Neetel Inside ニートノベル
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「どうやら粘液状生物の性質は魔法や能力のように単語で発動を念じるのではなく、融けるイメージ、もとの形へ戻るイメージを念じるだけでいいようだな。体の一部分だけを融解させることも出来る分、魔法などよりずいぶんと汎用性が高いようだ」
「意外と便利ですね」
「確かにな。使い道は今のところ思いつかないが、工夫次第で色々出来そうだ」
 骨格に関係なく紙のように薄くなることもできることはさっきレビトが行っていた実験で判明している。同化術は相手の素肌に触らなければ発動できないが、この能力があれば、たとえ相手が鎧を着込んでいても突破できる可能性が生まれるだろう。
「しかし困ったな」
「え? 何がですか?」
 レビトは溜息をつき、目の前に広がる地平線を指さした。
「陽が登ってきてしまった」
「あ……」
 あ然とするグラマを尻目にレビトはさっさと歩き出す。
「ああ、そんな早足で……」
「半日の距離なんだろう? それなら携帯食料を使うわけにはいかん。とっとと行くぞ」
 ずんずんと山道を降りていくレビトを、グラマは足を踏み外しはしないかとはらはらして見ていたが、その必要はなかったとみえ、あっという間に距離が離れてしまった。
 グラマはそれに気がつくと、慌てて宙に浮かんだそのままの格好で彼を追いかけていった。しかしふと立ち止まると、空高く飛び上がって遠くを見通した。
 地平線の彼方に、まるで背景の山々と融合するような形で小さく見える粒。それが彼らが目下のところ目指している村だった。もはや言葉もなく黙々と山を下っているレビトからはまだ見えないような距離である。
「まあ、なるようになるでしょう」
 誰に言うでもなく呟いたグラマは、風圧の影響を受けないスカートの裾をしっかり抑えながら、どんどん小さくなっていくレビトのもとへ降りていくのだった。

       

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