Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 「妖精さんは言いました。『本編が進まないなら外伝を書けばいいじゃない』。
 そうです! 例えフェアリー・テイルが半ば投げ作品になりかけても!! いや、なりかけてるからこそ!!!
 セックス! おカニバ! そしてバイオレンス120%のエロエロ外伝、脳内真っピンクド淫乱痴女妖精ティティちゃんのセックス道中記は永久に続ける事ができるのです!!!!!」
 「……お前が何を言っているのか全くわからない」
 そうは言うグロウであったが、大体の状況は理解できる。
 一体衣装をいくつ買い込んだのか、今度は巫女服を纏い大麻おおぬさを両手でしゃんしゃんとぶん回し一回転して決めポーズを取るは、妖精皇女ティターニア。
 真夜中にも関わらず、この異常なハイテンションは、間違いなく例のアレである。
 (……また、か)

 
 「いっきまっすよーっ!!
 TITI'~~Sキッチ~~~ン!
 グロウ様が食べてくれるまで終わらない!!!! 新春グルメサバイバルスペシャル~~~~~~~~~~!!!!!!」
 「ぷっぷくぷー……ぷっぷっぷっぷー……」

 また、であった。

 「……今何か不穏な言葉が聞こえた気がするが……」
 「はい。これまでカニバカニバと銘打ちながら結局は寸止めで終わってきました。
 きっとみんな思ってるはずです。『どうせまたテキトーなギャグで茶を濁すんだろ』と!
 これじゃいけません、南に雌豚じみた糞マゾ妖精ありとまで言われた被虐皇女ティティちゃんの名が廃るというものです!
 今度と言う今度は! グロウ様が食べてくれるまでぜーったい終わりません! もう後には引けませんよ! ノーフューチャーです!!」
 「……ああ、そうだな」
 次から次へとわけのわからない事を並べ立てられたグロウはもはやツッコミを入れるのも面倒に思えた。
 (……どうせ何を言っても事態は好転しないだろう)
 状況を楽しむ事はとてもとても不可能だったが、思考を放棄することはできた。
 頑固で芯が強い、と言うより身体そのものが芯で出来ているような豪傑であるグロウだが、ティティのしつこさには勝てなかった。
 「それでは早速お料理されてきます! 美味しく食べて下さいね、グロウ様!」
 笑顔でそう言いながらワダツミに鷲掴みにされてキッチンへと運ばれる姿はとてもシュールな光景である。
 「…………はぁ」
 ため息を吐くと同時に、部屋のドアが閉まった。
 


 


 ◯ティティサラダ
 第一品目は丼ほどの大きさのボウルに盛られた色とりどりの野菜であった。
 「サラダか……ティティの姿が見えないが」
 「どうぞおめしあがりくださいでござる……」
 すっかりハイライトが入っていない目が定着したワダツミが告げる。
 (この中にティティが入っているのか? いや、あいつだったら見えない所よりもサラダの上に寝そべるだろう。これは恐らく、先に前菜を食べさせることによって意識を食事中の状態へと持って行かせる作戦……か……?)
 とりあえずグロウはフォークを野菜に突き刺した。奥まで。
 ザクッ。
 グサッ。
 ぶちゅっ。
 「ぐぇぁ」
 
 「…………」
 グロウの推測は的中していた。
 完成直後にティティが『やっぱり私が入らないと妖精料理とは呼べない! 私の血肉イズドレッシング!!』
 と我慢できずに底へ潜り込んだ事を除けば。
 フォークを持ち上げたグロウの目に映ったものは、腹部二箇所を突き刺され貫かれた哀れな妖精の姿であった。
 「ぐろ……さま……いしい……で……」」 
 口の端からは血を、目元からは涙を流しながら必死に笑うティティ。
 全身は痙攣を繰り返し、持ち上げられ裂かれた脇腹からは臓物が見え隠れしている。彼女が半分不死身だと言うことを知らなければトラウマものの光景だった。
 「…………無理だ」
 グロウはフォークを引き抜き、再びティティの身体にそれを突き刺した。
 心臓を一貫。即死である。
 ティティは刹那の官能を味わい、息を引き取ったのだった……。


 ・反省
 「全くグロウ様ったら、フレッシュなサラダにフレッシュな少女を掛けあわせた超高級料理を無駄にするなんて! 罰当たりですよ!」
 「……無駄にしたのはお前の方だ」
 




 ○ティティ×××´
 「……」
 「……?」
 現在、第二品目をワダツミが作っている最中である。
 だと言うのに、ティティは何故かグロウの隣でドヤ顔を披露していた。
 「……諦めて普通の料理を出すことに決めたのか?」
 とグロウが問うと、ティティはちっちっちっと指を振って楽しそうに笑う。
 「いえ、紛れもなくティティちゃんの妖精お肉をふんだんに使用したお料理ですよ。今頃叩き潰してるはずです。というか絞ってるというか」
 「叩き潰す……?」
 ティティの言ってる意味がまるで理解できないグロウ。
 叩き潰す、とは何のことを指しているのだろうか。
 少なくとも、目の前ではティティが心底楽しそうにほくそ笑んでいる。彼女のことではないだろう。
 何か、ものすごく嫌な予感を察知したグロウはティティに尋ねてみることにした。
 「……何を、叩き潰しているんだ?」
 「えー?」
 妖艶にも、無邪気にも見える意味ありげな表情。教えるかどうかを、少し迷っているようだった。
 まさか、とグロウが焦りを見せる。
 「……ワダツミは無事なんだろうな」
 「え、そっち? いや危害は加えてませんよ普通に。洗脳したりりょーじょくしたりはしましたが、後遺症とかそういうのはないはずです」
 「……そうか」
 一番の懸念が消えてほっとするグロウ。
 と、そこにワダツミのノックが響き渡る。
 「ああ、入っていいぞワダツミ」
 グロウが言うと、五体無事のワダツミが例のカートを転がしてくる。
 そこに乗っていたのは……
 「ジュース……」
 「アルコール入れても良かったんですけどね。グロウ様お酒飲みませんから」
 ジョッキに入った真っ赤なドリンク。
 鼻を近づければ、多少の生臭さを含んだ野菜ジュースのような香りがしていた。
 「トマトジュースか?」
 「いえ、ティティちゃんジュースです!」
 ティティが胸を張ってそう言い切る。
 と、ジョッキを持ち上げたグロウの手がピタリと止まった。
 「……それは、お前特製のジュースとかそういう意味での、だろう?」
 そうであって欲しいと言うグロウの確認は、いとも簡単に否定される。
 「ノンノン! ティティちゃんを磨り潰して液体にしたものです! 美味しいですよ、きっと!」
 「じゃあお前は誰なんだ」
 「どっからどう見てもティティちゃんでしょ! って、そっか。グロウ様には言ってなかったんだっけ」
 一旦ツッコんでから考え込み、よし! と手を叩いてティティは呪文をさらりと唱えた。
 そして指を一回、(妖精基準で)大きく弾く。
 すると。
 ――ぼてん。
 「!?」
 何もない空中から、妖精が一匹落ちてきた。
 いや、それは一体と表現した方が正確だった。なぜなら、その妖精……ティティに酷似しているそれは、呼吸をしておらず、ピクリとも動かないからである。
 光を有しない瞳に物言わぬ無表情。それこそ精巧な人形のようなその体は、いつも見慣れた可愛らしい笑顔の妖精とは別の、ぞっとするような美しさを持っていた。
 それを担いでグロウに見せるティティ。
 「はい、グロウさま! こちら量産型ティティちゃんです! 魔力値が全然なので死体しか創れませんが、一応構成物質は私と全く一緒ですよ!」
 生気のまるでない表情をした自分を抱えながら満面の笑みを浮かべ、死体の手をひらひらと振る。
 「私ならいつでも携帯用オナホールになりますが、不在時にはこっちをお使い下さい! 若干冷たくて固いかもしれませんが、ぶち込んでやりゃあ伸びるのでおしとやかな私を……」
 「………………ティティ」
 自分のコピーの身体で遊ぶティティに、グロウが冷や汗をかきながら尋ねた。
 「なんですか?」
 「…………つまり、この液体は……」
 グロウがジョッキの中を覗き見る。
 透明感がなく、濁った一色が粘り気を持っているそれに、何か小さな異物が浮いている。
 光に反射する、毛のような何かが真紅の中で光に反射していた。金色の、何かが。
 「いやだから私ですって。ティティちゃんクローン10体を丹念に叩いて潰して、はい、ティティちゃんジュースの完成です! 簡単でしょ?」
 「……」
 「まずは私の、っていうか妖精の味に慣れてからって事です。私本人がひどい目にあったりあってたりするとお優しいグロウ様は集中できないでしょ? だから私がこうやって隣にいながら……」
 いとも簡単に言うティティの顔は、はやく飲め飲めと能天気なものである。
 それに対しグロウの表情は、どうにも形容し難い苦々しいものだった。
 「…………」
 ジョッキを傾ければ、どろりと液状になった恋人が重力に従って蠢く。
 骨や内臓ごと擂鉢で潰され、肉塊へとなってもなお、ごり、ごり、と磨り潰される、物言わぬティターニアたち。それの、なれの果てである。
 そう考えてしまうと、グロウにこれが飲めるわけがなかった。
 「……」
 「えー……私はここにいますよグロウ様。こんなんしょせんただの妖精味ドリンクですって。これ飲めないようなら本当もう食べてもらえる見込みないじゃないですかー……はぁ、堕ち度が足りないですねぇ全く……」
 渋り続けるグロウにやれやれ、と呆れ始めるティティ。
 こんなことに付き合わされる方が呆れたい、とグロウが思ってることなど微塵も考えなかった。
 「こんなんじゃ今回の更新分終わらなくなっちゃうじゃないですか。しょーがない、私が一肌脱ぐとしますか」
 と言って言葉通り巫女服を緩め、肩を抜いてぱさりと脱ぎ落すティティ。
 一糸纏わぬ姿になったところでふよんと軽くジョッキに飛び、『自分』だった液体を足の前半分にだけ浸ける。
 そしてグロウが持ったままのジョッキの縁へと腰掛け、赤に染まった足先を向けた。
 「はいグロウさま、あーん」
 湿り気を帯びた股の縦筋を隠そうともせず、ティティは嗜虐的に微笑んだ。
 小さな足の裏からは、赤が糸を引いて垂れ落ちる。
 蝋燭の炎に照らされた翠の瞳が、薄闇の中ではっきりと光っていた。
 「――」
 その姿に、グロウは震えた。
 何に震えたのかはわからない。わからないが。
 グロウの口は、自然とティティの足へと向かっていった。
 そして。
 

 「――あはっ。グロウ様、くすぐったいですよぅ」

 グロウはついに一線を越える。
 舌に絡みつく生ぬるい肉の味は、格別に美味と言うわけでもなかったが。
 顔を紅潮させ荒く息を吐くティターニアを眺めながらのささやかな妖精食カニバルは、とても甘美なものに思えた。









 





 「……さて」
 ティティの膣内にたっぷり精を注ぎ込んだ後で、グロウはなおもジョッキに並々と入っている肉汁の処理に困った。
 雰囲気で舐めてしまったはいいものの、「はいここで一気飲みです!! グロウさまのー! ちょっといいとこみってみったいー!!」と言われて飲み干せる段階にまでは至っていない。
 もっとも、それを言う役のティティは激しいセックスの末に意識を失ったまま痙攣しているが。
 しばし部屋の中を見つめた後。
 「……肥料にでもするか」
 隅に置いてあった観葉植物の肥やしにすることに決めた。
 ワダツミにスコップを持ってきてもらい、軽く掘らせる。
 だばぁとそこにティティクローンの成れの果てを注ぎ、土を戻して慣らした。
 「これでいいか」
 
 数年後。
 この折鶴蘭から、金髪翠眼を持ち儚げで淑やかな、美の男神イムケイオスが創ったとまで評される美貌の妖精が生れ落ちることになるとは、グロウの知る由もない。

       

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