Neetel Inside 文芸新都
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ご飯の前にショートショート
滅亡の日

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2579年地球にむかって星がおりてきた
白いしっぽが美しかった
人々は天に祈った…

滅亡の日 

神に仏にありとあらゆる人々がありとあらゆるものに祈った
今接近している星は地球の半分ほどの大きさだったが
地球を滅ぼすには申し分ない大きさだった
この世界始まって以来の大事件に世の中は荒れている
死を前にこの星の知的生命体が築きあげた「世界」は血液のつまった血管のようだった
ノストラダムスの大予言は何年も前におわったものだと思っていたのに
今更世界が滅ぶなんてひどすぎる
他の星に移住する計画だってちっとも進んでいない
逃げ出したってなにも残らない
もう本当に祈るしかなかった
しゅるしゅるのびる星のしっぽが空を切り裂いておりてきた
最期の一秒なんて信じられなかった


穏やかな光を見たのが最期だった


そこから先は地獄だった

地球とかつて呼ばれていた星は赤く燃え上がった
隕石の衝撃でほとんどのものが吹き飛んだ
けたたましい音がしたが音を聞く者もいなかった

滅ぶのは一瞬だった
瓦礫ともいえない瓦礫の中はぐるぐるとうなるような音をたて燃えていた
しかしそのなかになにか動くものが見えた
灰色の岩山から黒いものが転げ落ちた

それは猫と呼ばれていたものだった

奇跡がおこったのだった
どんなに知識豊かな学者が集まっても計算できない
何兆分の一の確立が何兆回も重なって
広い宇宙に一度おこるかどうかもわからない
広い数字の海に一つ針をさすように命をつなぎとめた

人々はこの奇跡をみることはなかったが本当にすばらしいことだと賞賛しただろう

その黒い猫は燃え尽きた世界を歩きはじめた

しかし次の瞬間には酸欠で死んでしまった

あまりにあっけなかったが嘆く者もいなかった

しかしその黒い猫はまだ何かを残していた

猫の体の中にある何億もの菌だった

動物の生命力を圧倒的に凌駕している最も下等な生物が
この地球に残ったたった一つの「命」である
奇跡に猫が生き残るという奇跡がかさなって
「菌」が生き残った
これこそが奇跡だ
この地球に生命がいた証だ
美しき生命の灯がいまだに燃えているのだ


しかしまた次の瞬間にはあまりの熱さに全て死滅してしまった

やはりただの偶然だった







       

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