Neetel Inside 文芸新都
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私 僕

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 さて、それでは「僕」の話を始めようか。
 僕の話と言っても前に書いたように三行で収まるような人生だし、そこまで語るほどのものではないだろう。
 なので、簡単に僕のスペック及び生い立ちを語るだけにとどめておこうと思う。名前などを教えたところで意味はないだろうし、僕は自分の平凡な人生及び平凡な人柄に比べ大層立派な自分の名前が大の苦手なのだ。
 こんな裏事情を暴露するほど自分の名前が嫌いなので、僕の名前はここで、そしてこれからも割愛させていただきたく思う。
 さて、横道に逸れてしまったが、まず僕の基本スペックとして僕のことを表すのであれば「普通」の一言に尽きるだろう。
 君は小学校、もしくは中学校のことを覚えているだろうか?
 その時代、君のクラスに何人もいたのではないだろうか。良くもなく、悪くもない。目立ちもせず、かつ目立たなすぎるというわけでもない。存在感がないのでもなく、かといっていなければ皆に「あいつは?」程度の認識はされてもらう。
 そんなごく普通の生徒の一人が僕であり、それをずっと続けて完成したのが僕なのである。
 頭は良くなければそこまで酷くはない。中の少し上を走っている程度だ。
 人柄についても、イジメの対象にされるほど悪いわけでも、皆に尊敬されるほど良いわけでもない。良い事もすれば悪いこともする。
 運動は、球技は苦手だが陸上関係は得意。かといってその二つにそこまでの差異はなく、「そこそこ」にどちらもできる。
 「普通とは皆の中に紛れる物」という話を聞いたことがあるが、僕はそんなものじゃなく、ホント僕が普通の元なのではないかと一時期真剣に考えたほどだ。(そんな想像をしている時点で痛々しいというのは自覚している。突っ込まないでくれ)
 こんな普通を変えたくて、言葉遣いや口癖、果ては一人称まで変えた時代もあった。それはそれで「普通」じゃない気もしたし、皆も「普通」に扱ってくれなくて楽しかった。
 しかし、結局は「普通」なのだ。
 それは、思春期の少年少女が思い悩む心の不安定さから来る反抗期と呼ばれるものだし、僕の行動もその「反抗期」と呼ばれるものからは逸脱していなかった。
 つまり、僕は普通に反抗期をしていたわけだ。
 長々と「こいつ何言っているの?」って人は次の結論だけ見てくれれば十分だし、今までの全てはもうこの言葉を僕に当てはめるためだけのモロ出しの伏線、それと僕が自分で自分を認めるための精神安定作業とでも思っていてくれればいい。
 結論は一つ、それこそ3行…いや、1行も使わないで、平仮名なら3文字、漢字なら2文字で僕を表せる。
 つまり僕は、どうしようもないくらいの「普通」なんだ。

     

 そんな「普通」な僕がどんなに頑張ろうと「普通」から抜け出せるわけもなく、どんなに努力しようともそれは「普通」の範囲内に収まるものだった。
 痛い人のように奇声をあげて頭振り回しながら周りの人間傷つけるなどといった行動に走ってみようかと、一度は考えたことはあったが、しょせんは妄想。そんな夢などもう見る気にはならない。
 と、いうか。そんなことをしたら、この先冷たい牢屋で人相の悪いおじさん達と仲良くランデブーするか、傷つけた人数によってはお花畑に強制連行されかけるであろう。そのくらいはわかる。
 度を越えた行動は結局、周りから何かしらの罰を負うものであり、僕はそれが怖かったのだろう。なので、どんなに自分を変えようとしても、それは「常識の範囲内」の中でのことなのだ。
 僕が何かを変えるたびに戸惑っていた友達も、少しすれば日常と受け止めて、結局僕は普通になってしまう。そんなことをくり返した結果。僕は普通であることをだんだんと受け入れるようになった。

 大体、普通じゃないことに何か意味があるのだろうか?悪い方向に普通じゃない奴は、結局は警察のお世話になったり、運よく逃げ切れたとしても長い逃亡生活が待っていたりするであろう。別の方向で普通じゃないにしても、普通じゃないこととは結局は周りの注目を浴びたりして気疲れしてしまうのではないか?そう考えれば、僕は普通である分幸せなのではないのだろうか?
 最近では、そうやって自分を納得させることが多い。
 そう、納得だ。結局は自己満足。憶測で物事を話し、それが現実のように見せながら僕は「それよりはマシだ」と自分を偽るのだ。
 結局、そうやって自分の殻にこもりますます「普通」から逃れられないのであろうと自己分析してしまい、またしても自分を慰める材料を見つけるのだ。
 
それが全て。

 そんな、独白を頭の中で長々と洗濯機の如く高速にまわしながら、僕は今日も学校へ向かう。途中で何か事件でも発生しないものかと不謹慎なことを考えつつ、この世はそんなに甘くないことを知っている僕は特に期待もせずに学校へ着く。

 下駄箱で会った友達と昨日のドラマについての話を笑いながらして、教室へ入る。ありきたりで、特に何の問題もない一日。それが今日もまた始まるのだ。そう物思いにふけっていると、鐘が鳴り、SHRが始まることを知らせてくれる。どうせ今日も先生は遅刻するのであろうと高をくくる僕の目の前で、ドアが教室の反対側まで吹っ飛んでいった。

       

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