【解説編】微分方程式論
微分方程式論は一言でいえば
《過去に行った膨大の実験データを1つの美しい方程式へと圧縮する》
理論です。
微分方程式論は日常の現象を数式で模倣する理論であり、
人類が発見したもっとも応用性の高い数学です。
ただし、日常のすべての現象ではなく
《複数の量が関連して徐々に変化する》現象のみが対象となります。
イメージとしては
・塩の量を増やすほど焼きそばは美味しくなる
ただすでに入れた塩が多いとあまり味は変わらない
のような現象です。ただこの例は
"塩の量"はグラムで《量化》されていますが
"美味しさ"が《量化》されていないのでだめです。
"今日の昼のカレーの味は500グルメだった"みたいに言えるなら、OKです。
微分方程式に適しているのはたとえば次の例です。
《現象》:ペトリ皿で大腸菌を増やす
《扱う量》:湿度[%]、養分[g]、細菌の数[匹]
もし
・養分の量を[x]倍とすると、細菌は[xの二乗]倍の速さで増える。
・湿度を[y]倍とすると、細菌は[yの三乗]倍の速さで増える。
・すでに細菌が多いほど、増殖する速さも増す。
が実験によりわかっていれば、微分方程式はだいたい
[一分後に増える細菌の数]=[養分の量の二乗]×[湿度の三乗]×[現在の細菌の数]
なんじゃないか、と予測できます。
さらにもうひとつの例。
たとえば野球ボールを投げる現象は微分方程式論の対象です。
扱う《量》はボールの質量[kg]、投げる速度[km/s]、そして位置座標[m]です。
綿密な実験を通じて得られたこの現象の微分方程式は、
古典力学の基礎方程式、Newtonの運動方程式と呼ばれ
[物体の質量]×[一秒後の速度の変化量]=[現在物体にかかっている力]
であると知られています。これは簡単に
Ma=F
と表記されます。