こんばんは。
千世子です。
山崎くんとお付き合い始めて数日。憂鬱な朝、混雑する通勤も、職場に行けば彼の顔が見れると思うと、多少元気になれちゃいます。この感覚は最初だけなので、大事に感じないといけませんね。
いざ仕事が始まると、お互いやっていることが違うのであんまり絡みはないのですが……あえて別のことをしているほうが気が楽ですよね。
と、思ったのも月曜日だけでした。
一緒にランチ! と思っていたものの、お互いタイミングが合わなくて……しかも、帰る時間すら合いません……
やっぱり社会人同士というのは、こんなもんですよね……同じ職場でもこうですから。
ですが、夜寝る前の「おやすみ」メールの交換っ。これで心がポカポカです。布団の中でニヘニヘ笑って、ちょっと転がっちゃいますっ。
夜はともかく、仕事中はモヤモヤしながらも迎えた水曜日。定時帰り推奨の日です。
ぺこっ。
『ご飯食べに行かない?』
『作業が少し残っているんで、あと1時間ぐらい待ってもらえますか?』
『いいよー(^ー^)』
私も少し作業をして、そのあとは会社の外で待ちました。
ちょうど会社の外に中庭があって、そこのベンチに座っていました。
こうして恋人を待つというのもひさしぶりです。昔はもっとそわそわしたものですが、今はもう、それなりに落ち着きがあると思っています。自己の判断はあまり信用できませんが……
「千世子さんっ」
今日は何を食べようかなぁと考えていると、山崎くんが来ました。
「すみません、お待たせしました」
「ううん、待ってないよ」
これ、今思ったんですが……この言葉って、お互い別のところから待ち合わせたときに使えば効果的ですが、同じ職場の人にはまるで意味ありませんね……
「どこに行くか決めてますか?」
「最初に行った焼き鳥屋」
「ああ、あそこですね」
夕食に誘われて行った、焼き鳥屋。あそこはビール⇒芋焼酎ロックをしていないので、恨みが溜まっていたのですよ……!
お店に行くまで、あたかも同僚と仕事帰り、という感じで歩きました。職場近くで手を繋いだりすると、どこで見られているかわかりませんからね。
「ビール2つっ」
私はきっと、すごいニコニコしながら注文したと思います。焼き鳥でビール。ああ、何とステキな組み合わせでしょうっ。
ビールのジョッキが2つと、お通し(今日は砂肝に煮付けでした)とキャベツ(先に出てきました)。
来ました、さあ、来たところでっ。
「かんぱぁいっ」
「かんぱい」
ごく、ごきゅ、ゴクッ。
「んー、んんん、くぅ~」
まだ梅雨なのに、去年の夏を思い出すような感動っ。ビールは味の違いはわかりませんが、仕事終りのビールほど格別なものはないでしょうっ。
「この一杯がたまらないよねっ」
「はは、そうですね」
乾杯からジョッキを置くまでに、お互い半分以上呑んでいるあたり、ビール好きが伺えます。
コリコリとおいしい砂肝を食べていると、来ました来ました、焼き鳥がっ。
ゴクゴクッ、ゴクッ。(←呑み干しました)
「芋焼酎、ロックで」
「男前ですねぇ」
変な茶々を無視しつつ、さっそくネギマをいただきます。そう言えば、皆さんはお肉とネギ、一緒に食べますか? それとも別で食べますか?
私は最初は別々に食べて、串の後ろのほうは一緒に食べます。
それはさておき。
芋焼酎ロックが来ましたよっ。そっと顔に近づけると……ああ、この芋焼酎の香り。好き嫌いは分かれますが、このツンとして、鼻の奥ではどこかトロンとする香りがたまりませんっ。
こくんっ。
「あふっ」
喉を通る刺激。鼻から抜ける香り。そして直後に食べる焼き鳥。
うう、コレですコレ。コレがしたかったんですっ。
「……どしたの、山崎くん」
「あ、いえ……何でもないです」
「えー、なになに?」
私はシャツの裾をキュっと握って尋ねます。ふふふ、男性はこんな仕草に弱いことを知っているのです。
「え、えーとですね」
「んー?」
「その……焼酎呑んだとき、ちょっとエロかったなって」
とりあえず足を蹴っておきました。
何杯かおかわりして満足したあと、お店から出ました。
出て直後、山崎くんは別の道を指さしました。
「駅まではちょっと遠回りですが、こちらから帰りませんか?」
と言って、手を差し伸べてきました。
私はその手をきゅっと握って、一緒に帰りました。……あはは、ちょっと恥ずかしいですね。
うっ、また塩の種類を覚えるの忘れてました……海外のナントカ成分のナントカ塩だったような……て、前と同じですね(汗)。