掌編集/ソフトBL怪談集/山下チンイツ
『学校の怪談』
「おい聞いたか? 三階の女子トイレに、死んだ女生徒の幽霊が出るって話」
「男子校なのに?」
『学校の怪談2』
「夏っていいよな。前の席に座ってる女子のブラジャーが透けて見えるから」
「正気に戻れ! ここは男子校だ!」
『ヤクザの恐怖』
この間銭湯へ行った時の話です。家に風呂もあるのですが、やっぱり広い湯舟で足を伸ばして入る方が気持ち良いもので。開店して間もない三時頃で、客は私だけでした。そこに一人新しく客が入ってきて、彼を一目見た私は心臓が止まりそうになってしまいました。全身に刺青を彫り込んだ、どう見てもその筋の方です。動悸が早まり、動作がぎこちなくなります。この店では「刺青を入れた方の入店はお断りします」なんて注意書きはなかったのですね。
何か起こったらどうしよう、と思いながらも、私はヤクザから目を離すことが出来ませんでした。ひょっとしてあの刺青はペイントで、体を洗うと同時に流れて消えてしまうのじゃないかとか、体のどこかに仕込んだ(素っ裸なので肛門しか考えられませんが)長ドスでいきなり刺されるんじゃないかとか、気が気じゃありませんでした。
そしてついに沈黙が破られました。
「兄ちゃん、おっかないから、そんなに股おっぴろげて、ギンギンになったアレを見せつけんといてくれや。いつ襲われてケツ掘られるんじゃないかと思うと、落ち着いて体も洗えんのや」
ヤクザはぶるぶる震えながらそう言いました。よっぽど私のことが怖かったのだと思います。
『お見合いパーティー』
四十歳を過ぎ、いい加減結婚しなければと思い立ち、意を決してお見合いパーティーなるものに参加してみた。ところが手違いがあり、通常なら男性会員と女性会員によるパーティーが行なわれるはずが、男性会員×男性会員のパーティーになってしまった。
それでも五組まとまった。
『大丈夫』
ルームメイトが最近、詩の書かれた色紙をよく買ってくる。相田みつを系? とかそういうの。彼とは高校時代からの付き合いで、大学進学をきっかけにルームシェアを始めた。変なものにハマってないで恋人の一人でも作ればいいのに。
ちなみに詩の内容はこんなのだ。
「大丈夫
ローションさえあれば
何とかなる」
「君が好き
なんじゃない
男が好き
なんだ」
「愛し合うのは
男女に限った
話じゃないよ」
「寝ている君の
尻毛を
いつも抜いてる」
シュールレアリズムっていうのかな、僕にはよくわからないけど。よく目につくところに置いてあるので、つい読んでしまう。最近朝起きると尻がヒリヒリすることがある。
『学校の怪談3』
高校の同窓会に出てみたら、男子校だったはずなのに、出席者の半数が女性になっていた。