Neetel Inside ベータマガジン
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「FAKEMAN-avenge-」
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七瀬先生の新作。
FAKEMANの続編?と思ったらリメイクだった。
旧作を読んだのは2012年ごろ、文芸作家インタビューをやっていた頃ですね。
あの時はインタビュー前に七瀬先生の小説を全部読もうと思ったけど、流石に無理で、読切だったのでこれを読みました。
仮面ライダーのような変身ヒーロー、探偵、喫茶店、ハードボイルド、そしてランドマークタワーw
七瀬先生の好きなエッセンスを全て凝縮したかのような一作でした。
新都社初投稿作で、七瀬先生にとっても思い入れのある作品のようです。
そのリメイクですから、気合も相当入っているのでは?
私もリメイクだからこそ、前作を遥かに上回るものと期待して読みたいと思います。

■一『暗闇の中で』
主人公の年齢設定を高校二年生にしたようです。
内容もよりラノベっぽくなってますね。
物心つく前に両親と妹を殺され、だけど何となく誰かに殺されたと確信している主人公・春久。
復讐に燃えて他者を寄せ付けない金髪ピアスのヤンキーとなっています。
でも春久には構ってくれる幼馴染の少女・あずさがいます。
あずさの両親は菓子店を営んでおり、そんな幸せ家族の中で春久は育てられた。
あずさとは毎日仲良く一緒にスーパーへ買い物に行っているようですね。
…この設定、敢えてなんだろうけど…。
ハードボイルドをソフトにしたけど、コーヒーに安っぽいミルクを足して薄めてる。
昭和の仮面ライダー1号を強引に幸せいっぱいなプリキュアの家庭に住まわせたって感じで…。
世界観のそぐわないキャラ同士が一緒にいるというか、居心地の悪さを感じます。
学生にするならストイックに孤児院育ちとかでも良かったんじゃない?
こんな幸せいっぱいな家庭で育ったなら、春久は笑顔を忘れたような性格にはなってない気がします。
もしくは、あずさの両親は、あずさは愛情を注いで笑顔溢れる性格に育てたけど、春久は放置したってことかしら?
まぁ、春久が執念深く頑なで、物心つく前の事件を根に持っていたってことなんでしょうけど。
三つ子の魂百までと言いますしね!
ただ、復讐の為に他者を寄せ付けない性格になっているくせに、桃井家には世話になるのがヌルイ。一人で生きていけよって思った。
まぁ、あずさは人質要員なんだろうけど。
最初の敵と遭遇し、勝ち目がないのに突撃する春久。
学校でもカツアゲされていた気弱な学生を救おうとする。
やはり見た目ヤンキーだけど正義感あふれる性格です。
全然ヤンキーではないですねw
御使蘭という少女に死にかかっていたところを救われ、仮面ライダーみたいな変身ヒーロー・ディアボロに変身する春久。
御使蘭は父親のマッドサイエンティスト御使天を殺そうとしている。
御使天は街の不良をそそのかしてディアボロに変身させて暴走させている。
あなたの心の花しおれちゃってるよーって言ってくるプリキュアの敵みたい。
春久はそんなディアボロを止める正義のヒーローという位置づけ。
だが自分の行為は偽善であると自嘲し、蘭は春久を偽善者のヒーローFAKEMANと名づける。
うん、一見まったくの別物ですけど、大筋は旧作とそんなに変わらないですね。
御堂春が島津春久となり、天使天が御使天になっています。

■二『光の中では』
学校帰りにちょいとフェイクマンに変身して銀行強盗を退治する春久。

>『あなたは自分が誰かと訊かれて、「人間だ」って答えるわけ? あなたの行いは人間としては正しいのかもしれないけど、あなたは人間じゃないし、対ディアボロ用のディアボロなのよ? 他のディアボロに存在が感知されるような真似は慎みなさい』

蘭にこのように注意を受ける。
単純な正義のヒーローじゃないというのを強調する為にも、こういうエピソード挟むのは良いですね。
また、蘭に一般的にディアボロになった人間が陥る初期症状「自分の力に溺れる」状態になっているとも見抜かれる。
この時の春久の精神状態に注目。
復讐の為に他者を寄せ付けない態度を取っていたものの、幼馴染の暖かい家庭で共に育った訳でしょ?
見た目ヤンキーでも善良な人間の倫理観はあるのでは?
成り行き上、人間を辞めてディアボロになったけど、人間の倫理観まで捨ててしまっているのか?
蘭は捨ててしまっているのかもしれないが、春久はまだ人間の倫理観を捨ててはいなさそう。
という訳で、これは後々、蘭と春久が倫理観の面で仲間割れをするフラグにもなりそう。
桃井家の食卓。
正義の味方現る?のニュースを鼻で笑う春久。
おいおい、余裕じゃないか。
偽善だとは思っていても、目的の為に非情になれるのか?
あずさやあずさの両親らを犠牲にしてでも構わず拳を振りぬけるのか? という場面に期待が募ります。
そして新たな敵ディアボロ・アルメが登場。
言動が凄く小物臭いw
でも来ました! 期待していたあずさが人質展開。
更に、商店街の一般人がアルメの操り人形になって襲い掛かってくるという展開!
フェイクマンの力を使って無関係の人間を殺せるのか?
結局、一般人を殺さない程度にぶっ飛ばすものの、あずさを人質にされては何もできない春久。
復讐の為なら鬼になるというのは口だけだった事が発覚。
その後、静美緒との出会いを通じ、人間とかディアボロとかではなく、島津春久であろうという結論に達した模様。
便利な言い回しだが、要は人間性を捨てずに戦うという事だね。
うーん、仮面ライダーテンプレですなぁ…。

三話はまだ途中みたいなので、今度読む事にしましょう。
総括します。
旧作に比べ、舞台や人物設定がより商業ラノベっぽくなりました。
女性陣とのやりとりも着々とハーレム構築&鈍感系ラノベ主人公してるし。
文章もテンポも良く読みやすい。
一般受けするのはこちらでしょうね。
ただ、直喩が多くて分かりやすいのは良いのですが、多用されると安っぽく感じます。
旧作ほどではありませんが相変わらず誤字もある。
話自体も底が浅いというか、テンプレというか…。
丁寧なんですけど、その分、展開読めてしまいますね。
旧作の公開が2010年でしたっけ?
超上から目線で言わせてもらうと、4年経っているなりの成長は感じられますが、光るものは感じられない。
どんどん新作を書いていくスタイルをとやかく言うつもりはありませんが、一度じっくり一つの作品に集中しても良いのでは?
このままだと七瀬先生の才能を無駄に希釈しているだけのような気がしてならない。




       

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