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4夜目 文化祭(後)・動き・平和を楽しむか・・・。

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委員長「さて、みなさん準備はいいですか?」
十紀人「ばっちり。」
粋「うん。成功させよう。」
白雪「なんだかドキドキするもんだな・・。」
百鬼「いつでも来いであります。」
委員長「では幕を上げてください。」

ついに俺達の最初の公演が始まった。
シーン1は村娘と王子の出会いだ。
村娘はお花をつみに森にはいる。
お花をつんでいると気分が踊り歌を歌い始める。

村娘「~♪~~~♪~♪」

そして最初のダンスだ。
まずはバレエの様に美しく踊る。
正直なんで男の俺がバレエなのだ・・・。
そしてその様子を見た王子が村娘に恋に落ちる。

王子「なんと美しいであります。そこの女名前はとんというでありますか?」
村娘「私ですか?私は村娘と言います。」

頑張って裏声で話すがオカマみたいな声になる。
会場からはどっと笑い声が響く。

王子「村娘、ひゃっ、、わたしはお前が気に入ったであります。」
村娘「そうですか?ありがとうございます。ところで貴方はだれですか?」
王子「ひゃ、、、私はこの国の王子であります。」
村娘「嘘です。王子様がこんなところにいるわけがありません。」
王子「ほぅ、では城に案内してやるであります。付いて来いであります。」

王子は村娘を城へと連れてきました。
そして城の中を案内するのです。

村娘「貴方が本当に王子様だったなんて・・・。さっき程は失礼をいたしました。」
王子「いや、気にすることはないであります。どうであります?ここで一緒にすまないでありますか?」
村娘「すいません。私は・・・・。」

ここで照明が落ちてシーンの切り替えだ。

十紀人「はぁ~緊張した。」
百鬼「百鬼にはどうってことないであります。」
十紀人「百鬼は強いな。」

そう言って百鬼の頭を撫でる。

白雪「ん~ん。次は粋の出番みたいだぞ。ご主人様。」
十紀人「う、うんそうだな。」

ステージを見ると既に粋が役を演じていた。
許嫁である粋が村の人に村娘の居場所を聞いて捜し回るシーンだ。
これにもダンスが組み込まれているが粋は涼しげな顔でやってのけていた。
ダンスが終わると観客席からの拍手が湧き上がる。

十紀人「今のところ順調だな。」

そして粋が村娘を求めて城にたどり付き再び俺達の出番となる。

許嫁「村娘見つけましたよ。」
王子「なんだお前はであります。」
村娘「あなたは!?」
許嫁「私はその娘の許嫁の許嫁っていう者です。」
王子「本当でありますか?村娘。」
村娘「・・・本当です。」
王子「・・・・・。許嫁。」
許嫁「なんでしょうか?」
王子「村娘をひゃ、、私に譲れであります。」
許嫁「嫌だといったら?」
王子「実力で排除するであります。ひゃ、、私は村娘を愛している!!」
許嫁「私も許嫁を愛しております。いいでしょうどちらが許嫁にふさわしいか勝負です。」
村娘「二人ともやめてええぇぇぇ!!」

村娘の叫びも虚しく二人は勝負を始める。
周りのキャストが踊りを踊る中で二人は舞を待っているように激しく剣をぶつけ合う。
流石二人といったところか二人の攻防は舞台の熱を一気に上げていく。
そうして戦っている内に村娘は城のテラスからその身を海に投げる。
二人は悲しみに暮れる。
そうしてシーンは移行する。
どこかの海に流れ着いた村娘。
そこに男が近寄っていく。

男「ん?ひ、人が倒れているなぁ~。」

男は村娘に近づき呼吸や脈があるか確かめる。

十紀人「固いぞ白雪」

俺は小声でそういった。

白雪「わ、分かっている。」

緊張しているのだろう白雪の白い肌が真っ赤になっていることに気付く。

村娘「ごっほ!!ごっほ!!」
男「おぉ!!い、生きていたか!!」

駄目だ完全に上がっていてセリフがガチガチだ。
さてこれはどうしたものか・・・・。
白雪が俺を抱き起こそうとしたとき俺は白雪に抱きつき耳元で話しかける。

白雪「え!?」
十紀人「白雪落ち着け。観客を気にするな。」
白雪「無理だ。練習とは違って人が多すぎる。恥ずかしすぎる。」
十紀人「大丈夫、お前なら出来る。それに俺が付いてる。お前が思うように演じればいい。俺だけを見ろ。ほかは見なくていい。」
白雪「・・・・・わかった。ご主人様。やってみる。」
十紀人「おう。」
白雪「ありがとう・・。少しだが落ち着いた。」
十紀人「じゃぁセリフ言えるな。」
白雪「あぁ。任せておけ。」

白雪の顔を見るとまだ頬がピンク色に染まっていた。
しかし、表情がさっきと全く違っていたのだ。
一安心といったところだろう。
白雪の固さも取れて舞台は進んでいった。
そして舞台はクライマックス移行していく。
村娘の目は海の塩やられて見えなくなっていた。
医者には何年かすれば治ると言われて村娘は男と一緒に暮らすようになった。
男は村娘に優しく。村娘は次第に男の優しさに惚れていき男もまた村娘に惚れていく。
村娘はここがどこなのか男がどういう人なのか知らなかったがそんなことは関係なかった。

村娘「男?男?どこですか?」

壁沿いに廊下を歩きながら男を探す村娘。

男「村娘!!駄目じゃないか!一人で出歩いては。」
村娘「ごめんなさい。どうしてもあなたの声が聞きたくなって。」
男「うれしいよ。君にそんなことを言ってもらえて。今はお客さんが着ているから部屋にもどろう。」
村娘「あら、お客さんが来ていたの?ごめんなさい。お邪魔をいたしました。」

そう言って村娘を男は部屋に連れていこうとする。

王子「ちょっと待ってくれであります。男」
許嫁「・・・その娘の顔を見せてもらえないでしょうか?男くん」

村娘は男の影に隠れるようにいたので許嫁や王子にははっきりと顔が見えなかったのです。
しかし、二人とも一瞬であるが女に村娘の面影を見たので女を止めました。

王子「早くその女の顔を見せるであります。」
村娘「きゃ!!」
男「王子!!」

王子は無理やり男から村娘を引き剥がし顔を覗き込む。

王子「村娘!!村娘ではないかであります。」
許嫁「本当ですね。良かった。生きていてくれてよかった。」
男「二人とも村娘が怯えています。」

王子と許嫁は男の言葉を無視して村娘に自分で有ることを告げました。
しかし、村娘は怯える一方で二人の話を聞きません。

王子「拉致があかないであります!!村娘は私が引きとるであります。」
許嫁「それは認められません。村娘は私の許嫁です。私が連れて帰るべきです!!」
男「二人ともいいかげんにしろ!!」

男はテーブルを強く叩きました。
その音に驚いた二人はだまりました。

男「村娘が怯えているのになぜ気づかない!!」
村娘「男・・・。」
王子「そんなに村娘を離したくないかであります。なら仕方がないであります。ここは三人で勝負であります。」
許嫁「それはいい提案だね。」
男「いいだろう。その話受けて立つ。」
村娘「男・・・。」

村娘は怯えるように男の名を呼びました。
男はそっと村娘に近寄り口を開きました。

男「君を景品みたいにしたことを許してくれ。」
村娘「わたしは・・・。」
男「村娘。僕は君の自由を与えたい。私が勝ったら君に自由を与える。君が好きなことをするといい。だから私は二人に勝ってみせるよ。」

そう言い終わると男は静かに二人の元へ進む。
そして、この公演の最大の見せ場白雪チームと粋チームそれに百鬼チームのダンスバトルが始まる。
スポットライトがナレーターだけに向けられてナレーターは口を開く。

ナレーター「これよりダンスバトルが始まります。ルールは簡単!!いいと思ったら歓声を上げて下さい。その歓声の大きさによって勝者を決めたいと思います!!それによってエンディングが変わりますで歓声の方をよろしくお願いします。ではまずは許嫁チームからです。」

その説明の後に音楽と共に舞台のライトが一気に光る。
粋らしい靭やかな動きだ。
バックダンサーは後ろで波を作っている。
曲が進むに連れて粋のダンスがダイナミックになっていく。
ラストはバックダンサーと共に踊って最後はバク転からの前宙で股を大きく広げてフィニッシュを迎えた。
会場から歓声が沸き起こる。
まぁまずまずと言ったところだろう。
そうして粋は会場に手を振ってから戻ってきた。

十紀人「お疲れ様。」
粋「ありがとう。」
十紀人「どうだ?」
粋「いや、僕の優勝は無くなったね。まぁ最初から分かっていたけどね。勝負の行方はあの二人だろうね。」

そう言って粋はタオルで汗を拭く。

十紀人「次は百鬼か。」
粋「十紀人はどっちに勝ってほしいとおもってる?」
十紀人「・・・ん~難しいな。どっちも頑張ってほしい。」
粋「ふふ。いじわるな質問だったね。」
十紀人「いや・・。」
粋「けど、いつか誰かを選ばないといけない時が来るかも知れないよ。その時は十紀人の気持ちが固まっているといいね。ボソ」
十紀人「ん?なにか言ったか?」
粋「いや、どっちが勝かなって」
十紀人「どっちが勝っても俺は笑顔を二人を迎えるだけだ。」

そうい終わると同時に百鬼のダンスが始まる。
百鬼は最初から派手な動きだ。
見ているとブレイクダンスに近い動きをしている。
百鬼を中心に周りが合わせていると言った感じだろう。
中心役の百鬼を自由に踊らせて周りがそれに合わせて動くまったくもって百鬼らしいチームだ。
そうして曲も終盤に入り会場も盛り上がっていく。
そして最後の大技に入る。
曲に合わせてウィンドミルの回転速度が増して行く。
そしてその勢いを使って片手倒立に持っていき曲が止まると共にフリーズでフィニッシュだ。
常人なら絶対出来ない技だろうが百鬼の身体能力が可能にしたのだろ。
もしかしたらちょっと能力を使ったかも知れないな。
観客席から大歓声が湧き上がる。

百鬼ファンクラブ「うおぉぉぉぉ!!百鬼ちゃあああああぁぁぁぁん」
後藤「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

なるほど、粋が勝てないと言った意味がよくわかった・・・・。
そして百鬼が戻ってきて最後は白雪だ。

十紀人「お疲れ様。」
百鬼「ありがとうであります。どうだったであります?」
十紀人「すごく良かったと思うぜ。」
百鬼「えへへへであります。」

百鬼は嬉しそうにしながら椅子に座って休息を取る。
白雪の準備が整ったようでゆっくりと音楽が流れ始める。
それと連動するように舞台のライトもゆっくりを白雪たちを照らし始める。
そして曲はは一気に激しさを増して白雪たちの動きも激しくなっていく。
白雪チームのダンスは一糸乱れる動きでみんながひとつになってダンスをしているようだった。
曲も終盤に入りラストは白雪のソロのダンス。
百鬼の様にダイナミックさは無いが流れるようなダンスは見ていてとても綺麗だ。
そして曲の止まるのと同時にチームが中央に集まり決めホーズでフィニッシュを迎えた。
客席は静まりかえっていた。

粋「歓声がない?」
十紀人「いや、そんなことはない。」

そして決壊したダムのように歓声が会場に響き渡った。

百鬼「はぁ~これは百鬼の負けでありますね。悔しいですがここは譲るであります。」

そう言って百鬼は十紀人の背中を押した。

十紀人「え?」
百鬼「早く行くであります。審査をしなくても結果は見えているであります。」
十紀人「百鬼・・・。うん、わかった。」

俺はステージの上にいる。白雪に向けて走っていった。

粋「よかったのかな?」
百鬼「悔しいでありますが負けは負けであります。けど、今回だけであります。今回だけ譲ったであります。今度は負けないであります。」

粋は百鬼の言葉にどれほどの重みがあるかわかると同時に彼女がどれだけ十紀人を慕っているがわかった。

男「村娘。私は勝ったぞ。」
村娘「はい。」

白雪は本当に嬉しそうに笑っていた。

男「村娘!!お前!!目が見えるようになったのか!!」

しまった。目を開けたままステージに上がってしまった。
村娘は目が見えるようになる事はこのシナリオにない!!
そして二人は末永く幸せに暮らしました・・・で終わるはずだった。

村娘「は、はい。強くあなたの顔を見たいと思ったら。目が開くようになりました。貴方が私に自由を与えてくれた人なのですね。」

とっさにアドリブを入れる。

男「あぁ。私は君の自由を勝ち取ったよ。さぁ言ってくれ。君の望みはなんだ?」
村娘「私は・・・・私は貴方と共に生きてゆきたい。」
男「私もだ。」

こうして二人は末永く長く幸せいに暮らしたのでした。めでたしめでたし。
そうして幕が降り始める。

王子「いつまで抱き合ってるありますか!!」
村娘「へ!?」

王子の飛び蹴りが俺の腹部を捉える。

男「なっ!百鬼、貴様!!」
王子「行くのは許しても抱き合うのは許さないであります!!」
許嫁「ははははは。我慢の限界だった。みたいだね。」
村娘「いててて。」
委員長「ちょっとあなたたち!!まだ幕は降りていませんよ!!!」

こうして俺達の第一公演は幕を閉じた。
最後がグダグダになってしまったがそれが俺たちらしくて笑えてしまった。
観客席からも笑い声が聞こえて最後は大歓声で幕を閉じたのだった。
まぁ大成功といってもいいだろう。
・・


十紀人「文化祭の成功を祝ってカンパーイ!!」
みんな「カンパーイ!!」

俺たちはその夜、家に集まってささやかなお祝いをしていた。

黒川「私まで参加させてもらっていいのでしょうか?」
静「いいんですよ。みんなでお祝いしたほうがたのしいですし。今日は泊まっていってください。」
粋「静ちゃんありがとうね。」
楓「私まで呼んでいただいてありがとうございます。」
静「いえいえ、楓さんと黒川さんのお陰で助かりました。私一人だとこの量の料理は難しかったです。」
十紀人「最初はどうなるかと思ったが大成功だったな。」
粋「そうだね。昼の部も夕方の部も大成功だったね。」
百鬼「惜しくも一勝を逃したのはくやしいであります。」

昼の部のダンスバトルは白雪が勝って夕方の部のダンスバトルは百鬼の勝ちという結果に終わった。

白雪「私としては勝ちを譲ったつもりはなかったのだがな。」
楓「それにしてもいいミュージカルでしたよ。感動も笑いもありましたし、なにより見ていてとても楽しかったです。」
黒川「そうですね。みなさんしっかりと役にはまっていてとても楽しそうに見えました。」
十紀人「明日もこの感じで頑張ろぜ!!」
静「はい、はい。お兄ちゃんはあんまりはしゃぎ過ぎないでくださいね。」
粋「そうだね。でもそれも十紀人のいいところだからね。」
百鬼「白雪!!明日は負けないであります。」
白雪「案ずるな。私も勝ちにいく。」

俺たちの笑い声は近所迷惑になりそうなくらい外に漏れ出していた。
ずっとこんな時間が続けばいんだ。こんな幸せな時間が・・大切な時間が・・・。
その様子を木の上から観察する影が二つ。

???1「楽しんでるっスね。」
???2「不愉快・・・。」
???1「でもいい感じじゃないっスか。」
???2「どうでも・・・いい・・・。」
???1「本当はあの中に混じりたいんじゃないんっスか」
???2「・・・・」
???1「じょ、冗談っスよ。冗談。」
???2「冗談・・・嫌い・・。」
???1「まぁこっちもそろそろ動き出すっスから敵情視察はしっかりとしないと怒られるっスよ。」
???2「あと・・まかせた・・」
???1「って!!あれ!!行っちゃったっスね・・・。ってなんでわたしだけっスか!!はぁ~やってらんないっスよ!!」
・・


次の日、楓は一人で屋上にいた。
屋上からは十紀人たちの公演が目に見える。

楓「・・・。」
翆「楓お姉様。お迎えに上がりました。」
楓「もう、そんな時間なのですか・・・。」
翆「すいません。計画が少し早まったようで・・。でも、楓お姉様が望むなら・・・。」
楓「いいえ。私は決意したのです。それに彼は約束してくれました・・・私はそれを信じます。」
翆「そんな顔をされて言われても・・・。」
楓「翆。ありがとう。準備をしてきますね。」

翆の肩を軽く手を乗せてから楓は屋上を出て行った。

翆「くっそ!!」

翆は屋上の扉を強く叩く。

翆「私は・・・私は!!楓お姉様のあんな顔を見たくて力手に入れたんじゃない!!」

翆の強く握りしめた拳から血が一滴、地面へと流れ落ちる。
・・


二日目の公演も成功に終わり俺達は今後片付けをしている。
この勢いで行けばお昼には終わるだろう。

百鬼「疲れたであります。」
粋「百鬼さんもう少しで終わるから頑張りましょう」
百鬼「うぇ~であります。」
白雪「百鬼よ。無駄口を叩く暇があったらさっさと終わらせろ。」
百鬼「そういうなら白雪が百鬼の分をやってくれであります。」
白雪「なぜ私が!!」
十紀人「はいはい。二人とも今は喧嘩したらだめだよ。百鬼も俺のが終わったら手伝うから。」
百鬼「はぁ仕方ないでありますね。」
白雪「全く。ご主人様は百鬼に甘すぎだ。」

みんな無駄口をたたきながらも片付けは進んでいった。
丁度時計の針が12時を刺す頃に片付けも終了して俺達は屋上で昼食をとっていた。

百鬼「いやぁ働いた後の食事は最高であります。」
白雪「貴様はご主人様に手伝ってもらっていただろ。」
百鬼「それでも百鬼は十分やったであります。」
粋「黒川。お茶をもらえないか?」
黒川「はいただいま。」
十紀人「静も黒川も片付け手伝わせちゃって悪いね。」
黒川「暇を持て余しておりましたのでお気にせず。」
静「そうですよ。私も好きでやってるんですからお兄ちゃんは気にしなくていいんですよ。」
十紀人「そういえば、楓がいないな。」
静「そうですね。クラスまで呼びに言ったんですが早退したようで・・。」
十紀人「どうしたんだろな?」

最近お昼には楓がいたからいないと違和感を感じてしまう。
お昼を終えると俺達はみんなで学校中を歩きまわった。
百鬼が早食い大会で優勝したり白雪がお化け屋敷で驚かせようとした人本気で殴ってしまったりして二日目の文化祭をたのしんだ。
今は巨大特設ステージの前のベンチで休んでいる。

静「飲み物を買ってきますね。」
十紀人「あっ!だったら俺が行くよ。」
静「いいですよ。お兄ちゃんは休んでいてください。」
黒川「一人では大変ですから私も行きます。」
静「じゃぁ待っててくださいね。」

そう言って静と黒川は行ってしまった。

粋「みんなたのしそうだね。」
十紀人「そうだな。」
粋「平和だね。」
十紀人「平和だな。」

空を見上げると晴天で気持ちいい青空が広がっていた。
秋晴れと言ったところだろうか涼しくなった風が気持ちよく感じられる。

???「レディーースアンドジェントルマン!!文化祭を楽しんでいますか!?うんうん。楽しでいるみたいだね。」

いきなり巨大特設ステージから声がして俺達はそちらの方に向く。
そこに鼻眼鏡とネクタイをした司会者らしき人物が立っていた。

静「なにか始まったみたいですね。」
黒川「なんなのでしょうか??」

飲み物を取りに行った静たちが帰ってきてみんなに飲み物を渡す。

司会者「文化祭も終盤です。ここでななななんと!!ミス明樹学園コンテストの発表したいと思います!!」
十紀人「なっ!!俺に内緒でいつの間にそんなことを!!」
司会者「なお、これは新聞部と写真部の共同企画なのです!!写真部が資料を集めて新聞部が文化祭中に地道に聞き込みの結果がここに!!なおここで名前を呼ばれた人はステージまで来て下さい!!では発表に入ります!!第5位!!」

スピーカーからドラム音が鳴り出す。

司会者「3年3組の優香さん!!つぶらな瞳が可愛いという意見が多いようです。」
優香「ありがとうございます。」

司会者に呼ばれた生徒がステージにと上がっていく。
たしかに可愛い子だ。
俺がまじまじと彼女を観察していると司会者は次の発表へと移る。

司会者「では次々行きましょう!!第4位!!黒川さん!!」
黒川「え?」
司会者「突如、学園に降り立ったメイドさんその美貌は見るものを萌え殺しにするほどだ!!素性は全くの不明!!黒川さんいらしましたらステージにお上がり下さい。」
粋「黒川呼ばれているよ。」
黒川「えぇっとどうしましょうか・・・。」
粋「行っておいで。」
黒川「は、はい。わかりました・・。」

黒川は恥ずかしそうにステージに上がる。

司会者「おぉ!!これは素晴らしい!!学園の生徒では無いみたいですがどこからおこしで??」
黒川「えぇっと私は伊集院粋様に仕える者です、今回はこのようなば、場所にお呼びいただきあり、ありがとうございます。」

上がっているのか顔が真っ赤だ。

十紀人「黒川、かわいいね。」
粋「黒川はあげないよ」
十紀人「わかってるよ」
静「お兄ちゃん!!」
十紀人「はひ!!」
司会者「では次です!!第3位!!妹要素抜群!!道明静さんです!!」
静「え!?私ですか!!」
司会者「静さん。ステージに上がってください。」
十紀人「静。おめでとう!!」
静「は、はい。」

静は駆け足でステージに向かった。

司会者「いやぁ、近くで見ると本当にかわいいですね。」
静「そ、そんなこと無いです。」
司会者「コメントも寄せられています。俺の妹になってください!!。静かわいいよ静。などなどたくさんのコメントがある。」
十紀人「俺の妹はやらん!!」
粋「落ち着いて十紀人!!」
司会者「会場が騒がしいですが次に行きたいと思います。」

俺の声は司会者に軽くスルーされてしまった。

司会者「次は第2位と第1位ですが・・・。なんとコレが同票です。慎重な会議の結果過去初めてとなる結果となりました!!なんと今年はダブルミスです!!」

会場から歓声が上がる。

司会者「では!!発表致します!!第1位!!・・・・・・・。」

長いためと共にドラム音が会場に鳴り響く。

司会者「・・・・・白雪さんと百鬼さんです!!」

二人の名前が上がった瞬間会場は割れんばかりの歓声が轟く。

司会者「お二人はステージに上がってきてください。」
白雪「しかたあるまい。」
百鬼「まぁ当然でありますね。」

二人は全くといった感じでステージに向かった。
でも、二人とも顔を紅くしていることに俺は気付いてなんだかかわいいと思えてしまった。

粋「みんなさすがだね。」
十紀人「当然の結果といえば結果だけどな。」
粋「素直に同意しておくよ。」

二人は表彰を受けて文化祭は静かに幕を閉じた。
今年は最高の文化祭だった事は言うまでもない。
・・・
・・


どこかのビルの地下深くにある部屋。
機械音や空調設備の音が聞こえる。
一人の男がコンピューター画面を見つめていた。

???1「斉藤博士ぇ急な招集どうしたっスか?」

一人の少女がつまらなさそうに椅子の上に座ってくるくると回っていた。

斉藤「上坂 赤(うえさかせき)くん。その質問はみんなが集まったときにしてほしい。実にそうしてほしい。」
???2「どうでも・・・いい・・・作戦・・・教えろ・・・。」
斉藤「水無月黒美(みなづきくろみ)くん焦っては良くない。実によくない。」
黒美「・・・そう?」
斉藤「残りの二人は?」
赤「まだっス。でももうそろそろ来ると思うっスよ。」

しばらくするとこの部屋の頑丈に作られた鉄の扉が開かれる。

楓「遅くなりました。」
翆「・・・・。」
斉藤「集まったみたいだ。君たちの調整をした後で本題に入ろう。いよいよだ。実にいよいよだ。」
赤「斉藤博士。よろこんでいるみたいっスね。」
楓「二人ともお疲れ様。」
黒美「疲れて・・・ない。」
・・・
・・


あたりはすっかりと秋の風景になっていた。
教室の窓から見える風景もガラリと変わり風は少し肌寒い。
窓の外はすっかり紅葉が綺麗に見える。
文化祭から数週間たった今俺達はいつもと変わらない毎日を過している。
最近気になると言えば楓が学校に来ていないことだ。
理由は家庭の事情らしい・・・。まぁ家庭の事情なら仕方ないだろうが心配だ。

十紀人「ふぁあぁぁ。」

授業中ともあって俺は大きなあくびをしてしまう。
食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋と秋にはいろいろあるが俺が思うのは睡眠欲の秋だ。
春の陽気に似ているせいか俺の睡眠欲を引き立ててくれる。
授業の終了を告げる合図がなり教師が教室を出て行く。

粋「明日から休みだね。」
十紀人「そうだっけ?」
粋「うん。創立記念と文化祭の振替休日で5連休。」

粋に言われてそうだったことに気が付く。
通常であれば文化祭の後にすぐ振替休日があるのが一般的だが、この学園では文化祭のあとで創立記念日があるのですぐには振替休日を取らずに記念日付近に取って連休になるようにしているのだ。
まったくもってニクイ演出だ。

白雪「百鬼、起きろ。授業が終わったぞ。」
百鬼「もう、食べられないであります。」
白雪「古典的な寝言を行ってないで早く起きろ。」
静「失礼します。」

白雪が百鬼を起こしていると静が教室に入ってきた。

十紀人「静。どうした?」
静「いえ、今日は委員会の仕事があるので先に帰ってもらおうと思って。」
十紀人「そうなのか。なら先に帰らしてもらうわ。」
静「はい、あっ料理はちゃんと作りますので心配しないでくださいね。お兄ちゃん」
十紀人「いつもありがとな」

静の頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細める。
最近、静は図書委員の仕事とかで一緒に帰れない時が多い。
なんでも新しい本を入荷するにあたって調整をとっているらしい。

十紀人「図書委員頑張ってな」

教室を出ていこうとする静に俺は手を振ってそういった。
すると静は笑顔で振り返り「はい」っと言って駆け足で行ってしまった。

十紀人「さて、俺達も帰るか。」
百鬼「ん?ご飯の時間でありますか?」
白雪「放課後だ。」

俺達は商店街を通って帰路に付くことにした。
まぁ普段なら通らないのだが百鬼がお腹が空いたと言い出して商店街に来ることになったのだ。
商店街にある小洒落たオープンカフェテリアに入る。

百鬼「ホットケーキが食べたいであります。」

百鬼はメニュー表を見ながら嬉しそうにそういった。

白雪「はぁ~ご主人様。あまりこいつを甘やかさないでくれ。」
十紀人「別に甘やかして無いんだけどな・・。」
白雪「いいや、ご主人様は百鬼を甘やかしている。」
粋「まぁまぁ、そこも十紀人のいいところなんだから。」
白雪「はぁ~」
十紀人「それより白雪はなにか食べたいのある?」
白雪「私は・・・このパフェと言うものがほしい・・・。」

白雪もなんだかんだ言いながらしっかりと注文をするところが可愛らしい。

粋「僕はコーヒーだけでいいよ。あまり食べて帰ると黒川に怒られるからね。」
十紀人「お熱いことで・・・。じゃぁ俺はカフェモカかな。」

ウェイトレスに注文を言ってからしばらくすると頼んだ物がテーブルの上に並べられた。
百鬼はホットケーキを美味しそうに食べ始める。
白雪もパフェをスプーンで一口分掬い口に運ぶ。

白雪「うん・・・うまいな。」

白雪は満足といった感で顔がほころんでいる。

粋「ふぅ~食欲の秋だね。」
百鬼「何でもいいであります。」

店から商店街の様子を見ると夕食の材料を買い漁っている主婦たちが慌ただしくかけて行く。
静はいつのあんな感じで材料を集めているのだろうか・・。
人混みを見つめているとそのなかでこちらを見ている少女がいた。
髪は短髪でエメラルドグリーンの瞳をした可愛らしい少女だ。
少女はこちらを睨みつけるように見ていた。

粋「ん?十紀人。どうかした?」
十紀人「え?いやなんでもない。」

粋に呼ばれて一旦目を離しもう一度少女の方を見ると先ほど少女がいたところにその姿がなかった。

十紀人「気のせいか??」
白雪「どうかしたのか?ご主人様。」
十紀人「いや・・。」
百鬼「苺もらいであります!!」
白雪「なっ!!貴様!!最後に食べよう思い取っておいた私の苺を!!」
百鬼「取っておくほうが悪いであります。」
白雪「そうか・・・ならば!ふん!!」
百鬼「ああ!!百鬼!!バナナが!!」
白雪「どうした。取っておいた者が悪いのではないのか??」
粋「ははは。二人とも仲がいいね。」
白雪・百鬼「良くない・であります!!」

俺は今のこの平和な時間に甘えていた・・。
そうでなければ気づいたはずだ。
楓の言った言葉に俺の前に一瞬ではあるが現れたエメラルドグリーンの瞳をした少女に・・・。
けど俺にはそれらに気付くことが出来なかった。
楽しい時間が忘れさせてくれていたのだ。
俺達の立ち位置を・・・俺達のしなければならないことを・・・。
・・


どこかのビルのエレベーターの窓から見える風景は町並みをオレンジ色で染め上げてとても綺麗だ。
翠はエメラルドグリーンの瞳でぼんやり眺めていた。

翠「楓お姉様。最近笑ってくれないなぁ。」

エレベーターが止まり扉が開く。

楓「翠。戻っていたのですか?」
翠「楓お姉様!!は、はい今戻りました。」
楓「どこに行っていたのかしら?」
翠「ちょっと町の方に・・。これを買いに。」

そう言って翠は左手の包み紙を楓に見せる。
包み紙はコーヒーのマークと一緒にパンのショコラと書かれていた。

楓「もしかしてそれは私の好きな・・・」
翠「はい。クリームたっぷりシュウクリームですよ。」
楓「翠、も、もしかしそれを一人で食べるというつもりなのですか?」
翠「ちゃんとお姉様の分も買ってきました。そんな顔なさらないでください。」
楓「流石、翠ですね。今は紅茶の準備をいたします。」

楓は笑ってみせるが翠はその笑顔には満足できなかった。
何故なら楓の笑顔はどこか寂しげだからだ。
楓とお茶をして部屋を出て自室の方へ足を進める。。

翠「なぜだ・・・なぜ私にはあの笑顔が作り出せんのだ!!」

翠が壁を叩く音が虚しく廊下に響く。

赤「荒れてるっスね。」
翠「赤か。」
赤「僕で良かったら相談くらいのるっスよ。」
翠「結構だ。」
赤「釣れないっスねぇ。」
・・


粋「黒川。今帰ったよ。」
黒川「お帰りなさいませ。」

暗い部屋で黒川はパソコンの画面をじっと見つめていた。

粋「いつも言うけど暗い部屋で画面ばかり見ていると目が悪くなるよ。」
黒川「すいません。暗くなったことに気がつかなかったみたいです。」

それだけ彼女が集中していたというところだろ。
粋が部屋の電気を付けると黒川はまぶしそうに目を細める。

粋「どうだい。なにかいい情報は入った?」
黒川「いいえ。」
粋「そうか・・・。最近収穫なしか・・。」
黒川「しかし、気になることがあります。」
粋「ん?なにかな?」
黒川「こちらを見てください。」
粋「これは?」

画面には小さい点がまばらに打ってある。

黒川「こちらは地図に起きた行方不明事件の場所を点で表したものです。」
粋「犯人心理学だね。自分の居住地の近辺で事件を起こすと、すぐ捕まってしまう。かといって、全然知らない土地に出かけて行って事件を起こそうとしても、どこに行ったらいいかわからないし、逃げるのにも困る。居住地よりは遠く、かつ土地勘のある地域がもっとも好都合の場所になるわけだ。自宅から遠い、土地勘がある、という二つの要素は矛盾しているがその釣り合いが取れる地域を地図に表すと、特定の円を描くことがある。」
黒川「はい。調べてみる価値はありそうですね。」
粋「丁度いいよ。明日から休みだしね。明日の夜でも調べてみようか・・・しかし良く調べられたね。」
黒川「警察のデータベースを見るのは少し苦労しましたが問題ななかったです。」
粋「はははは。捕まらないといいのだけどね。」
・・


十紀人「はああぁぁぁぁ!!やっ!!やあああぁぁぁ!!・・・・ふぅ~。」

あの後商店街で粋と別れて俺達は家に向かった。
今はというと俺は家の庭で一人で訓練中だ。

十紀人「はっ!!はっ!!はあああぁぁぁぁ!!」
白雪「精がでるな。ご主人様。」
十紀人「白雪か。」

声をかけられて俺は振り返る。
そこには柱にもたれかかりながら俺を見る白雪がいた。

白雪「静が帰ってきたぞ。」
十紀人「そうか。じゃぁそろそろご飯だな。」
白雪「ご主人様。どう思う?」
十紀人「なにが?」
白雪「平和すぎると思わないか?」
十紀人「・・・・。」
白雪「最近思うんだ。このままでいいのかと・・・。」
十紀人「いいんじゃないかな?粋からも何も報告ないし。今すぐなにかあるわけじゃないと思うんだ。だったらその平和を楽しまないと。」
白雪「そう、だな。」

白雪が不安そうな顔をしていたから俺は優しく白雪の頭を撫でた。
空を見上げるとほんの少し欠けた月が上がっていた。

十紀人「明日は満月になるな。」
白雪「そうだな。明日は晴れるそうだ。きっと綺麗な月になるだろうな。」

俺は白雪と別れて家の中に入る。

白雪「平和を楽しむか・・・。」
・・・
・・

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