第四章「読者は選べない」
そろそろ具体的にコメント増を狙える行動について書く予定でしたが、その前に、そもそもコメントをつけてくれる存在である読者についてまとめておいた方が良いと思い、この章を記します。
大手投稿サイトに成長してしまった新都社には、たくさんの作者がいるのと同様に、膨大な数の読者(兼作者)がいます。彼らは当然皆一人一人違った人間であるので、誰もがあなたの作品に好意的なコメントを寄せてくれるわけではありません。それまではあなたの作品の愛読者であった人が、自分の気に入らない展開になった途端悪態を吐き始めるかもしれません。何かのきっかけで、作者の人間性が気に食わないと、作品に関係のない誹謗中傷を受けるかもしれません。時には作品など読まず、ただストレス発散のためだけに悪意のあるコメントを残していく人までいるかもしれません。
創作活動を始めて日の浅い人に多いのですが、気楽に描いた自分の作品が叩かれるなんてことは想像もしていなかったがために、傷ついて筆を折ったり、怒りに身を任せて暴れるといった行為に走ることがあります。そのことで新都社を嫌いになったり、人間不信になる人もいるのではないでしょうか。
それは気楽にコメントを送れてしまうことの弊害であるかもしれません。
匿名性の高いコメントシステムに問題があるのかもしれません。
VIP発という点がいけないのかもしれません。
ネット上であるというのがそもそも間違いなのかもしれません。
では、どこでならいいのでしょうか。
週刊少年ワロスでしょうか。
週刊少年マウスでしょうか。
偽都社でしょうか。
pixivでしょうか。
あるいは漫画サイトにこだわらず、個人サイトでやっていればいいのでしょうか。
もしくはWEBで発表などせず、友人や家族にだけ見せるとか、雑誌投稿にだけ専念するとか。
そうすれば少なくとも「死ね」「二度と漫画描くな」「出ていけカス」といったコメントからはおさらば出来ます。
別にそれは逃げでもなんでもありません。作者にとってストレスのかからない発表場所、発表形態を選ぶのは当然のことです。
しかし個人サイトでは読者の反応が激減します。
友人や家族は愛想笑いの奥に「勘弁して」という想いを包み隠しているかもしれません。
プロデビュー出来たとしたら、新都社で発表する以上の読者を得られるわけですから、叩きや黙殺といった反応は作者にずっと重くのしかかるでしょう。
創作をし、発表する以上、あなたの作品を愛してくれる読者にだけ読まれ、永遠に優しい言葉だけをかけてもらえるなんてことは不可能です。
煽りや叩きや黙殺が怖いのなら、作品を発表しない道を選ぶのが懸命です。そうすれば誰もあなたを叩きません。その代わり、誰もあなたの作品を愛してはくれませんが。
次に、どのような読者たちがいるのか見ていきましょう。
商業漫画を読む際に、「雑誌派」「コミックス派」という呼び方があります。
「コミックス派」というのは、雑誌連載は読まず、単行本が出てからまとまって読む方々です。新都社でいうならば、その作品のページだけをブックマークしている固定読者といったところでしょうか。彼らはブックマークの一つとして巡回しているのであって、それらの漫画が新都社に登録されていることすら知らない場合があり、コメント欄が他の作品と比べて穏やかだったり、交流の場のようになっていることがあります。
代表的なのは
『オーシャンまなぶ』(2010年2月、新都社登録解除)
『Letter』
『冥土Haaaan!!!』
などです(でした)。
彼らコミックス派(ブックマーク派?)は、基本的にその作品が好きなのであり、作者を応援してくれます。こういう読者を多く獲得していれば、安定してコメントを貰えるとも言えます。ただし熱心な読者である分、更新が滞ると作者へ強いプレッシャーをかけてきたり、一度反対読者(アンチ読者)に回ると、一般的な批判者よりもきついことを書くようになったりします。ただ、そもそも彼らを獲得するまでの道のりが簡単ではありませんから、獲得前に心配しても仕方のないことです。
次に「雑誌派」。ほぼ一般的な新都社読者層です。新都社にアップされている作品を雑多に読み、大好きな作品が更新されれば目の色を変えてクリックし、面白ければ面白いと、つまらなければつまらないとコメントを残し、特に何も感じなければコメントを送らない、そんな人たちです。読者兼作家が多い分、作家としての視点でものを見る人が多いことが、一般的な商業誌への感想とは違う点であるかもしれません。新都社で分類されている雑誌(「週刊少年VIP」「週刊ヤングVIP」「月刊コミックニート」「別冊少女きぼん」「文藝新都」「ニートノベル」)のうち一つしか読んでないという、文字通りの雑誌派も中にはいます。自分の連載している雑誌しか読まない、という作家先生がそこそこいると聞きます。「ヤング」には子供が見てはいけない漫画があったり、少女漫画を苦手とする男性の割合が多くて「きぼん」が不利だったりで、「少年」「ニート」の固定読者層が比較的多いと思われます。「文藝」「ニノベ」は携帯電話から読む読者層があります。
次にあげる「作者観察派」とでもいうべき層は、なかなか語るのが難しい層です。
作者と読者がダイレクトに繋がることが出来る分、感受性豊かな作者はコメントに強く影響されてしまいがちです。それが、「コメント数がたくさん貰えたから嬉しい!」という作家の反応に対して「喜んでもらえた、次もコメント送ろう」といった良い結果になれば問題ありません。しかし「コメントあんまり貰えなかった。俺って才能ないのかな」などという作者の呟きは「俺はコメント送ったのに!」「この人はコメント少ないと落ち込むのか。じゃあ今度も送らないでおこう」といった、負のスパイラルを生み出す原因になることがあります。
一読者が本気で愛している作家の数なんてごく一部です。その他大多数の作家なんて落ち込もうが投げようがどうでもいいことです。ちょっとつつかれただけで反応してしまう作家は、作品以上に興味を持たれて、おもちゃにされてしまうかもしれません。これを軽く流せたらよいのですが、ネット上での人のあしらいに慣れていなかったり、スルーする能力を鍛えていないと難しかったりします。
コメントに過敏に反応してしまう方は、観察されてしまう機会を作らないよう、ブログなどに手を出さない方がいいかもしれません。作者コメントなどで即座に反応するのも、大抵の場合火に油を注ぐだけです。
また、これは新都社というより投稿サイト全般に言えることですが、女性作家が恋愛系の話を書いているというだけで「ナンパOK」と解釈して、口説きにかかる人たちがいます。せっかくいい作品を書いていたのに、嫌気が差して去って行く人もいます。女性作家は、最初の内は性別を公表しない方がいいかもしれません。
これらの読者層は混じり合っています。また、人気作家になれば自然にいろんな層から読者を得ます。読者を選り好みすることは出来ません。極端に読者層が偏っている作品であっても、発表する以上、全ての人の目に触れる可能性を持っているのですから。
読者の中には天使もいれば悪魔もいます。編集者もいれば怪物もいます。評論家の数なんて数えきれません。要するに彼らは人間です。ある時は気軽に「面白かった」とコメントをくれることもあれば、熟考の末何も書いてくれないこともあるでしょう。どんな人気作品でも批判的なコメントはあります。いやむしろ人気作品だからこそ批判的なコメントも多く来ると言えます。あまりに酷い場合はコメント削除や、運営にアクセス規制を依頼するといった手もあります。ですが基本的に読者の反応を作者がコントロールするのはほぼ不可能と考えておいたほうがよいでしょう。
怖がる必要なんてありません、とは書けません。現に私も、自作品のコメント欄に罵倒の嵐が吹き荒れる悪夢を見たことは一度や二度ではありません。読者に飽きられるか、呆れられるか、見捨てられるか、あるいはぼこぼこに叩かれるかもしれない、といった想いは常に抱いています。それでも書き続けられるのは、読んでくれる人がいるかもしれないという望みに縋っているからでしょう。誰にも見せないという前提で取りかかる作品を完成させるのはとても難しいものです。
あなたが誰かは知りません。
でも私はあなたに向けて書きました。
何かを感じてくれたのなら幸いです。
と最終回みたいなポエムを書きましたがまだ続きます。次はこの章の冒頭で述べた通り、具体的にコメントを増やすにはどうすればいいかといったことを書いていきます。多分。