Neetel Inside 文芸新都
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早く早く、負け犬の裏庭で
やさしくやさしく

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私についた一対のもの。
微妙な輪郭をしていて
やわらかかったり
強く触ると痛かったり
やたらと大事にされたり
子どもを育てるために血液を白くしたり
かなり万能
戦うことだってできてしまう
無防備にさらすだけ、
弱さを見せ付けるだけの
誰も傷つかないやさしい戦い。

できるなら
つぼみみたいに無防備で
小さい子の蝶結びくらい危うくて
お茶の葉みたいにさりげなく香る
そんな他愛ないものになってみたい
思い切り優しくしなくてもいいから
思い切りやわらかくさせて。
あなたの指先の力を借りて
かたちをなくしてしまいたい
滅多にないほど
やわらかくなってしまいたい。


*


手繰り寄せても手繰り寄せても
指のあとさえつけられない
白い夜に
優しさだけを糧にして
暗い海に漕ぎ出していきたい
遠くにささやかに光る
真珠のように小さく甘やかな一点へ。
次は何を忘れなければいけないんだろう
期待で胸が痛くなる
気がつくと
うしなうことはもうそれほどの苦痛ではなくなっていて。
海の向こうが白く白くなっていく
朝日がまっすぐに黄金色を放つ
漂白されていく
世界
わたし
波音
なにもかも溶け合って
ずっとずっとこのままならいいのに


       

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Neetsha