「不良と引きこもりとの接点は何だと思う?」
授業が終わり、帰宅する生徒や部活動に勤しむ姿が見える時間帯に、咲乃の家にあるエスプレッソマシンでコーヒーを注いでいた俺に、彼女はぽつりと言った。
「……すまん、エスプレッソマシンの音がうるさ過ぎて何を言っているのかさっぱり分からなかった。悪いがもう一度言ってくれないか?」
まるで俺が悪いみたいになっているが、この音のうるささはいつも使っているお前が一番分かっている筈だろうが、何故わざわざこのタイミングで話しかけてくるかね。
「雰囲気イケメンヤンチャ野郎とキモブタヒキニートの共通点は何だと訊いたのだよ」
「え、何でいきなり口悪くなったの」
「いいから早く答えてくれ給え」
「……社会不適合な所、とか?」
「まあ、間違ってはいないが、それはあくまで一般的な、客観的な意見に過ぎないね」
――ああ、成程、そういうことか。
「彼らの共通点というのはね――」
また始まってしまったのか、彼女の持論が。
神菜川咲乃の、押しつけがましい、実に主観的な物言い。
悪い言い方をすれば、ただの屁理屈。
「――ということなんだ」
けど俺は咲乃の持論は嫌いじゃないし、何より、得意気に持論を話している時の彼女は、本当に華やかで、はっきり言ってちょー可愛い顔をして話すので、ずっと聞いて(というよりずっと見て)しまうのだ。
それと同時に、彼女の絶対的な言葉は迷う人を安心させ、縋りたくなるような、拠り所となるような魔法の力を持っている。だから、決して多くはないが、依頼者が来るのだろう。
これはそんな不純な理由で彼女の助手をしている男と、ちょっとアレな女が繰り広げる、横暴で、無理矢理で、無茶苦茶で、強制的に人の悩みを解決する物語である。
正直、過度な期待はするだけ時間の無駄である。