Neetel Inside ニートノベル
表紙

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「これは負けていられないな」
力をためるミレイを見てジャスバルも同様、剣に力を注ぐ。
『太陽剣(スピキュール・スピア)』
聖なる力を宿したエアルドによる刺突撃。突き出した剣先からまばゆい
光がはなたれ、その線上にいた屍たちを焼き尽くす。

「いまだ!! ミレイ」
消えた壁。その先にいるダグダに向けミレイの銃口が上がる。

『祝福されし弾丸(ブリッド・バレット)』

一閃。螺旋状に回転する光の軌跡がミレイとダグダを繋ぐ。まばゆい光
が辺りを包み、目に映るすべてを白が覆い隠す。一瞬の静寂。けれどもそ
れはすぐに崩される。

『アーティファクトに、聖霊の力は、無効だ!!』
ダグダの身の毛のよだつようなおぞましい叫び。白一色だった視界は、
すぐに黒が侵食し、その中心にはダグダの姿。

『貴様らはもう許さぬ、オワリだ!!「聖殺誉奪(ゴッド・ダグダ)」』
「ええ、終わりよ。あんたがね」
ダグダから漏れ出す闇が辺りを飲み込まんと舞い上がったその時、その
中心に位置するダグダの体からわずかに光が漏れ出す。
『なんだ、これは!?』
「知らないの? 光は闇を飲み込むのよ」
光が闇を照らすように、朝日が夜を穿つように。ダグダの中から出でた
光は瞬時に広がり、ダグダを討つ。
『が、ああ……』
光が消えたときそこに残ったのは消し炭となったダグダのなれの果てで
あった。



**


「このたびは、本当にありがとうございました」
無事、ダグダの破壊に成功したジャスバル達は、ダイサンを竜車で城ま
で送り届けていた。服を着替え、化粧を整えたダイサンの姿は、やはり姫
というのにふさわしい気品の中に、どこかあどけなさの残るかわいらしい
王女の顔へと変貌を遂げる。
「街の噂ってのもあんまし当てにできないな。普通にかわいい子じゃねえ
か」
エアルドに小声で感想を述べるジャスバル。けれどもすぐ隣にいたミレ
イにその声が聞こえてしまう。
「その噂もまるっきりウソってわけではないんだぞ」
「えっ、それはどういう」
「見ていればわかるわ」
そういってミレイは微笑むとダイサンの方に向き直る。

「それでは私たちは再び聖地巡礼の旅に向かいます。ダイサン様、くれぐ
れもお体にお気をつけて」
「何言ってるのよミレイ。この私が体を壊すわけがないでしょ。それより
も今回のことで学んだことが一つあるわ。もっと体力をつけなくちゃ。で
ないとゾンビに追われたときつかまっちゃうからね」
ダイサンは突如懐から、何か面のようなものを取り出し顔にあてがう。

「じゃあ、そういうことだから体力づくりに行ってきまーす」
「あっ。ダイサン様、お待ちください!!」
顔に付けたもの。それは何やらへんてこな装飾がされた仮面であった。
それを付けたダイサンはミレイの制止もなんのその。城の城門に向かい
駆け出していくのであった。

「うわ、ダイサン様!! 勝手に外に行かれては困ります」
「私たち門番の立場も考えてください」
「うるさーーーい!!」
「ダイサン様がまた逃げ出したぞ!!」
「王国騎士団緊急徴収。ダイサン様を探せーーーーーー!!」
門番の制止も振り切り城の外へと掛け出るダイサン。それを見てあわて
て追いかけていく城の兵士、騎士たち。突如凄然となる場内を見回し、ミ
レイは苦笑する。

「今のがダイサン様の普段の姿。街の噂もびっくりでしょ? ああやって
いつも城を抜け出して城下町を駆け回っているのよ。まあ、追うこっちの
身にもなってほしいところだけど、私はダイサン様のああいったところ
が大好きなの。だってかわいらしいでしょ」
「ああ、まあ、程度問題だけど元気なのはいいことだ、よな?」
「うん……そうだよね」
ミレイの問いにあいまいに返事するジャスバルとディリシア。エアルド
は『そんなわけないだろ』と毒づくが当のミレイには届かない。

「さあ、私たちも彼らを手伝って王女様を連れ戻しに行きましょうか」
「……まあ、このまま退散するわけにもいかないか。わかったよ」
「うん、行こう!!」
駆けだす三人。旅はこれからますます激化するだろう。けれどさらに強
固となった彼らの絆は、これから出会う強敵にも決して折れはしないだろ
う。いつか世界がすくわれる日を見て彼らの旅は続いていく。

       

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