Neetel Inside 文芸新都
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電話はしませんでした。
私にもそこまでの勇気はなかったようです。

私はもう一度彼女に会いました。
もちろん駅で
今回の私の秘密は「脅されました」いや、正確ではないかもしれない。「恐れた」
あの笑顔を。


あの再開から幾分か経ち、電話しようかしまいか悩んだりしてました。
そこでまた彼女と出会ったのです。
というよりもむしろ、声をかけられました。

思ったより重労働だったその日の派遣で、くたくたでした。ふと、正社員であった頃を思い出していました。


「こんばんは!」
前に転んでしまいそうな声が後から聞こえる。
私は疲れたなんのを忘れ、ぎゅっと急旋回した。

「わ!・・・・・・・・・びっくりした」
大きな一重の目がより大きく、見開いていた。
手も大袈裟に上にあげて、アニメのようであった。

「・・・君は」
「はい!こんばんは!こないだぶりですね!」

私は急な出来事に対応できず。「あ」とか「え」を繰り返していた。
やっと出てきた言葉が、「はい」であった。

「はい、ってなんか変じゃないですか?!しかも年下に!」
「あ、ああごめん」

やっと落ち着いてきた私は、改めて彼女を見た。
無邪気な笑顔である。さきほどの私の「はい」を、繰り返し真似している。
大きな一重に大きな動作。元気あふれ、くるくると動いていた。

「こんばんは!はい!」
「お、おい、もういいだ「ところで」

ふっと、周囲の気温が下がる。彼女の周辺から明るさがオフになった。



「どうして、電話かけてこないんですか?」
「え・・・」



彼女の無邪気な笑顔は無くなった。
あの微笑みだ。「あの場」で見た。





「誰かに喋りましたか?」




周囲の明るさも暖かさも全て、彼女の微笑みに吸い込まれていく。
音も忘れそうになった。ただ、彼女の微笑みに。全てが。
声がでなかった。

私があの時みた微笑みが、私に向けられていた。


思い出しながら書いているので、細かい所は忘れてしまいました。
確か夏であった気がしますが。
でも、あの微笑みだけは大変印象的で今でも忘れられません。
おやすみなさい。


コメント(1)
その子はかわいいの?







       

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