Neetel Inside ニートノベル
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X   救世主の塔                              X
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X     成り立てサキュバスの領域                     X
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「……うぅ」

 ホッシーナが目を覚ましたとき、天井が見えた。
 先ほどまで屋上にいたはずなのに……と、薄ぼんやりとした記憶を掘り起こす。
 たしかに自分は屋上にいた。が、『屋上にいた』という記憶しかなくて、そこで起こった出来事については何も覚えていなかった。

 あいかわらずこっ恥ずかしい水着を着ている。もちろん怪我はない――が。

「いたっ……」

 立って歩こうとすると、途端に下半身に痛みが走る。いや下半身ではない、これはもっと別のところ。まるで両側から皮膚を引っ張られるような、裂けてしまいそうな痛み。

 しかしホッシーナは屋上での記憶が何一つない。なのであの惨劇を覚えていない。それが幸か不幸かはわからないが。

 止まっていても始まらない。ホッシーナは内股気味に探索を始めた。

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 ホッシーナは自分の『時間操作』について考えた。
 どうやら使用したあとの気だるさは『疲労』ではないらしい。どれだけ休んでも回復することはなかった。
 おそらく回復しない何か――そう、言ってしまえば『身体能力の低下あるいは喪失』なのだろう。
 となると、乱用するわけにはいかない。『時間操作』は最後の手段として、自力で解決できる困難には立ち向かわなければならない。

 けれど「まだ大丈夫」と思って能力の使用を渋った結果、どうなってしまうのか。

「あ、あ゛ー……」

 ホッシーナは腹に突き刺さった鉄の棒にうつろな目を向けていた。どくどくと溢れる血は棒を伝い、ぼたぼたと床に落ちて溜まっていく。
 このフロアもトラップが多く存在した。特に握りこぶし大の投石がびゅんびゅんと飛び交い、最初は運動神経だけで避けていたが次第に疲労が溜り、動きに鈍くなったホッシーナに容赦なく石は襲いかかった。
 頭からは流血し、身体中に擦り傷と青あざだらけ。もはや時間を停止させても逃げることが困難な状態。そんなホッシーナを、鉄の棒がどこからか発射され貫いた。

 もっと早くに能力を使っていれば。ホッシーナはそう思いながら息絶えた。

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 また目が覚めると天井が見えた。
 記憶を整理すると、ここは屋上から2つ下のフロア。そして、先ほどのフロアの記憶がない。
 妙にお腹が痛い。これは腹痛というよりは、何か物理的な、まるで前から後ろを貫くような痛みだった。

(まったくもう、何が何やら)

 どうやらこの世界は勝手が違うらしく、ホッシーナは不自由さを感じていた。能力の使用制限もあるが、『塔からの脱出(もしかしたら塔内に探している超能力者がいるかもしれないが)』が目的になっている節がある。
 まるで得体の知れない何かに遊ばれているような――

「あれ? キミもここに迷い込んだ人?」

 ――と考えていると、すぐ目の前に人がいた。
 この塔では少々場違いな、ピシっと正装(まるでハスラーのような格好)をしている、人。ベストをきっちりと着こなした、隙のない姿。けれど性別がわからなかった。胸の膨らみはほとんどない、背はやや低めだがどちらでもあっても不自然ではない。
 声の感じからすれば女性だろうか。中性的だがどこかツヤが感じられた。

「……あなたは?」
「キミと同じ境遇をたどる者だよ、水着のお嬢さん」
「…………っ!」
「ハハハ、怒らないでほしいな。同性じゃないか。
 私は名前はナツメ。よろしくね」

 どうやら同性らしいが、それでも肌を晒すのが恥ずかしかった。
 べたべたと、舐めるような視線を感じる。ホッシーナは思わず、腕を組んで身を守ろうとした。

「ははは、ごめんごめん。どうせその様子なら苦労しているんじゃない? だったらさ、お互い協力しようよ」
「…………」
「悪くない話だろう?」

 たしかにデメリットはない(と思われる)。けれど、言いようのない不安があった。
 目の前の(男性のように見える)女性。どう見ても人間なのだが、人間ではないような気がした。
 もちろん“なんとなく”の範疇であったが、ホッシーナはその“なんとなく”を信じるようにしていた。
 なので、ここでの返事はたった1つ。

「ごめんなさい。無理です」
「そっか。残念」

 意外にもあっさりと引き下がった。ホッシーナは安堵に胸を撫で下ろそうとして――

「じゃあ、力づくだな」

 身構えるよりも、能力を使用するよりも早く、その女はホッシーナの首を締め上げ、頭を床に叩きつけていた。
 脳が揺れ、目の前が暗転し、意識が飛びかかってしまう。そんな状態で、首を締めつける相手と目が合った。
 あっという間に叩き伏せられていた。

「乱暴してごめんね。だってこうでもしないと、逃げちゃうでしょ?」
「ぐ、ウグッ」
「あんまり抵抗されるのも面倒だし、ちょっとイタズラさせてもらうね」


「魔眼(サキュバス式イビルアイ)」


 ギラリと目が光ったように見えた。その瞬間、身体中に電流が走ったように痺れた、ホッシーナはそう感じた。
 が、そんな生易しいものではなかった。

 手が勝手に上に伸び、ナツメを抱き締めようとした。

「ふふふ、熱烈だね」
「そんな、これは違っ」
「うん、知ってる。魔眼(サキュバス式イビルアイ)は、相手を好き勝手に操ることができる。ただ至近距離で目を合わせなくちゃダメなんだけど……キミも、満更じゃなかったのかな?」

 否定しようにも口が動かない。腕はナツメの背中に回り、ぎゅっと抱き締めてしまう。
 身体と身体が密着する。ナツメの体温が服越しから肌に伝わってくる。魅了(サキュバス式チャーム)がかけられているわけでもないので性的な興奮はなかったが、ドキドキと胸が高鳴ってしまう。

「感じるよ、キミの鼓動。どきどきしているね」
「離しなさい、今なら、許してあげるから」
「まだ自分の立場をわかっていないようだね。私の意思一つで死んじゃうんだよ?」
「ぐっ……」
「冗談だよ。そんなことするわけないじゃない。
 ……私はね、もう我慢できそうにないの」

 そう言ってするすると服を脱ぎ捨てたナツメの股、下半身は、滴るほどに濡れていた。
 ナツメの匂いが周囲に充満した。

「アカネにも散々遊んでもらったけど、ぜんぜん足りないんだ。キミの名前、教えてくれる?」
「斉藤、星奈(言いたくないのに……! 口が勝手に……!)」
「ふぅん、星奈さん、か。それじゃあ星奈さん、これからキミに、素敵な体験をさせてあげよう」

 ナツメはホッシーナにとってショーツの代わりの水着を引き裂いた。
 あらわになったそこに、そっと手をかざす。


「擬態 (サキュバス式極悪トランスフォーム)」


「あ、あっ、ああああああああっ!?」

 まるで木が育つように、ホッシーナから男性特有のそれが生えた。
 それは丸太を思わせるように太く、びくん、びくんと脈打っていた。

「なにこれ、何これ、何これっ!?」
「ナニって、見たことぐらいあるだろう、非処女に匂いがするぐらいだし。
 女性が男性の悦びを知ることができる、素敵な魔法だよ」

 両手で覆うように、太い竿に触れた。その瞬間、

「あ、あっあっあっ、アッ!」

       

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