて、
中学校1年の時から、もう4年目に突入している。
「まー、いつもどおりですよ。特に変化もない日常って感じです」
「年寄りみたいなこといってんじゃないよー」
と、苦笑いしながらマスターは言った。
「ほい、いつものカフェ・ラテ」
頼んでもいないのに「いつもの」飲み物が目の前に置かれた。
前までは代金を請求されなかったのに、ある事柄以降は普通に請求される様になってしまったカフェ・ラテ。
「『いつもの』ありがとうございます」
そういいながら、カフェ・ラテを口につけ、ぼーっとしてると、
マスターが掌を向けて、右手を僕の前に出してきた。
「ほい、『いつもの』お仕事」
「また、ですか?最近多い気がするんですけど・・・・・」
「まー、そういうなって!俺よりお金稼げるんだからいいじゃないの!」
どうせ、スポンサーから儲けてるくせに・・・・・。
と言いたくなるのを押さえ、僕はマスターの右手に合わせるように左手を近づけ、
『ACCEPT』
と、頭の中で命令した。
その直後、僕の頭の中に情報が流れ込んでくる。
【海原香月、年齢17歳、私立海神高校3年、家族構成は、父親、海原文人、母親、海原恵子の3人家族】
【PS脳になったのは、5歳のとき。小学校へ入学するにあたり、必要を感じた両親によりインストール】
【PSへの適応率は高く、83%。適応率の高さのおかげか、成績は常に優秀。だが現在特定の彼氏なし】
・・・・・・相変わらず対象が女だと、彼氏の有無が情報についてくるのはマスターの趣味だ。
【『異変』が起こったのが3日前。学校での授業中倒れ、そのまま病院へ救急車にて搬送。現在も入院中】
【現在も、意識不明。医者曰く『過度適応』3%高い適応率が、脳へ負担をかけていると判断。他調査中】
「らしい」
と、最後は口でマスターが僕に告げ、手を下げた。
「で、症状は?」
「それがさ、まだ発症はしてないのよね」
「発症してないのに、仕事の依頼ですか?」
「んまー、念のためってところさ。俺は心配性だからねー」
「なら、僕の仕事かどうかはまだ判らないですね」
そういって、カフェ・ラテを飲み終え、席を立つ。
「ごちそうさまでしたー」
「ちょっと創ちゃん!代金!」
「さっきの共有のときに送ってますよ」
え?見たいな顔をするマスターをよそに、僕は店を後にした。
僕が喫茶店のドアを開けたとたん、マスターがそんな言葉を発してきた。
「なんだとはなんですか。コレでも立派な客ですよ」
毎度のやり取りをしながら、僕はいつものカウンター席へ座ると、
何かを作りながら「高校はどうだい?」とマスターは尋ねてきた。
マスター。本名は香取雄介。年齢は29歳だっけな。
放課後、この喫茶店に立ち寄るのが僕の日課になっていて、
中学校1年の時から、もう4年目に突入している。
「まー、いつもどおりですよ。特に変化もない日常って感じです」
「年寄りみたいなこといってんじゃないよー」
と、苦笑いしながらマスターは言った。
「ほい、いつものカフェ・ラテ」
頼んでもいないのに「いつもの」飲み物が目の前に置かれた。
前までは代金を請求されなかったのに、ある事柄以降は普通に請求される様になってしまったカフェ・ラテ。
「『いつもの』ありがとうございます」
そういいながら、カフェ・ラテを口につけ、ぼーっとしてると、
マスターが掌を向けて、右手を僕の前に出してきた。
「ほい、『いつもの』お仕事」
「また、ですか?最近多い気がするんですけど・・・・・」
「まー、そういうなって!俺よりお金稼げるんだからいいじゃないの!」
どうせ、スポンサーから儲けてるくせに・・・・・。
と言いたくなるのを押さえ、僕はマスターの右手に合わせるように左手を近づけ、
『ACCEPT』
と、頭の中で命令した。
その直後、僕の頭の中に情報が流れ込んでくる。
【海原香月、年齢17歳、私立海神高校3年、家族構成は、父親、海原文人、母親、海原恵子の3人家族】
【PS脳になったのは、5歳のとき。小学校へ入学するにあたり、必要を感じた両親によりインストール】
【PSへの適応率は高く、83%。適応率の高さのおかげか、成績は常に優秀。だが現在特定の彼氏なし】
・・・・・・相変わらず対象が女だと、彼氏の有無が情報についてくるのはマスターの趣味だ。
【『異変』が起こったのが3日前。学校での授業中倒れ、そのまま病院へ救急車にて搬送。現在も入院中】
【現在も、意識不明。医者曰く『過度適応』3%高い適応率が、脳へ負担をかけていると判断。他調査中】
「らしい」
と、最後は口でマスターが僕に告げ、手を下げた。
「で、症状は?」
「それがさ、まだ発症はしてないのよね」
「発症してないのに、仕事の依頼ですか?」
「んまー、念のためってところさ。俺は心配性だからねー」
「なら、僕の仕事かどうかはまだ判らないですね」
そういって、カフェ・ラテを飲み終え、席を立つ。
「ごちそうさまでしたー」
「ちょっと創ちゃん!代金!」
「さっきの共有のときに送ってますよ」
え?見たいな顔をするマスターをよそに、僕は店を後にした。