Neetel Inside ニートノベル
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1話:3丁の銃

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うーむ。
故郷を離れ旅に出て、今日でたしか3日経つ。
荒野をさまよいモンスターを倒し、なんとか町らしき場所にたどりついた。
それがこの町、の、はずなんだが……

「……この寂れ方は、一体……」

思わず声が出た。
そのくらい人がいない。
誰もいない。なんだこの町。

いかにもウエスタンな感じの町だが、決闘をするガンマンはいない。
そりゃまあそうだ、もう日は落ちた。だがそのほかはどこへ行った。
西部の夜は酒を飲んで過ごす、それがテンプレってもんじゃないのか?

うーむ、わからん。今が夜だからか? 
けど今はまだ8時半。機能停止には少し早い。

「まあ、いいか」

誰もいないけど声を出す。返事は当然ありません。
静かすぎるせいであろうか、なんとも不気味な町である。さっさと先に進んでしまおう。

新しい町に着いたとなれば、やることはそうただひとつ。情報収集、それだけだ。
となればやはり、行くべきは酒場。RPGの定番だ。
そしてなによりこの静けさ。酒場に活気が集中している、その可能性もあるだろう。


よし、とりあえず酒場を探そう。


……と、思ったのだが。
町全体がひどく暗い。
どの家も明かりがついてない。
おかげで足元がおぼつかない、当然探索もはかどらない。せめて街灯くらいつけろ。

それでもしばらく歩いていると、暗闇に目が慣れてくる。
薄目を凝らしてあたりを見回し、そんな感じの看板を発見。
ジョッキから溢れるビールの絵、酒場でなけりゃ訴訟もの。おそらくここで合っている。
が、他の家と同じで、ここも明かりがついていない。活気の一点集中説、ここに崩壊のお知らせです。

「けど、戸は開いてるんだよなぁ……」

また声が出た。この町は寂しすぎる。
酒場の扉はあけっぱなしだった。
薄暗くてよく見えないが、店内に人の気配はない。

ここら一体全部空き家?
そんな考えすら浮かんだが、さすがにそれはないだろう。
どの家も外面は綺麗っぽいし。ちょいちょいガラス割れてるけど。

さて。
やることは情報収集だけ、そうさっき言ったが、もうひとつあった。
寝床の確保だ。
2日の荒野ツアーを経て、野宿の辛さは骨身に染みた。風くらいはしのいで寝たい。
が、酒場がこんな調子だ。宿屋も似たようなもんだろう。
じゃあもうここでいいんじゃなかな。どうせ誰もいないだろうし。

「じゃ、お邪魔しまーす」

耳鳴りがするほど静かな町。黙っていると、落ち着かない。
だから一応、挨拶をした。無人だとは知っていたが。

「ひ……っ!」

それで正解だったらしい。

       

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