Neetel Inside ニートノベル
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暗がり皇女と僕。
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序章

 僕が家に帰るときに、それは起こった。
僕たちの住んでいたところではとても寒い山奥だった。だから学校帰りには、とても暗く列になって集団で道に迷わないように灯りをもって帰る。
 その日も暗い山の夜道を帰っていた、いつもと違って僕には何故か、その日だけはとても寒く感じられた。灯りを手に持って細い夜道を歩いて帰る。
「なぁ、ティー知ってるか?」友達の一人、ボルグが話し掛けてきた。
「何を?」
「あんなぁ、隣の町の戦争なんだけど…」
「うん」
隣の町まで機械兵が攻めてきたことは聞いていた。
僕の父さんも兵隊として、隣町で戦っているからだ。
歩みの遅くなった僕達に明かりが近づいてきた。
「そこ何、ひそひそ話ししてんだよ」
僕たちのグループの班長リーファーが、少し怒った様な機嫌の良くない声を出した。
リーファーはあまり機敏ではないボルグや僕を普段から、良くは思っていなかった。
「どうせくだらない話してんだろ… 俺ははやく帰りたいんだからぐずぐずしてるんじゃないよ。」
「ごめん」
「……」
すなおに謝る僕とは対照的に、ボルグはリーファーの方を見て露骨に嫌そうな顔をしていた。
「なんだよ! その顔、なんかいいたいことあんのかよ」
列の歩みが止まり、周りの子供たちが何事かと僕たちの方を見始めた。
慌てて僕達は列に戻り歩き始めた。列に戻ってもリーファーは僕とボルグのことが気に食わないのか、しつこく絡んできた。
「おいボルグ、ティーと何を話してたんだよ! ティー教えろよ」
「いや、まだ何も…」
「はぁ、嘘ついてんじゃないよ」
リーファーが僕を小突き始めた。何を云っても信じてもらえず、どうしていいか分からずに僕は困った様な表情でボルグを見た。
ボルグがいまいましげにリーファーを、そして困っている僕を見てもったいぶった調子で話し始めた。
「戦争終わったんだってよ」
「えっ?それって本当?」と僕。「ふかしこいてんじゃないよ」と、リーファーが同時にいった。
「絶対、間違いないって帰るときに先生が、言ってたんだから」自信を持ってボルグが答える。
「うっそー、マジかよ」そう言うと、リーファーは大声で「みんな戦争終わったんだってよ」と、言いながら、英雄顔で周りに教え始めた。
「本当に?」等の、周りの質問に自分が先生に聞いたといいながら嬉しそうに答えて周り始めた。
取り残される形になったボルグと僕はリーファーの後姿を見ながら、ゆっくりと話し始めた。
「ティー、今家に帰っても一人きりだろ。…もし良かったら家に来ないか」
「ありがとう… でもいいよ」
「そうか… あーでも戦争終わったから、もうすぐティーの父さんは帰ってくるよな」
「…うん」
ボルグが僕のことを心配してくれているのが分かったので、僕はボルグの顔を見て何かを言ったんだと思う。僕の顔を見てボルグは言った。
「だから元気だせって!」
 とにかくボルグの言葉に、僕は笑って何かを答え様としたんだと思う。
なぜなら僕がボルグの事で覚えているのは灯りに照らされた、ボルグの顔が笑い顔になった瞬間、宙を飛んでいたからだ。
「機械人だ!」
リーファーのわめく様な声が前の列から届いた。その瞬間、前の列の明かりがまるで蛍が飛び回るみたいにして動き出した。
「じゃまだ!どけよ!」
リーファーが僕を突き飛ばしていって、茂みに落ちたところで僕の記憶は抜けている。
次に気がついたときには夜道に灯りがいくつも落ちていった。
僕が自分の灯りを探そうと落ちている灯りを見たときに、見知った顔が沢山ころがっていた。
 僕はそれからどうやって帰ったかわからないけれど、家に帰ったのを覚えている。

       

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