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呼吸をしているだけではない人間について

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呼吸をしているだけではない人間について


 まず起きる。
 目覚まし時計を止める。携帯の目覚まし機能もストップさせる。iPodの目覚まし機
能もストップさせる。テレビのオンタイマーもリセットする。
 二度寝する。
 運が良ければまた起きる。
 さすがにやばい、と服を脱ぐ。
「精子が減る」と言われたことを恐れながらもシャワーを浴びる。
 5日目のバスタオルで身体を拭く。汚れを落としたところにまた汚れがついたようで気
分が沈む。
 炊飯器の液晶画面で時間をチェックする。全裸で。
 野菜ジュースを飲んでから歯を磨きそれから下着を身に付ける。
 開襟シャツのボタンが取れていることに気付くが見なかったことにする。どうせ誰も気
付かないと思い込む。
 時間はまだ余裕、と思いながら家を出る。


 職場に着いたら案外余裕がなく、スケジュール管理の甘さに自己嫌悪する。
 使えないにも程がある、と上司を心の中で馬鹿にする。
 あまりにも馬鹿すぎてつい態度に出る。さらに上の上司もキレているので妙に安心する。
 と同時に思う。俺はそれ程使える人間なのか?
 人のことばかりじゃなく、お前はどうなんだ? と自己に問う。
 自己嫌悪する。
 案の定連絡ミスが発覚し落ち込む。誰にも責められないのがむしろ痛い。
 気を付けないと、と思うことにはする。
 淡々と業務を消化する。


 職場の食堂は毎日変わり映えがせず入社一週間で飽きたが、入社して4年経った今でも
使っている。ただ面倒臭いからだ。
 市街地から離れているので昼外に出て食べる気がしない。そして弁当を作ってくる気力
も寝起きの良さもない。
 15分で片付け車で眠る。
 30分でいいから歩きたい、といつも思うも眠る。
 眠るだけで午後が大分楽になる、というのは年を取ったせいか。
 学生の頃はJUNKの二部を聴き終えてから眠っても一日持ったというのに。
 もう下降線を辿るだけなんだろうな、と諦めている。


 あまり忙しくもない日で、ほぼ定時で帰れる。
 しかし、真っ直ぐ家へ帰る気もしない。
 もう1ヶ月以上自炊していない。
 次の健康診断は本気で危ないんじゃないか。そろそろ尿から糖が出そうな気がして怖い。
 それでも面倒臭いので結局定食屋で丼物。
 メシを作ることより食べた後の洗い物が面倒臭い。独り暮らしで食器洗浄機を買う気は
とてもじゃないがしないし。
 一度同棲がしてみたいと思う。続きそうなら食器洗浄機を買うのもいいだろう。
 次の休みはいつかとメールする。
 たまたま同じ日が休みだと分かる。
 どこに行くか考えて下さい、と云う。
 考えるのはとても楽だ。どこに連れて行ってもそれなりに楽しんでくれそうな人だから。


 勉強をしないといけない、と思う。資格を取りたい。
 それなのに家に帰ってすることはゲームとメールなので救いようがない。
 自己嫌悪する。でも今はそうしたいのだから仕方がない、とも思う。
 全てはモードなのだ。やる気のあるモードに切り替わるのを待つのみである。
 やる気は自分から迎えに行くことも出来る、という意見は重々承知だが、迎えに行くの
も面倒臭いのである。
 駄目で結構。自己嫌悪も受け容れる心の寛容さがあればいい。
 いつか「そんな駄目な自分じゃ駄目だモード」に切り替われば、また変わってくるだろ
う。
 願わくばそんな波が来てくれることを。面倒臭くなったので「おやすみ」とメールを送
る。


 まず起きる。
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