プロローグ
「いい仕事ぶりじゃな。巡。」
その老人は満足そうに頷くと、私に次の命令をくだした。
「次はこの男を連れてこい。」
紙にのっていた写真で見たその人の顔は、
とても優しそうで、凛々しくて、
今まで見た全てのものの中で
何よりも、美しかった。
下に書いてある名前は築城嵯峨(つきしろ さが)。
そんな美しいものを自分が壊してしまうのが
怖かった。
しかし、自分には選択権が無い。
何故なら主の気分次第で私の中の細胞をすぐに破壊できるから
全ては我が主の心次第。
心を持たない主はただ壊し、連れてくるよう命じるだけ。
「分かりました。行ってきます。」
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彼の胸に、私はナイフを突き立てた。
「ごめん・・・ね・・・。」
ナイフの先からは血が、
目からは涙が、
止め処無く溢れるだけだった・・・。