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【番外編】

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ドアの前で、杉浦悠は悩んでいた。

言うべきか言わざるべきか、言ったところでどうなるのか、
解決するのかしないのか、いや、多分解決はしない。
解決する方向に向かうくらいはするのか、いや、
今までの経験からするとしない。

じゃあなぜ相談しようとしているのか。

分からない、
しかしこの不安な気持ちを吐き出すことにより、
少しでも楽になりたかった。

悠は、職員室のドアを開けた。

「杉浦君?相談って何なの?」

優しそうな笑顔で、悠のクラスの担任が迎えてくれた。
杉浦優は押し黙った。

「ここで話せないことなの?」

悠と担任は、普段は使われていない、相談室のような部屋へ向かった。
どこかカビ臭くて、半分物置のようにされているその教室は、
普通の部屋よりも少し暗く、肌寒く、
しかしどこか、「秘密の話」をし易い環境に感じられた。

「それで、相談というのは?」

悠は少し複雑な顔をした。
確かに相談をしたのは自分だが、こう促されると、
なかなか話しにくいものだ。
だがずっと黙っているわけにもいかないので、
たどたどしくも、ゆっくりと話し始めた。



話を終えた時、悠は少し疲労を感じていた。
倦怠感というか、残尿感というか。
いや、尿ではないが、気持ちの残尿感を感じていた。
胸の内を明かせば明かすほどに、後悔やら恥ずかしさやら罪悪感やら
そのようなものを感じるのだ。

少し間をおき、担任は優しく答えた。

「お友達としっかり話し合って、気持ちを伝えて。
あなたたちはきっと分かり合える。
私はそう信じています。」

悠は、はいと答えた。
別に納得したわけではないが、正しいことを言われたようなのでそう答えたのだ。

「あなたのお姉さんに、強い心をもってもらいなさい。
私もなにかあったら絶対に力を貸します。」

何かあったから相談したんだけどね。

「本当に悪い気持ちをもっている人間なんていないんです。
お互いにきっと問題点があって、それを修正していくのがお友達というものでしょ?」

正しいことを言われた。
言い返すことはできなかった。
担任の言っている事は、正しいからだ。

そのあとのことはあまり印象に残っていない。

悠は、自己嫌悪した。
一体自分はなんと言って欲しかったのか、
相談して何を得たかったのか。

何を求めているのか。

なんといってもらえれば納得するのか。
分かるはずがなかった。

そんなものきっと答えはないのだ。
誰も答えは出せないのだ、分かっている。
なのに毎回誰かに相談してしまう。

誰も悪くない。

話せば話すほど損をしている気がする。
気持ちというものに質量があるのかわからないが、
もしあるのなら、
たった今悠の気持ちは少し減った。
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