バラバラ死体を組み上げ、一息ついてみるものの、龍姫は落ち着かなかった。
なにせ、出来上がったのは人間そのものだ。動きはしないが、知らない人がいきなり自分の部屋で座禅でも組んでいるように見えなくもない。
「しかしなんというか……」
ふにふにと指で頬をつついてみれば、もちもちの弾力性を感じられた。肌も決め細やかで、龍姫はふと移植できたらいいな。なんてことも思った。
「しっかし、目のやり場に困るわね」
裸で、しかも自分と同い年くらいの背丈だ。幸いというかなんというか、男か女かは分からないようになっていはいたが、龍姫は妙な背徳感にかられた。
取り敢えずは説明書の続きを拾い上げ、指示をうけることにする。
「とりあえず電源を入れよう」
説明書の続き、スイッチオンの文字に従い、若干の罪悪感にさいなまれながら、龍姫はため息とともに人形の体をまさぐる。
体温がないのが幸いだ。これで暖かかったなら、きっと龍姫が変な気分になっていただろう。
「お、あったあった」
龍姫が見つけたのは首筋にある小さな突起。
その小さな突起を爪で何度か引っかくと、ちょうど円筒状の差し込み口が穴が顔を見せた。
「スイッチどこよ」
説明書をもう一度読み返し、今度は紙袋をひっくり返す。
すると、先程の穴に丁度差し込めそうな大きさの琥珀色の筒がポトリと落ちた。
「これが認証キーねぇ……」
筒を拾い上げ、電球にかざすようにしてくるくると回し、眉間にしわを寄ながらも何度も確認する。
が、何も分からない。
あきたと言わんばかりにため息をつき、筒を持ち直した龍姫は、説明書にあるように先程の穴にまさぐり、抱きつくような形で正面から筒を差し込んだ。
抱きつきながらも龍姫は、やっぱりコレは人間なんじゃないだろうかと夏希に疑いを覚えていた。
あの人なら、人体改造でアンドロイドを作るなんてことをやるかもしれない。
「プラグインッ」
そんな不安を振り払うようにして、少々おどけながらも説明書にあったように、音がなるまで筒を押しこんだ。
「基本情報の入力を開始します」
龍姫が筒を差し込んだとたん、無機質な機会音声が龍姫の目の前の人形から聞こえてきて、龍姫は驚いて抱きついていた手を離してしまう。
「基本情報の入力を開始します」
「あ、え、はい」
ゆっくりと、人形がロボットとして覚醒した時だった。