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「天に輝くものすべて敵」
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17082



2014年11月4日連載開始。
2015年1月22日完結。
それも書き溜めていたようですから、実際にはもっと前に書き上がっていたのでしょう。
速筆の顎男先生ですが、これは相当さくっと読める短編でしたね。
前回感想では18話まで既読でした。
今回はそこから最後まで読みます。

■19.いるべき場所
槌宮が赤木に色仕掛けをして、愛馬の戦場復帰へ協力させようとする。
半裸になりつつ身の上話と愛馬への想いを切々と語る。
「ベルセルク」でキャスカがガッツの前で半裸になってグリフィスとの馴れ初めを語るかのようでした。
もっと文章表現膨らませてドラマチックに表現できそうな気がするのだが…。
何と言うかあっさりしすぎ。
もったいない…。
プロットだけ読んでいる感じです。
小ネタだけど、高知の表現がいい。
「高知あたり」って…高知なのか高知でないのかも定かですらないのかw
余りいじめっぽく描写するのは好きではないですけどこれぐらいなら良いかな。
ぞんざいな扱いが妙な笑いを誘います。

■20.『最高の自分』
溝口のロボット作りを通じて語られる愛馬。

>「最高の自分だけが全てじゃない……じゃ、頑張れよ。主人公クン」

桜庭のエスパーぶり。
この作品中、やはり桜庭だけが異色の存在である。
文化祭の準備の描写は大変良かった。
ウキウキとした空気感が伝わってくる。

■21.決壊
遂に衝突する愛馬と槌宮。
夕方の教室でってところが良い。
雨が降っている時は誰かが泣いている時というのが定番だけど。
夕方ってのも物語の中で影がさす瞬間ってことが多いよね。
短いながらも文章表現的にも冴え渡っていたと思う。

■22. 電池のようにいつか 夢のようにいつか
み、溝口ぃ・・・!!
溝口が何したってんだよ・・・!
それはそうと、クロスアンジュ面白いよね。
戦闘機が生物的なデザインをしている理由とかあるんだろうか?
生物的ではあるが異形の姿で、より化け物っぽさを表現するには適してるからということかな?
槌宮が強行手段に出て、戦闘機で学校を破壊してでも愛馬へ復帰しろと脅迫する。
それを子供のように泣きじゃくって拒絶する愛馬。
槌宮はそんな愛馬を無理に連れて帰ることはできないと、自らに言い聞かせるように諦めの言葉を呟き、立ち去る。
桜庭は赤木にバイクのキーを渡し、槌宮を追いかけろと促す。
そうだ、クラスメイトは愛馬だけじゃないのだ。
借りたバイクで走りだす赤木。
熱いねぇ、青春だねぇ。
80~90年代の学園ドラマしてるねぇ。
クライマックスな場面だけあり、読んでいて胸が痛かった。
槌宮と愛馬とどちらの事情もどうしようもない事だ。

■23.天に輝くものすべて敵
赤木のパイロット適性試験のくだり。
この世界でのパイロットがエヴァンゲリオンのパイロットのようなものというのは分かった。
そう考えると槌宮はアスカであり、愛馬はシンジくんだな。
槌宮も十分天才だが、愛馬の代わりにはなれない。
ツッチー…哀しいな。
タイトルの意味も分かる。
実に過酷な世界である。
おい、やっぱりあかるいはなしじゃないじゃないか!…くそっまた騙された!
余談だけど、こういうパイロットの選び方しているのなら、もっとエリート教育徹底させるべきじゃない?
それこそ人間味をなくして洗脳するレベルで。
適格者になれるなれないは別にして、可能性がある年代の子供たち全員に徹底した軍事教育を行うべきじゃないかな。
周囲も、赤紙受け取ったら万歳三唱で出征に送り出せる感じで。
アイドルみたいなノリで「普通の女の子に戻ります!」が許されるのはどうかと思う。
世界存亡の危機というからには、それぐらいしていないと不自然というか。
まぁ、そんな感じになっていたらそもそもこの作品自体が成り立たなくなるか。
また余談だけど、「パシフィック・リム」っていうエヴァンゲリオンやマジンガーZなどのオマージュなハリウッド爆発物な巨大ロボット映画がある。
あれもトラウマを抱えた主人公が出てくるけど、それを克服して再びロボットに乗り込んでいた。
何が言いたいかと言えば、本作はそういう分かりやすいハリウッド物とは真逆なんだなぁと。
そしてやっぱりというかなんというか。
愛馬は「もう書けねぇ」となってる顎先生の分身。
槌宮は「それでも書く」となってる顎先生の分身。
愛馬に比べれば凡人だが、悲壮な覚悟を持ちつつ地獄へ落ちていく槌宮。
何ともかっこいいではないか。
うん、槌宮にはもう少し女子高生気分を体験させてあげたかったね…。
ちなみに私はエヴァではアスカが一番好きです。
スパロボではシンジは放っておいてひたすらアスカを強化します。

■24.Star dust fighters (終)
そして日常への回帰。
このゆるゆるした空気も槌宮の犠牲の元に成り立っていると思うとどうしようもない哀しさが漂う。
くるみ先生、桜庭、桃子、愛馬。
彼女らとのゆるゆるした日常にほっとするのも確か。
コメントでホットチョコレートのような…って形容があった。
私はインスタントスティックタイプの葛根湯のような味わいを感じた。
弱っている時に飲むと元気になれそう。
お手軽にだけど。

総括します。
というか、ツイッターで思わずぼやいてしまったが、感想を書くのがしんどい作品だった。
まず最初に甘い事を言えば、顎シリーズの中では抜群に読みやすかった。
そう、読むだけならねw
作品を評価したり感想を書くとなると難しい。
沢村~から続く路線の一つの完成を見た気分。
極端に文章量を減らした弊害として、読みやすくはあるけど物足らなさはある。
それでも洗練されているから余り気にならない。
文章センスは流石だし、笑わせてもくれるし、泣かせてもくれる。
他の有象無象の新都社小説をちぎっては投げられるハイレベル。
次に厳しい事を言えば、やはりインスタントだなと。
プロットが透けて見える。
予想外の展開には余りならない。
「顎はこういうものが書きたいんだな」というのが良くも悪くも伝わりすぎる。
レシピ通りに作れているんだけど、冷凍食品とかインスタントの味って予想通りの味すぎてつまらないよね。
ちょっとぐらいえぐみが出ても良いのでアレンジしちゃおうよって言いたくなる。
顎先生では初めて読んだのが「あの世横丁ぎゃんぶる稀譚」だったんですけど、別にあれぐらい重厚な描写をしてもいいと思う。
小説を書く目的が…方向性が…とか、難しいことはさておき。
そういうものを考えず、食べたいものを食べるように、書きたい事を書きましょう。
ボクサーじゃないんだからストイックに減量するのも程々にってところでしょうか。
私はボクサーよりプロレスラーの試合の方が観ていて好きです。
ボクサーの緻密さとプロレスラーの豪快さを併せ持てるなら、最強じゃないですか!
コーラがぶ飲みして、肉でも食べて太りましょう、顎先生!
もし神戸に来られたら神戸ビーフおごりますよ!
まだアンタは隠居したり老け込むような年じゃないはずだ。

       

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