Neetel Inside ニートノベル
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 たどり着いたのは屋上。初夏の空は気持ちいいくらいに透き通っていて、昼休みにここでご飯を食べるのもいいかもしれないなあ、と思った。
「おっせえよ」
 飛び降り防止のフェンスに寄りかかって紙パックジュースをすする女の人が、うんざりした顔でこっちを睨んだ。昨日のあの女の人だ。なぜか上着に体育のジャージを着ている。今日はそんなに寒いという訳ではないのだけれど、女の子やることはよく分からない。
「ごめんごめん」
「あー、いいからさっさと要件すまそうぜ」
「そうだね」
 まあそこに座って、と会長は僕に座るよう促した。僕は黙ってそこに正座した。
「えーと、まあ昨日見たと思うけど、俺はヒーローなんだよね、うん」
 ちょっと恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。
「意外でした」と僕は本心のまま言った。やっぱり正義の味方はもっと熱血漢であるのが僕のイメージだったから。 
「そう? まあそれでさ、俺の正体黙ってて欲しいのは昨日それとなく言ったけど、まあなんていうか、君がよかったらでいいんだけど、えーと……」
「あーもうじれってえな!! 要はお前も私たちの活動手伝って共犯になれってことだよ!!!」と彼女はその勢いのまま紙パックを握りつぶした。その迫力は僕に「NO」の一言を頭の中から消し去った。
「きょ、共犯ってひどいんじゃないの?」
「うっせえな、どうでもいいだろ。で、やるのか、やらないのか。まあ……わかってるよな?」
「はい。やります」
 二つ返事。この場でこの言葉意外を言ったら僕の身が危なかったはずだ。でも本心からすると正直嬉しかった。だってイメージとは違ったけれど、大好きなヒーローの助手を出来るなんて、妄想の世界でしかできないと思っていたからだ。
「よーし決まったな。で、お前名前なんて言うの?」
「小浦です。小浦 勇樹(こうら ゆうき)」
 ふーん、お前小浦っぽい顔してるしな、と意味不明な事を彼女に言われ、じゃあ俺は君をこうらんと呼ぼう、と会長。この人達はっても自由だということが良くわかった瞬間だった。
「よし、小浦って呼んでやる。私は鬼嶋 弘美(おにしま ひろみ)ね。呼びかたは適当でいいや」
「じゃあ適当――」
「言っとくが、適当っていう名前とかそういう小ネタはいらねえからな?」
「ごめんなさい」
「あ、俺はとりあえず会長でいいや。元を付けてくれると区別的にありがたいけどね」
「わかりました。えと、これからよろしくお願いします!」
 僕がその言葉を言い終えるのとほぼ同時に昼休み終了の予鈴が鳴った。


「あ、お昼……」
 そう思ったが、不思議と空腹感は消えていた。 
 
 

       

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