Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 あは、痛い。いたいぞ冴草君。
 そこは、あた、たたた。 いた、いた、いたた。
 あん、いた、 いやん。 ぐげっ。  ぐほっ。
 
 私は今、大学にてご覧のとおり友人からフルボッコにされている。
 いわゆるこれが愛の鞭というやつだろう。
 心配させてすまなかった友よ。また寂しい思いをしていたんだね。
 でも安心したまえ。私はほら、五体満足で君のもとに生還したんだよ。
 だから、もう……。

 や、いたた。
 やめ、いた。 やめ、て。 いたたた。

「痛い、冴草君。そして酒臭い」
「るせぇ。人の安眠妨害しゃがって」
 全く、本当にどこまでもツンデレエスパー・ビューティーナキボクロ・冴草。
 彼こそこの星で最も愛すべき人物だろう。(みっちゃんの次にな)
 しかし、私が地球の平和維持組織、通称『ポリ公』に拘束されて、君が丸腰で助けに来てくれた時は驚いた。
 冴草君、君は一体どんな裏金を使ってポリ公と通じているんだい。
 もしや金ではなく……。いや、あまり多くは想像すまい。
「今度公衆の面前で変態まがいなことやったら只じゃおかねぇかんな」
 今も充分只で済んでいないのだが。まあいい。そっと胸にしまっておこう。
 そんなことより早く制作室へ行こう冴草君。課題の作品作らなきゃ。
「ザマッチ、お前確かに被害者の女の人には何もしてないんだろうな」
「断じて何もしていない」
 私は急いでいたから駆け寄ってジョギング中の女性に時間を聞いただけだ。
 そこを付近巡回と銘打って公園内を徘徊していたポリ公に捕縛されたんだよ。
 迂闊であった。
 私は『地球掌握大作戦』を目論む宇宙人の一員。奴等の手に落ちればどんな末路が待っていたか知れない。ああ、考えるだけでまた恐ろしくなる。
「何もしてねぇじゃ通じないんだよ、あんななりじゃあ」
「いかんかね」
 返ってきたのはOKサインではなくパンチだった。なぜだろう。
「ったり前だろ。早朝霧の中、妙な格好で公園をうろつくな! 不審極まりない」
 冴草君、君はもしかして一緒に行きたかったのかい。
 朝の散歩は確かに気持ちいいものな。
 よし、仕方ないから次は誘ってあげよう。この天邪鬼さん。ああ、それから、
「言っておくが冴草君、ヨロシクのヨの漢字は……」
「ど――っでもいいんだよ! んなこたぁ」 

 いた、いたい。 いたた、あた。
 あたた、 やめ。
 いっ、やめて。 
 げっほぉ。
 
 
 つづく

       

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