Neetel Inside ニートノベル
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ノンストップ奴短編集
そこに咲くのは焔のアネモネ

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「アレン、はやくはやく!」
少女が、青年の手を引いて店に入っていく。少女は幼さが残っているが、可憐さと美しさを備え髪は腰ほどまで伸ばしており、着ている服は育ちが良いのを証明するようなものでピンクを基調とするものであった。一方青年のほう、恐らく十代半ばであろう。青年は兄と思われても仕方ないであろう。同じく十代であるが、少女よりも顔つきは大人であった髪は金髪で、周りの男たちに比べるとやや、頭髪は長い。彼にも共通して言えるのだが、やはり服装は貴族、またはそれに仕える騎士に相応しいものであった。少女が入っていったのは花屋であった。赤、紫、白といった様々な色の花や、観賞植物が置いてある。
「連れてきたい店があると朝から聞いていましたがまさか花屋であったとは」
青年、アレンは額の汗を拭う。少女は店内に置いてある花を見て回ってははしゃいでいた。
「だってここにくればきれいな花が見れるんだもん」
「お父様のお力があればこの店ごと花を買えますし、庭園をつくることだって……」
「もう!アレンったら全くわかってない。」
少女は頬を膨らませる。一方アレンは渋そうな顔をしながら頭を掻く。
「今のでせっかくのデートが台無しよ!なんか買って!」
「話が前後してませんよ!しかも唐突です」
アレンは抗議をするが、少女は長く駄々をこね続けるのでとうとう屈服してしまった。
「じゃあひとつだけですよ。店の前で待っててください」
少女を店先で待たせ、アレンは花に目を通した。

  花屋には見慣れた花が多く並んでいた。パンジーにチューリップ。コスモスに薔薇、ビオラ。どれがいいか悩んでいると見慣れない赤い花が置いてあった。小さく、可愛らしいのだが、真ん中の部分、そこに黒いものが集まりその回りが少し白い。それが、毒々しさを覚える。回りには恐らくそれの色ちがいなのであろう、同じ種類の花が置いてある。
「これはアネモネ、花言葉は真実の愛、君を愛すです」
    横からこの店の主人なのであろう女性が話しかけてくる。長い金髪に、花屋で働くには不釣り合いな、美人ではあるが妖艶な雰囲気を出していた。
「ふふ、余計なことをしましたか?なにぶんお二人は恋人だと思ったので」
アレンは狼狽する。その様子を見て主人はおかしそうに笑う。
「気にしないでください。私、人をからかうのが趣味なんです」
悪趣味な女だとアレンは思う。
「でもいいと思いますよ、可愛らしくて」
「そうですか……」
  少女を待たせるわけにもいけないと思ったのだろう、アレンは植木鉢に入った赤いアネモネの花を一つ買って店を出た。

       

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