オナニーマスター。
過去現在未来と生態系ピラミッドの底辺に存在し続けてきた無冠の帝王。
ただひたすらにこすり、ただ垂れ流す。
頭の中では一騎当千百戦錬磨。現実では大量虐殺大量消費。
そんな恵まれない彼等を見て、気まぐれな神の一人が言った。
「まぁ、魔法ぐらい使えてもいいんじゃね?」
今が何時なのか。
それはそう遠くない未来のお話。
ただ運命の樹木の枝先が、くねくね曲がってたどり着き、押してはいけないスイッチを押した結果。それがこの世界。
車は地面を走っているし、狸型ロボットは出てこない。今とあまり変わらないこんな世界。
ただ、魔法が存在しているそんな世界。
そんな魔法使いになるための条件はただ一つ。
――三十歳まで童貞を守り抜くこと。
数多の誘惑が闊歩し、幾多の邪念が溢れ返るこの世で、見事童貞を貫き通し魔法使いになったものを、人々は尊敬と畏怖の意をこめてこう呼んだ。
――オナニーマスター。