OUTSIDE(13)
***ヒカリ:@自室パソ前 なう***
『あなたの左手わたしの右手そして秘密のチャット室』は、ハッピーエンドで幕を閉じた。
美沙と、帰ってきた秋人は、右手と左手でチャットして絆を確かめ合った。
あたしにはわかった。これは、ホントにあったことだ、と。
すなわち、ミサのもとに、アキが帰ってきたのだ、と。
あたしは乙コメを入れようとして、できなくて、ため息をついた。
――この一年半、ミサはがんばった。それはそばで見てきたあたしがよく知っている。
正直あたしは、とっくにあきらめていたのに。
アキノのことを考えても、いまはもう、鈍くうずく懐かしさしかない。
正直言うとうらやましかった。
ミサにNyaatNovelを紹介したとき、あたしはすでに投稿を始めていた。
けれど、あとからはじめたミサにあたしは抜かれ気味で。
そのあとからきたアキラ<晶>には正直、全然かなわないカンジで。
いつしか、話題にできなくなってた。
あたしは飽きたふりして、ミサとは、別のハナシをいっぱいした。
そうしながらも、やっぱりやめられなくて、帰りの電車のなか、ケータイで小説書いては投稿し続けた。
そのうち、あの事がおきた。
ガチBL書きだったなんてウソだ。
それは、アキノにあたしの作品を、見てもらわないための口実。
だって――
あたしの文章みたとき、アキはあたしの作者名を特定できなかった。読んでいなかったのだろう。
あたしの作品は、ミサとほぼ同じくらいのコメ数だったのに。
しかし、作者名を知らせたら、アキは読むはず。
でもみじめだ、そんな読まれ方。だからあんなウソついた。
ホントはあたしはあのときも、投稿を続けてた。
けど、アキノはまったく気づかなかった。
そして。
それからミサの小説はどんどんランキングの上位へのぼっていったけど、あたしは依然そのままで。
アキノみたいな人に見出されることもなく、固定客様がつくこともなく、いまだにぼちぼちと連載を続けている。
そんなカンジ、だった。
今日も、コメントはないだろな。
まあ、ミサみたく泣いちゃうほどの思いや、アキノみたく数時間しか身体が動かない、なんて制約はあたしにはない。つまりそのぶんぬるいのだから、まあ仕方ないことだ。
それを確かめるためにあたしは、自分の作品のコメントページを開いてみた。
入っていたのはわけわかんない文字の羅列。はは、とあたしはかわいた笑いを漏らしてた。
最近ではもう、更新も滞り気味なのだ。
いい加減に足を洗って、婚活でもしようかな。
うん、きっとそれがいいよね。
ブラウザを閉じよう、Ctrl+F4っと。
そのとき微妙に手が滑った。F5で画面を更新してしまう。
まさかミサみたいなキセキはないだろう。それを確かめるためあたしは、コメントページの一番上をじっと見た。
『↓コメ失敗スンマセン。いつも楽しみにしてます!! 頼む、投げんといて!!!』
その日から、あたしの新しい物語は、始まったのだった。
~~END~~