Neetel Inside 文芸新都
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一章.「連絡網」




遅刻だ。

好きで遅刻したいわけじゃない。しかし時間は僕を置いていってしまった。
生徒指導室に磔刑にされた僕を時間は待ってくれなかった。
左腕を締め付ける腕時計の文字を憎らしく見つめる。
失敗した。大失敗だ。

携帯を持ってきていた僕が悪い。
規則は規則だ。学校の規則を僕は破った。
携帯は学校に持ってきてはいけない。
ルールに僕は足を取られてしまった。


違反したことを正当化するわけではないが、
生徒指導室に軟禁されたのは少々うんざりした。
反省文でもなんでも書いてはいいが、予備校の授業開始時間一五分前まで僕を抑えて
説教なんて嫌がらせとしか思えない。
初めに生徒指導の教師には予備校に向かわなきゃいけない事は言った。
言い訳でもなく、予定はないかと聞かれたからだ。
だのにこのザマだ。

いつ終わるか、いつ終わるかと僕の腰が浮き上がるたびに癇癪を起こし反省が足りないという。
反省文を出来るだけ書き残ったものは翌日書いてくるように言われた。
余白とのにらめっこが待っているのも重くのしかかる。
そもそもだ。帰りのHRに僕の携帯がなるなんて想像してなかったことだ。
油断は事故のあとに気づく。
メールは昨日の晩に来た悪戯のようなものと同一人物だった。


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 【小坂愛様】

先日連絡をさし上げた者です。
貴方と是非お話をさせてもらいたいので、
そちらへ伺わせていただきたます。
いつかは分かりませんが何らかのコンタクトを考えております。
貴方が希望する、日時場所がもしあればご返事ください。


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やっぱりこの出会い系のメールかと、携帯のメール画面を見る。
説教を食らったあとようやく返してもらったため目を通したの時間が開いていた。
一番前の席、中央、担任の前というポジションで着信音にビビってポケットを抑えた
数時間前の自分の姿を思い出し笑いそうになる。
で、来たメールは出会い系のもの。内容はストーカーチックでさえある。
僕をやっぱり女と勘違いした愚かな業者が頭に浮かぶ。雑なテンプレートだ。
メールを消去しようとしながら指を動かすと、
大して中の良くない調子の良いクラスメイトの囃し立てが耳に返ってくる。


僕は馬鹿だ。消去するのも面倒くさくなって画面を閉じ息をつく。
間に合わなくなった授業の風景を想像しながら
先に行ってしまった時間を追いかけようと僕は、自転車を漕いだ。

       

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Neetsha