Neetel Inside ニートノベル
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第三十二話

『【   ―      報告】

       は    に     、  ている。
 今回、
                 は
         を     して        た。





    の他に
                  SCP―



      ?     つまり

 「                    、      。  は
     と、


              伝えて           」と、

 しかし、       SCP―    は

      の影響で

             日、    氏が

              いたって普通の

  元に戻す事は       結果的に

    いつも     いる
 また、               における


       報告を




















          、









                                     】

  ***

 レポートを読む者達の口から、感嘆とも感心とも取れる声が漏れ聞こえる。
 この──ここは、どこだろう──暗い『会議室』には紙をめくる音が乾いたメロディーとなって響いている。
「素晴らしい」
 そう言ったのはギデオン博士だ。暗くて表情は見えない。
「やはり、彼に頼んで正解だったね」
 これは……、ウィリアム・ウッドワース教授の声だ。
「これからも彼をメッセンジャーとして使うつもりかい?」
 この声は……、誰だろう?
「ハーマン、そのつもりはない」
 これは博士だ。
「なら処分するのかな?」
「我が有権者を処分とは、認められないね」
 これも、誰かわからない。
「処分するつもりはない。彼には仲間になってもらうか……、幸せになってもらいたい」
「幸せ?」
 博士が言った言葉に、思わず聞き返してしまう。
「そう。そうとも、君には幸せになってもらいたい」
 その場にいる全ての者の視線が俺に向くのを感じる。
「──」俺は喉元まで出かかった呪詛を飲み込んだ。
「しかし、出来れば我々の仲間になってもらいたい」
「……仲間」
「そう、仲間だ」
「悪人の仲間か?」
「驚いたな……。君は、我々を悪人だと思っていたのか?」
「当たり前だ!」
「我々は善良なる研究者だよ。悪意を持って行動しているわけでもない。君は──我々が世界征服を企む悪の秘密結社だとでも思っているのかい?」
「よくも──」
「確かに、研究や実験の過程で哀しい事故が起こってしまったり、犠牲を払う結果となったりする事もある。しかし、それはどんな研究においてもそうではないか。技術発展の過程においては、何千年も昔から繰り返されている事ではないかな?」
「だからと言って……」
「君の気持ちはわかる。確かに君は、僕が実験の為に作った。普通の人間、とは言えないかも知れない。済まない気持ちもある。だからこそ、こうして救いの手を差し伸べているんじゃないか」
「お前達の仲間になる事が救いだって?」
「君は、未知を探求する悦びを知らないか? 誰も知らない世界を、見てみたいとは思わないか?」
「……」
「財団がSCPと呼ぶ者達は、世界の不思議のほんの一端に過ぎない。我々が知っている事ですら。世界という巨大な化け物の細胞一つにも満たない。全てを知りたいとは思わないか? 全てを知る事が例え不可能だとしても、あと少し、もう少しでも知りたいとは思わないか?」
「……」
「我々は普通の人間ではない。最初からそうだった者もいれば、いつの間にかそうなった者もいる。しかし、未知の数から比べれば、所謂『普通』か『普通じゃないか』など、あまりにも些細な違いじゃないか」
「……騙されないぞ」
「騙す? 何を? 君を騙して仲間に引き入れようとしている、と?」
「……」
「君は私が作った」
 その言葉に、俺の心臓が痛いくらい躍動する。
「君は──、そう『普通』の人間よりも、未知に触れる事が出来る。そういう力を、可能性を持って生まれてきたんだ。その力をどう使うかは君の自由だが、無駄にするのは勿体ないと、そう思わないか? 財団で働くようになって、心躍る瞬間は一度もなかったのか? 自分が物語の主人公になったような、そんな興奮を感じた事は? その感情は間違いじゃない。恥ずかしがる事もない。君にはその権利があるんだ」
 先日と似た様な誘い文句だ。案外、芸のない奴だと少しだけ可笑しくなる。
「改めて聞こう、我々の仲間にならないか?」
 沈黙が空間を支配する。
 意外なのは、誰も博士の言葉を遮らず、異を唱える者もいないという事だ。
「──全面的に、賛成というわけではないが」口を開いたのは教授だ。「私も君の力は認めている。いや、認めざるを得ないだろう……。だから……、仲間になってくれる分には構わない。とはいえ、我々も仲良し小好し、という関係ではない。仲間になると答えたところで、行動を共にする必要もない」
 教授が何を言いたいか、よく、わからない。ただ、口調はひどく穏やかだ。
「それに、同行するには君の体は脆すぎる。頭は悪く無いようだし、Broken Tongueでも使えば多少は使いものになるかも知れないがね」
「教授。彼の返事を待たないか」博士がゆったりとした声で言う。まるで、俺が首を縦に振ると確信しているかのような話し方だ。「さあ、どうする?」
「……」
「さあ」
「断る」
 沈黙。
 しかし、それは驚きによるものではない。
 暗くてよくは見えないが、皆一様に「当然」といった表情だ。
「交渉決裂、だな」
 教授が腰を浮かせる。
「交渉? 勘違いしてもらっては困る」博士が言う。「ちょっとばかり、提案させてもらっただけだよ」
「何にせよ、会議は終わりだね。ええっと……、あれ? 今日は何で集まったんだっけ?」
「それは……、何だったかな?」
「まあ、良い。それで、彼の処分はどうする?」
「約束通り、彼の願いを聞くさ」
「約束?」
「そう……、ええっと、どんな約束だったかな?」博士が内心戸惑ったような顔で聞いた。
「俺の家族や、友達みんなを……、返してくれるんだろ?」
「ああ、そう……、そうだったね」
 博士はどこか釈然としない様子で、何かを探すような仕草をした。そして、手元のレポートに眼を落とした。レポートを見た博士はまるで恐ろしいものでも見たような表情をすると、まわりの人間にも聞こえるような音でレポートを叩いて言った。
「正当な報酬だ」

       

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