『殺人事件の犯人はいかに……! 待て次回!!』
気になる。超気になる。
続きが気になるんだぁぁぁ!!
このドラマ!!来週まで待てねぇよ!!
どうしてこう、上手いところで終わってくれるかな。
俺はそのせいで終わった後もそわそわして仕方ないんだよ。
貧乏ゆすり半端ないんだよ。
カタカタ凄い音してんだよ。
誰か、この興奮を鎮めてくれぇぇぇぇ!
「どうしたんです健太さん。毎週この日のこの時間になると、急にそわそわしてるんだから」
同僚の花子が話しかけてくる。
「いやぁ、ちょっとストレスがたまっちゃってね」
「最近疲れ気味じゃないですか。たまには私達を頼ってくださいよ」
「いやあ、すまないね、花子さん…」
そこで俺は気付いた。
花子さん半端ねぇ!
隣の同僚の花子さんも貧乏ゆすり半端ねぇ!
「は、花子さんも、なんか落ち着きないですね」
そう言うと、花子さんはいきなり飲んでたお茶を吹出した。
動揺の仕方も半端ねぇよこの人!
「い、いや、私は別に……」
やっぱりそうだ、この人もあのドラマ見てたな。
「カタカタ教っていう宗教があって」
どんな宗教だそれはぁぁぁぁ!
ねーよ、そんな宗教! バカなの!? ごまかしにもなってないよね!
「いやウソじゃないんです。毎日この時間はカタカタやってるんです」
あったらあったで花子さんそんなうっとうしい宗教入ってたの!?
気付くと、周りからいろんな人がカタカタ物凄い音を出していた。
いや、全員そろってカタカタ信者!? つーか皆見てたよね!? 仕事サボってあれ見てたよね!?
カタカタの大合唱。どこもあそこもあさっても。こんな雰囲気嫌だ。
次の日。
気になる。超気になる。
この連載この先どうなるんだぁぁぁ!!
『少年VIP』の、この連載!! またカタカタがとまらねぇ。やべぇ。
花子さんを見た。
…ブルータス、お前もか。
「つか、大丈夫なの、花子さん」
「ちょっと……杖見たいな物を貸してください…カタカタしすぎて…」
見てみると、足が痙攣を起こしてまともに歩けていない。
どんだけ物凄い貧乏ゆすりしてたの!? どんだけ続き気になるのこの人!!
「カタカタの時間なんです」
まだ昨日の事引きずってきてるよ。
「いや、気にしなくていいから。その机の引き出しにあるんだろう?」
「!?」
「そんな、恥ずかしがってばかりいたら、ここぞって時に足がすくんで何も出来なくなるから。もっと気楽に、オープンに生きろよ」
ちょっとの沈黙。その後、
「そうですね…もっとオープンに生きた方がいいですね。ありがとう、目が覚めました」
そういうと、花子さんは、机の引き出しから、『カタカタ経典』を取り出した。
……いや、本当にあるんかいぃぃぃ!!