「この世界を1つの小説としよう。
月子は登場人物。主人公で、ストーリーの中心人物だ。
で、僕たちはストーリーテラー。登場人物じゃない、小説の進行役を担っている。
そして、神様は……シナリオライターさ。あらゆる物語を創造し、終わらせる、唯一の存在。
僕はそんな神様に“命令”できる」
ジュル、ジュルルルルルルッ
【ゲームオーバー】
塔のどこかで、クラゲの触手が伊藤月子の脳をすべて吸い上げた。目から光を失った伊藤月子から触手が外され、グチャリと床に崩れ落ちた。
「おっと、巻き戻りが始まっちゃったか……まあいいか、そろそろ先に進めないと。
もうここに来るまでは大した障害もないから……そろそろ僕の出番かな。
それじゃあ、行ってくるね」
塔の主から離れ、部屋の扉に向かう。
出ていく神道陽太を、塔の主はただ見つめることしかできなかった。