Neetel Inside 文芸新都
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ご飯の前にショートショート
化け物

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俺たちがこの土地をみつけて一週間
ほとんどの仲間がつかまった
化け物に

化け物

この土地に古来からすんでいると思われる化け物の特徴は以下のとおり

・鋭い目つきに大きな口
・どんな生き物も絞め殺すような長い腕
・パニックに陥ると突如奇声をあげる

その姿はあまりにも恐ろしく捕まった仲間はみな絶望の表情を見せた
そして残ったのは俺ひとり、食料も底をつきた
もう手をこまねいている暇はない
このジャングルから脱出する策を早急に練らねばならなかった

このジャングルには無数の化け物がいるようで
見つからないようにこの土地からでることは不可能なようの思われる
今ある道具は一本のナイフだけだ
もちろん化け物をすべて切り殺すことはできそうにない
そんなことをしようものならあの長い腕で絞め殺されてしまう
自分の窒息する姿を思うと指先が冷たくなった
しかし何もせずに隠れている時間が俺の空腹に拍車をかけている
動けなくなる前に行動するしかない
夜をまって少し外にでてみることにした

あまり暗くならないこの土地の夜は決して脱出のタイミングではなかった
せめてもの救いはやつらでも夜に眠る習慣を持っていたことだ
そのわずかな救いを胸に小さなわき道を歩いた
湿った空気の中からわずかに何かが光るのを見た


化け物がいた


すぐに元の道を戻ろうとしたが
どうにも俺たちはやつらの姿を見ただけで体が言うことを聞かなくなるようだ
逃げろ
念じてみるが体が震えていうことを聞かない
見つかる
化け物の視線は徐々に俺の姿をとらえてきた
そして耳をつんざくような声で鳴いた
その声で俺は我を取り戻すことができたようだ
それからはただやみくもに走った
喉に血の味を感じ、涙を流している自分がそこにいた
恐怖の涙はこうも熱いものかと思った
涙をぬぐい
振り返えると
複数の化け物に追われていることに気がついた
生きる希望を食う鳴き声に耳はおののいている
もう無理か走れそうにない
目の前は行き止まりだった
どんなに生きることをあきらめてもその絶壁を登る俺がいた
爪がはがれそうになったが上った
しばらく登ると頂上が見えてきた
下にいる化け物たちはもう追ってきていない
そして最後の手をかけた

その上にはやつらがいた
目を閉じて思った
もうあきらめてもいいか

震える指が岸壁からはなれた


青い血しぶきがビルの下で花を咲かせた
突如東京に現れた「化け物」の群れ
最後の一匹は「自殺」と報道された



       

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