星の調書
ザマッチの最終回
「しっかりしろよザマッチ! お前、宇宙人なんだろぉ――!」
大きな罵声と共に冴草君の蹴りが私のお尻を襲った。
その勢いに任せ、私はヤチヨに向かって駆けた。
今を逃せばもう次にいつ彼女に会えるか解らないのだから。明日の夕方まで。
私はなりふり構わなかった。カチューシャを投げ捨て、付け髭をひん捲り、ジャージを脱ぎ捨て垣根を飛び越えた。パンツの中には次男坊がいる。恐れることは何もなかった。
私は愛する妻へわが身をさらけ出し、生まれたままにちょっと近い姿で彼女を抱きしめに行った。
ヤチヨ、ヤチヨ、ヤチヨ。
私たち二人は彼女に飛びついた。
「ヤチヨ、私だ――――!」
ドッカ――ン。
「いや、変態! 誰か、助けて!」
新聞配達員の女の子が叫ぶ。
パンツから次男坊がコロリとはみ出る。
私がしがみついたヤチヨは固く重かった。
彼女は地球でCubになっていたのだ。
ヤチヨに飛びついた反動で私のアフロは吹っ飛んだ。体中に結構な傷も負った。しかしそんなことより喜びのほうが勝っていた。
冴草君には実のところ私が丸ハゲであるのとばれてしまったが、それも何千何百万光年をかけた宇宙での夫婦再開劇の感動に比べれば小さな恥部である。
現在私はとても幸せだ。
ヤチヨに声をかけるのを躊躇い弱気になっていたあの時、冴草君が私のお尻を押して? くれなければ今の生活はなかったのだ。彼には感謝している。
それに家族とはやはり常に共に在り愛を育むものなのだ。
離れていては寂しいものなのだ。この思いこそ万物への愛の礎となるのだ。
これからも私の仕事は続く。地球掌握大作戦が実現されるその時まで。
そしてこの星の調査を続けながら、私は毎日次男坊と妻の待つまほろばへ帰る。家族の営みを成すがために。
さあ、次男坊、今朝もヤチヨの所(ナントカ新聞茶山販売店)へ帰ろう。
新聞配達をしにな。
我々宇宙人の生命とはなんて美しいのだろう。
それはたとへこの星で姿を変えて生きていても何ら変わらない。
様々な形ある物として生れ消えて行く。
我々はそれをちゃんと受け入れている。
万物の流れの中に我々宇宙人は核となり全ての物質中に存在できるのだ。
命にさえもなれるのだ。
素晴らしい才能ではないか。
だから仲間たちよ、皆早くこの星に来るがいい。
堂々と集まればいい。
そうすれば作戦はいずれ成功するのだから。
この星はいい星だぞ。
命の器はまだまだそこらじゅうに転がっている。
私はそれを皆に伝えよう。この星の調書にまとめて。
私はこの星でさらなる充実を噛み締めている。
冴草君は女の子のおっぱいをしがんでいる。
おわり