第一章 出会い・始まり
俺は普通の家庭に生まれ、普通に育って、普通の学校に行って、普通の友達つくって、普通の日々を過ごしてるごく普通の人間なんだ。誰だってそうだろ?そう思うだろ?
けど、違ったんだ。
その夜俺は、夕飯食べて風呂入って寝たんだ。普通だろ?普通の人間の生活だろ?なーんも変わった事なんてしてない。いつもと同じ様に過ごしただけだ。寝るまでは・・・だけどな。
「・・・える?・・・き・・・える?・・・・・・聞こえる?聞こえているなら、返事をして」
夢の中まで誰かが起こしにきたのか?
「聞こえません、寝ます。おやすみなさい」
「よかった、聞こえているみたいね」
当たり前だが、バレた。
「今から真面目な話をするからあなたも真剣に聞いてね。この世界にはあなた達人間が暮らしている普通空間と私達のような特別な能力、知識を持っている人間が暮らす異次元空間が存在するの。正式に名称はあるんだけど、今はどうでもいいわ。今その異次元空間の状況は非常に不安定、このまま放っておくと空間全体が崩壊するわ。しかもその反動で普通空間にも大きな影響を及ぼす可能性があるの。ここまでいいかしら?」
夢の中まで起こしにきたと思ったら、意味のわからんことを言い出した。普通空間?異次元?なんだそれ。
「よくありません。はっきり言って意味がわかりません。そんな話俺にしても仕方ないでしょう。大体あんた誰なんだ?人の夢に勝手に入り込んで来やがって、そもそもこれは夢なのか?なあ、説明してくれ」
「ある日異次元空間に過去と比べ物にならないくらいの邪悪なエネルギーを能力者達が観測したの。あ、能力者達っていうのは、そうねあなた達の空間でいう政治家みたいなものよ。その邪悪なエネルギーは最近になって能力者達の力だけでは食い止める事が不可能だという事が判明、さらにそのエネルギーはどんどん広がっていっているの。このままだと異次元空間を覆い尽くしてしまうわ」
あ、聞いてませんか、そうですか。
「おいおい、100歩・・・いや、もっとだ、4498611161848451233歩譲ったとして、普通空間とか異次元空間があるのを信じたとしても、それをなんで俺に話す必要があるんだ?」
「能力者達は邪悪なエネルギーを観測すると同時に、普通空間にわずかながらこの邪悪に対するエネルギーを4つ観測したの。選ばれし者・・・とでも言えばいいかしら。もうわかってるわね?」
「わかりません」
本当はわかってたけどな。
「その4つの内の一つが、あなた」
「はい、そーですか、おやすみなさい」
「信じる信じないはあなたに任せるわ。ただし、一つだけ言っておく。この事実からは決して逃れる事はできない」
「考えてみろよ?世界が危ないんですね、そうですか。じゃあその異次元空間とやらに行って俺以外見知らぬ3人と一緒に邪悪なエネルギーをやっつけましょうねー。頑張ろう!オー!なんて人間がこの世にいると思うか?」
「いる」
「・・・すまん、なんだって?」
「すでに2人、異次元空間への転送は完了しているわ」
「冗談はよせ、な?本当は、異次元空間なんてもんは無いんだろ?」
「最初に言ったでしょ?これは真剣な話だって。先に行った人間は後の2人が来るのを待ちくたびれているはずよ」
「まてよ、俺は学校とか他にもいろいろやらなきゃならないことがあるんだぞ?そういうのは、ほら、ニートとかに頼めよ、な?」
「そのことなら大丈夫。あなたが異次元空間に行っている間、普通空間の時空は止まるようになっているわ。すごいでしょ?」
「待て待て待て待て、そんなありがちなRPGじゃないんだし。俺は絶対に行かないからな」
って、いつ俺は異次元やら選ばれし者やらを信じたんだろうね。
「びびってるの?」
「いや、別に、びびってるわけじゃねえよ!」
「じゃあ決まりね。異次元への転送を開始するわ」
「ちょっと待て!勝手にそんなことすr・・・」
気づいたら、そこにいた・・・
第一章 出会い・始まり
「なあ・・・これ、なんてRPG?」
答えてくれる人間なんていないのに驚きのあまり訪ねてしまっていた。
見た事も無い植物、空はまるで青いペンキでも塗ったんじゃないかってくらいに青く、真っ白な雲と見た事も無い船みたいなものが浮いていた。これ、なんてRPG?な景色を口を半開きにして見ていると男の声が俺に話しかけてきた。
「おい、あんたも、選ばれし者とかそういうもんなのか?」
振り返ると見るからに頼れそうなソフトマッチョな男と、まるで前から俺の事を知っているかのようにこっちを見て微笑んでいる女性がいた。
「さ、さあな、俺はまだ信じたわけじゃない。異次元とか選ばれし者とか」
「俺も最初は信じてなんかいなかった、けどな、こんなもん見せられちまったら信じないわけにはいかねえみたいだ」
はい、その通りですね。
「おっと、自己紹介がまだだったな。梶浦隼人だ。まあ、選ばれし者であってもそうでなくてもここで会ったのも何かの縁だ。よろしく頼むぜ」
こういうキャラって絶対一人はいるんだよな。っにしても、よかった、普通の名前で。これでもしジョンだのマイケルだの言われたら本当に信じれなくなってたからな。
「それで、隣にいるのが」
「室戸有希です、よろしくね」
よろしくね。の後にハートでも付ければいいだろうか。とんでもない美人だった。おっと、俺の自己紹介忘れてた。
「ああ・・・尾上和也です、よろしく」
どうだ?普通の名前だろ?
「さあて・・・あと一人か」
梶浦が腰に手を当てて遠くを見ながら言った。遠く見たって誰もいないぞ。それにしても、よくこいつらこんな状況で普通にしていられるな。
「もうここに来て1時間近く経ってるからね」
室戸が俺の心でも呼んだかのように苦笑いしながら言った。
しばらくすると、物音一つ立てずに真っ白い光を放つ球体が空から舞い降り、辺りを照らし始めた。闇の中を逃げる犯罪者が警察に見つかった時にスポットライトをバシャっと照らされるような感じだ。
「お、来たか」
なんでも知ってるような顔して梶浦が言った。
「あなたもこうやってここに来たんですよ」
室戸が俺に微笑み+説明をする。わざわざどうも。球体の光はどんどん弱くなっていき、人間の形へと姿を変えた。誰だろ?男かな?女かな?できれば女がいいなあ・・・そんなことはどうだっていい。いや、よくないかも。
「ちょ、なんなのよここ!どこなの!?」
聞き覚えのある声がした。見るとそいつは同じ学校の同じクラスの女子でしかも家が隣で幼なじみで、でも別に仲はよくない牧野栄美だった。向こうもこっちに気付いたみたいで、目が合ったと思えばフンっと目をそらし、他の人間と話し始めた。もっとましな挨拶はないのか。
これが俺たちの出会いで、始まりだった。まさかこの4人で世界を救っちまうなんてこの時は信じてなかっただろうな。