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旅立ち

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毎日毎日同じことの繰り返し。
見張りして見回りして訓練して。
いい加減なんか刺激が欲しいな。大体仕事内容と給料がわりにあわなさすぎるんだ。
「俺……なんかやりたい事あったかもしれん」
「はあ? どうしたんだロラン」
いつものように仕事帰りにいつもの飲みやで友人たちと飲んでいる。
そうさ、俺はなんだかんだでずるずるずるずる流されすぎてきたんだ。
兵役で兵士になって、そのままずっと兵士なんかしてるが所詮下級兵士。
「昔はさー、ほら。なんか自分一人で何でもできるような気がしてたんだ」
「あーあー、うん。わかるぜそういうの。まぁでもそうなくなってくってのは大人になった証拠じゃねーの。仕方ねーよ」
そうさ。俺には夢があったんだ。でかい化物倒して、英雄になって、金銀財宝を得て……そんな夢物語が。
昔兄貴と一緒に冒険ごっこして遊んでたなあ……年は9つも離れてるけど。
「まぁ俺たちみてーなのには今の仕事が似合ってるんじゃねーの」
「俺さ、俺。仕事やめるわ」
「はあ!? お前、酔っ払ってるだけだって。勢いでそういうこと言ったら人生ほんと棒に振るぜ」
ああ、そうだ。俺は酔っ払ってる。
んなもんわかってるんだ。でもこの勢いを保たないと絶対駄目だ。後からじゃ遅い。
「俺はまだ21だ。まだまだ若い。いけるさ」
「まぁ、勝手にしろ。俺の知ったこっちゃねえ」
すまねないな。でも俺だって男に生まれたからには何か成し遂げたい。
できれば一攫千金を狙いたい!
「そんで、何をする予定なのよ」
「そうだな。冒険者……かな」
「お前……そうとう酔っ払ってんのな。やめとけよ。あんな仕事」
冒険者。魔物退治から護衛、探索、暗殺。金さえ払えばどんな仕事でも受ける何でも屋。
だから同時に常に死と隣りあわせでいなければいけない。
けどだからひそ成功すれば大きい。リスクも高いが……ハイリスクハイリターンって奴だ。
「兵士の訓練で多少は他の奴らより強い自身だってある。なにより成功すりゃでかい」
「大体あんなもん金持ちの道楽かにっちにもさっちにも首が回らなくなった野郎がなるもんだ。やめとけって」
「いーや、絶対なる。なって儲からない占いやをやめさせてやる! そんで俺の事を見返してやるんだ!」
「儲からない占いやって……お前の兄貴のことか」
そうだ。兄貴のやろうもう30にもなるってのに未だに占いやなんてアホみたいなことやって定職にもつかずにぶらぶら遊んで嫌がる。
だから頑張って養ってやらねーと。あの駄目兄貴を。今の給料じゃ些かきつい。
「お前どっかブラコン気味なとこあるよな」
「俺がブラコン?」
「そうそう。俺だったらそんな兄貴家から追い出すね。なのにお前ときたら普通に兄貴と同居してやがるし……無職だろ?」
「そうだよ。無職だよ。だからこそだ。親族の、もっとも血のつながりの濃い俺が兄貴の事助けないで誰かやるんだ」
そうさ。あの駄目兄貴の世話できるのは俺だけなんだ。
駄目兄貴を助けてやれるのも俺だけだ。俺だけなんだ。
誰よりも仲がよくて駄目兄貴の事を誰よりも一番知ってるのは俺だけなんだ。
「だからそういうとこ。自立させなきゃどんどん甘えるだけだっつーのそう言うのは」
「んなことねーよ。俺は兄貴を信じてる。それじゃあ、俺はもう出るわ」
「おう。最後の晩餐になるかもしれねーぞ。俺が奢っといてやるよ」
「ありがとよ」
その場で辞表を書き友人と別れて家に帰った俺の眼前に広がったのは一枚の紙だった。
机の上にぽつんと。
兄貴の姿は無い。いつもなら絶対ここらで一杯あおってるはずなのに。
「どこ行ったんだよ兄貴……」
とりあえず紙を手にとる。
もしかしたら兄貴が家を出たのかもしれない。いやでもそんな馬鹿な。俺に断りもいれずに……。
紙は一枚きり。字は明らかに兄貴のものだった。こののた打ち回ったような癖のある字というか何かいてあんだかわかんないような字は兄貴のものに間違いない。
これが読めるのも俺だけだ。

親愛なるロランへ
お前がこれを読んでいるということは、俺は既にいないのだろう。
俺はとんでもないことをしてしまった。落ち着いて聞いて欲しい。
借金が遂に1億Gにまで膨れ上がり、首が回らなくなってしまったんだ。
とりあえずお前が帰ってくる頃にはそろそろ借金取りの怖い人たちが来るだろう。
俺やお前の臓器を狙って。ということで俺は逃避ついでに冒険者になります。
てへっ☆ ごめんね、兄ちゃんやっちゃった!
                誠実で健やかな毎日を過ごすハウエルより

ちょうど俺が手紙を読み終えた頃後ろからドアを蹴破ろうとする音とどすの利いた怒鳴り声が響いてきた。
どうやら仕事をやめる云々の前に俺は逃げ出さないといけないらしい。
「くそっ……あの馬鹿兄貴!」
窓から飛び降りて逃げ出す。
ああっくそ。絶対あの馬鹿兄貴を見つけてやる。そんで一発殴ってやる!
「ごらぁっ! 待ちやがれ!!」
逃亡がばれて後ろから4、5人の明らかに堅気でない人たちが追いかけてくる。
絶っ対に逃げ切ってやる! 兄貴を見つけたら一発と言わず何度も殴ってやる!
そんで、そんでその後兄貴と一緒にいくつもの冒険をしてやる!
俺が兄貴のパートナーになるんだ!

















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