スプリングの効いたベッドの上で、私は彼女に抱かれていた。彼女はあぐらで、お姫様抱っこをするように、私を腕の中に収めている。
彼女の手には金属のリードが巻かれ、その先の首輪は、私の首を緩みなく拘束している。苦しくはないが、掛けられた首輪から、じわりと肌を焦がすような違和感を感じる。これを付けている間は、私は彼女に服従しなければならない。
そう彼女と契約させられた。
「目、閉じて」
今までよりも、少し低い声で、彼女は私に命令した。耳元で囁かれ、意図せず身体が震えた。結局、言われるまま目を閉じる。
「……ん……」
不意に唇に柔らかい感触を覚えて、小さく声が漏れた。浅いキスを何度か繰り返され、私は拒むことも出来ずに、ただそれを受け入れていた。
「耳、口元にもってきて」
私の身体を傾け、彼女の唇が耳に触れた。感じたことのない感触に、身体を縮ませる。何をされるのか分からず、じっとしていると、突然耳を優しく唇で挟まれた。
「……ぅぁ……」
不可解で異様な感触に、思わず小さな声が漏れた。
彼女はほんの少しだけ私の耳を口に含み、舌で愛撫していく。チロチロと舌が私の耳を這う度に、得体の知れないゾクゾクした感覚が、電流のように四肢を巡った。
「あぅ……」
どうしてか、息が荒くなっていく。それが性感なのかも認識出来ないまま、私は彼女の与える刺激に翻弄されていた。
「声かわいいなぁ……」
ひどく艶やかな声で、彼女は呟いた。ほくそ笑んでいるのが見なくても分かる。彼女の様子を伺いながら、息を整えていると、首筋に舌がすっと這った。
「……ひぅ!」
「もうちょっと色っぽく啼けないかな?」
彼女のハスキーな声と吐息が、先まで責められていた耳を更に苛む。答えを急かされ、それに抗議することも出来ない。
「……そんなの、知らな……――きゃう!」
耳を甘噛みされて、私の口から嬌声のような、はしたない声が出てしまう。
「敬語、忘れてない?」
「あ……ごめん、なさい」
「そうそう。良い子ね」
彼女は嗜虐的に微笑み、私にキスをした。反射的に目を閉じ、それを受け入れてしまう。彼女の唇は柔らかくて、少し甘い気がする。
そんなことを考えていたら、舌をねじ込まれた。初めてされる深いキスに、身体が自然と硬直する。同時に、芯が熱くなって、頬が紅潮するのがわかった。思考が蕩けていく。彼女が私の唇を離すと、思い出したように息を吸った。
「こういうキス、初めて?」
「…………」
訳の分からない恥ずかしさに襲われ、私は何も言えずにただ頷いた。見つめる彼女の視線から逃れるように、顔を背ける。
「ふふ、可愛い」
可笑しそうにそうクスリと笑って、彼女は微笑んだ。同時に優しく頭を撫でられる。
「う……」
どうしていいか分からずに下を向いていると、彼女に覗き込まれた。嬉しそうに笑う顔が、なんだか悔しい。
「ジュン。キス、しなさい」
「……意地悪」
私に拒否権はない。自分からのキスの経験もない。それでも言われるままにするしかない。私は彼女に服従しなければならない。
でも私は――。