Neetel Inside 文芸新都
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書き散らし駄文録
ホウキ星

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「どうしても・・・?」

「うん、決めたことだから。」

月が照らす丘で、僕らは草の上に横になり
最後の約束を交わした。

お互い、言葉もないままに
夜の闇に、耳を澄ませ。
星空にホウキ星を探した。

「星が、見えるね。」

「手が届きそうだ。」

手を伸ばし星座の形に指をなぞってゆく
二人の間に会話はほとんどなくなっていた。

ただ、寄り添いあい、指で星座をなぞるだけ。

横目で、寄り添っている彼女を見る
少しだけ潤んだ瞳。
真っ直ぐに、星空を眺めていた

「綺麗だね。」

「うん。」

ぽつりと感想を漏らし
それに彼女が答える。

明日には、僕らは離れ離れになってしまう。
きっと、もう会えないだろう。
そういう運命だったんだ。

そっと、彼女の手に自分の手のひらを重ねる
夜風で手は冷えてしまっていた。
それを暖めるように包み込む。

「手、暖かいね。」

「暖めれるだけ、そのことに感謝してるよ。」

自分の言ったことに頬を赤らめながら
また、星空を眺めた
今見ている星の光は、何億年もかけて届いてきた光だ。
生まれた場所から何億年もかけて旅をするのは
悲しくないんだろうか、辛くないんだろうか。

永遠にも思える時間を旅してきた光へと僕は問い掛ける。
勿論、返事はなかった。

「本当に綺麗。このまま吸い込まれてしまいそう。」

「そうだね。」

時間はこの間にも刻々と過ぎていく
そして、過ぎ去った時間へは二度と戻れないのだ。

「私、忘れないから。」

答える事が出来ずに、僕は俯いた。

「ずっと空を見てても辛くなるだけだわ。
 私が見るのは、明日からのあなたのいなくなった未来だもの。」

さよなら
さよなら
さようなら。いとしい人よ。

君はいつしか僕を忘れ、好きになった人と体を重ね
家庭を築き、そしていつか、家族に囲まれながら
死んでゆくだろう。

せめて、その幸せが、あなたに訪れますように。

去ってゆく君の背中を見ながら。
僕はそのことだけを願った。

その間にも星空は、変わらず輝いている。

「君たちのように、永遠にも近い寿命があれば
 僕は愛を詩うことだってできたかもしれない。」

返事は、勿論ない。

「さようなら、星たちよ。僕らが、空を見上げることを忘れた大人になったころ
 そのとき僕は、また星を見上げるだろう。そのときまでは、僕が気づかないように
 ずっと、僕の姿を笑っていてほしい。」


「だから、そのときまで、さようなら。」





それからの話は、よくわからない。
未来はいつも、あやふやだから。

       

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