ドドドドドドド!!
聞き慣れた不快な音でオレは目を覚ました。
「トロトン、朝からうるさいぞ」
ペット豚の『トロトン』にオレは朝からしつけをする。
スコ!ンスコ!ンスコ!スコ!
奇妙な擬音が鳴っている、奴はどうやら何かの臭いを嗅いでいるようだ。
「ナニ!? 」
トロトンの野郎!何の臭いを嗅いでいるのかと思ったらとんでもないものを持っていやがった!
「ぶっひー!ご主人様!イクリさんのパンツ嗅ぎ尽くすぶひ~!」
「トロトン!貴様どこからそれを!?」
「今日イクリさんが朝風呂に入っている時に拝借したんだぶひ!」
「なるほど、朝風呂中は部屋ががらあきだからな。」
「部屋から物色したんじゃないぶひ」
「?…どういう事だ?」
「洗濯カゴから物色したぶひ!一日履いていたイクリさんのパンツは香りがたくさんついてて幸せぶひぃ!」
(こいつ!…今日の朝飯はとんカツにしてやろうか?活きのいい豚がこのままだと手に入りそうだ)
「というかうらやましい…。」
クソ!オレも男か…つい本音が出てしまった。
「ご主人様も嗅ぐぶひ?」
そういって奴は自分の家畜小屋(室内にある)からイクリのパンツをもう二枚持ってきた。
「…ありがとうトロトン」
いろいろ考えたがこの際だ、自分の欲望に忠実になろう…。
イクリのパンツを左で持ち、右手で仰ぐように香りを確かめる。
--イクリの香りがする--
濃いイクリの香り、いつも近くにいる時に感じるあの香りが今ここにある…、それもかなりの濃度だ、香りを楽しめば楽しむほどオレの心は満たされていった。
「あぁ…幸せだ。」
「何が幸せなんですかミルさん?」
悲しい時間が終わるように幸せの時間もいつか終わりがくるのだ、そしてほら、また悲しい時間だねorz
「いつから…見ていた?」
オレはもうだめだと思ったが一応聞いてみた、あの家畜は部屋の隅でパンツを枕に寝たふりをしていた、しかし家畜はバカなのかパンツを枕にしているのでイクリのパンツがそこにある事がバレバレである、きっとあいつは寝たふりをすれば全て流れると思っているのだろうよ、我がペット家畜よ、だが一番重要なのはそこではない、イクリのシルクのランジェリーなのさ、そう、君が枕にしているその芸術品だ。
「というかうらやましい…。あたりからですかね。」
オレ達は終わった、言っとくけど『オレ達が』終わったからな、そこで寝たふりをしている豚畜生が、終わったのはオレ一人じゃねーぞ。
「お二方、今日から朝食はわさびだけにしましょうか?そんなに朝から香りを楽しみたいのでしたら」
いつもの笑顔を一応出しつつ迫るような言い方の彼女は正直怖かった、今日のあの笑顔はきっと怒っているのだろう、おい豚、お前も反省しろ、オレを一人にするな!
「正直、すいませんでした」
オレは正直に謝った、あの豚は謝らなかった。
人生とは辛い事の方が多いように思える、だけどきっと辛い事は終わる、今日のオレ達の、幸せだった時間が終わるように…。