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「ふぅ・・・」

日課のランニングが済んだ俺は公園のベンチに座って水を飲む。

いたって平凡な家に生まれて平凡に育とうとしていた俺は、

5歳のとき世に言う多重人格的脳障害を患った。

そのもうひとつの人格が出てくる原因は、主に二つ。

過度なストレスが溜まること。

もうひとつは・・・

「あんたが築城嵯峨(つきしろ さが)ね?」

後ろから関節技をかけられた俺は首にナイフを突きつけられた。

「・・・だっ・・・たら・・・?」

聞こえないような小さな声で答えた。

すると女は

「簡単よ」

言うが速いか技を解いた。

かと思うとサッと手に持ったナイフを俺の胸に突き立てた。

高校2年生の夏だった・・・。

隔離された空間・・・。

周りが壁で覆われている。

「ここは・・・?」

胸の周辺がやけに熱い。

「うわぁっ!!」

胸から血が出ている。

痛みがない。

女が近づいてくる。

俺を刺したあいつだ。

「どういうことだ?」

「脳から痛覚を抜いたわ」

女は平然と続ける。

「貴方は自我を保っている珍しい多重人格者。だから被検体にするの。」

「はあ?!」

「じゃあ覚醒してね」

女は注射器を持ってきて俺の首筋に刺した。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

俺は朦朧とする意識の中、女の悲しげな表情を見た。
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どれくらい経っただろう・・・?

痛覚がないはずの身体が疼く。

脳が端から端まで侵されていく。

痛みがあった方がましだった。

痛みがあればまだ理性の欠片位は残ってたはずなのに・・・。

痛みがない分恐怖が上乗せされる。

もう嫌だ・・・。

俺は苦痛に身を委ねることにした。

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「大丈夫?辛いよね。苦しいよね」

もがき苦しむ嵯峨。

自分がこんなに優しそうな人を苦しめると思うと、

いてもたってもいられなくなる。

私は彼の手を強く握った。

「ごめんね・・・。ごめんね・・・!ごめんね・・・!!」

良心の呵責から逃げるように私はひたすら謝り続けた。

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なぜだか手にほのかな温もりを感じた。

「おい・・・名前、おし・・・え・・・て・・・」

途切れ途切れだったけど、

自分の声は届いた。

なぜだか、そう思えた。

「私は・・・私は廻巡(まわり めぐり)だよ・・・」

自分を刺した女の子の声がひどく美しく聞こえた。

「そっか・・・巡か。絶対に・・・忘れない・・・」

すると急に巡の顔が近づいてきて、

キスをした。

「・・・約束。」

彼女の魅惑的な唇から悲しげな声が聞こえた。

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神墓:零 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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