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『死菓』

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 明るい空の下で大きな息を吸い込んで死ぬ。
 それが俺の望みだ。
 ほかには何もいらない。それだけでいい。
 いろんなものが欲しかったが
 そのせいで苦しんでいたのだと気付いた
 だからいらない 持ってても 重たいし 邪魔なだけ
 死ぬぐらいで丁度いい

 俺は自分に満足だ これ以上は欲しくない
 これより上は本物だけが残れる場所で
 そして時代は別に俺を求めていない
 それでいい 俺なんかが必要になったら
 そりゃ戦争だ 革命だ 流血だってことになっちまう
 物凄く誰かが痛い思いをしそうだ
 まあ今だってしてるわけだけど
 だからとにかく 人を疑い 誰も信じず
 やっていくしかないのだ
 俺は極めて深く他人を疑っているし
 信じてもいない
 何もかもが無意味だし 死は祝福だ
 これほどめでたい祝詞はない そうだろ
 生きてるっていうんなら 全部死者の代わりにやってやれ
 それもできないんならガタガタぬかす 資格はない

 べつにいいじゃねえか 全部だめでも
 うまくいきゃあ幸せだってのが土台そもそも間違いで
 そんなの次の戦いが待ってるだけだろ なあ?
 いつだって誰かが自分の席を狙ってる
 それでいいんだよ それが自然なんだよ
 それをどうにかしよう 固定しようっていうのがおこがましいっていうことで
 つまりは老害 やっぱり駄目なのさ
 死ねばいいんだよ
 いつか誰でも死ぬ べつにそれは弱音じゃないし
 わかっておかなきゃいけねえ事実だろ
 死ぬなんて、生きなくていいってことだぜ
 それほど苦しいことじゃねえよ



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