「女中の袖に手を入れて」 短編集(エロ)  えろま 作

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たしか以前はこの短編集のタイトル「トゥー・レイト・ショー」でしたよね? 13日には『女中の袖に手を入れて』の最終話更新でした。こちらの作家さんは他に別名義でも作品を発表されています、よね。とても有名な作品が今も伝説として語り継がれています、よね。おそらくその作品名くらいは知っているかた多いのではないでしょうか。読んだ読んでないは別として…。文芸・ニノベ作品をある程度数読む読者さんはこちらの作家さんのことはもうご存知かと思います。特に語る必要もなさそうですね。新都社での在籍は決して短くないともうだと思います。またその文章にも特徴があって心地よいステップを踏むような作風で書いてくださる。今回感想を書く『マウス・トゥー・マウス』『女中の袖に手を入れて』でもその要素をありありと見せてくれました。
短編集で実際この企画前から読んでいたのは『女中の袖に手を入れて』の11話目まで。感想を書くにあたり、最終話の24まで読ませてもらいました。残りの『フェアリー・テイル』、『TITI'Sキッチン』、『注文の多い料理店やないかい』の3作については後日読んで感想書き次第また更新したいと思います。



「マウス・トゥー・マウス」
■高校生・慧が好きになって交際を申し込んだ女子・かなめにはとんでもない秘密があった。それは――。
同じ学校に通うかなめに告白する慧、しかし彼女は一風変わった返しでその告白を受け入れます。この時点で、うん、何かあるな~と思ったのは確か。でもその後に続く彼女の変貌に驚かされました。
さらに慧とかなめとの間で交わされる会話も胸にこみ上げてくる切ない感情が噴出しそうになるところで上手にドーンと笑いの渦へ蹴り落とされます。
狙って作家がやっているのか、作家の地なのか定かではないが自然体で肩の力が抜ける文章に振り回されます。それがまた心地よい。嫌な気がしない。
お話の展開も早くあれよあれよという間もなく慧はかなめの家の敷居をまたぐ結果になっています。
会話分では、かなめのボケ具合も冴えています。二人ははれて恋人同士になりますが、大事な濡れ場でも申し分なく魅せてくれました。そこだけに気をとられて読んでいると忘れてしまうのですが重要な最後の落ちまでも申し分なく作り上げられていて短編作品として読んで満足できる作品でした。
すごく良かったです。ある種のファンタジー癖をくすぐられた一作でした。



■作中特に印象に残った箇所
・「人間ってのはさ、どうしても見たくなっちゃうんだよ。怖いものと、かわいいものは」
真理だと思う。でもどうしてだろうと思う。二つのものは全く異なる感情を起こさせるのに。不思議だ。
・どこが違うというんだ。普通の女の子と。
正常な判断をできなくなっていることを全く意識できてないのは理解できる。また読んでいるほうもこのかけ離れた非現実に違和感を覚えないくらい引きずりこまれる。そしてそんな自分にツッコミを入れて読むことになる。
・「噛まない」
重要。痛そう。それはかなり。
・「でもね、ハゲはね、Mでもね、SMプレイの時に女王様にハゲって言われたら心に傷を負うんですよ」
笑った。マイルドに毛量控えめと言ってもらえるとマシでしょうかね。


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「女中の袖に手を入れて」

■各話ごとの感想
 1
謎の富豪のご主人様にその身を買われメイドになったマルカ。彼女はご主人様の館に来る前は劣悪な環境の娼館で働かされていた。
以前までの生活環境があまりにも荒んでいたためかマルカがご主人様ハルの元での恩恵に戸惑い、それいてあどけないしぐさや表情がとても可愛らしい。
マルカ「不幸ボケ&ハルと満月へのツッコミ」かます。
マルカの先輩メイド満月「忠犬エロボケ」かます。
ご主人様ハル「下ネタボケ&マルカと満月へのツッコミ」かます。
三者が上手いバランス作り。
2
風呂でかい。羨ましい。ながいことでかい風呂にはいってないなあ。
ハルの颯爽とした下ネタへの入り方が鮮やか。一見エロ好青年。満月は芯の強い忠義と正義のエロメイド。とても面白いキャラクターとして並んでいる。2話にしてこの世界にぐっと心掴まれえる感じがします。
満月はハルに恩義があるらしいが……。マルカのお願いが実に彼女らしくてほっぺをむにゅってしたくなりました。
3
暇さえあればタバコ吸ってるみたいな満月のセリフにどっと笑ってしまった。
マルカの拙いご奉仕にストレートなハルのコメント。好印象です。新人に仕込んでいくのも重要な主人の務めである。
4
ネタとばしてくるハルに真面目に付き合う満月。二人のかけ合いがみごとでどうしても笑ってしまう。
満月が今の満月として存在しているのは自分の選択による結果。何があったのだろうと深く興味をそそられました。彼女の徹底ぶりが魅力でもあるのだけどそれ以上に訳が隠されているのは明白かと思われる。
このさきこれはずっと伏線としてつづくだろうな……
5
マルカ、メイドとしての生活が始まるもよう。が――。
あのゲームが登場。なつかしい! 大好きでした。連鎖技を駆使して相手をつぶす。
ここでの潰され役は、ご想像。
6
満月のご奉仕、そして身体のスペックについて。うっほっほっほほほ、すげえ。
描写凄い良い。鮮やかすぎるくらい。さすがです。
7
セックスに関すること、性的行為に「道」があるのなら、満月はそれを極めんとする人に映ります。
彼女のハルへのご奉仕精神には武芸に通じる、まさに「道」が刻まれている。そんなふうに感じました。
8
マルカの「恋」への思い。そこでハルは良い反応してくれます。いい奴ですね。
でもその反応こそがマルカの気を引くことにもなるんですがね、罪な男でもある。
9
満月のハルへの思いは盲信とマルカには映るけど、盲信ではない確かな言葉や態度を満月は示しているので彼女の愛?は深いと思いました。
満月がマルカを抱っこする図は良かった。
ならば全員、相思相愛――ってのはちょっと……う~ん、これ考えさせられるセリフ。
10
満月とマルカの関係、ここまではどことなく、牧場の馬や牛の親子を見るような、温かく満たされる情景に感じます。エロいこともあるんですよもちろん。でもね、それだけではない柔らかな温もりもある。
11
朝のテンション笑う。
まさかのマルカS。それでいて恥じらう彼女にまた笑う。可愛い。
12
ハルとってもマルカにとっても、ここでの満月は本当に母ちゃんではないですかい。(褒めている)
どうも脳みそで構図が……、
満月>ハル>マルカ
こうなりがち。パワーバランスが時々配分難しいですがそういうのは特に気にせず読めてしまう不思議な作品。
13
お兄ちゃんと呼ばれて喜ぶのは妹のいない男の幻想。よくそういわれます。何でしょうこの背徳感みたいなもやもや。悪いか!
皆バカが故にバカを覚えず、誰がバカであるかも覚えず、すなわちバカの混沌とした平和をもたらす。
マルカがすっかりなじんできて楽しくなってきました。
14
人として成長もしなければいけない年頃のマルカ。そういう過程で揺れる彼女の気持ちを満月はうま~く支えます。ずるいと思う部分も読みながらあったけど、決してそれだけではないことに後で気づかされます。だからここは黙って読むべし。
15
ハルのボケが機知に富んでいてよい。(スチャ)
満月の爆発。拍手喝采。ああ、きもちえー。
16
よいな~よいな~。この話よいな~。それで片づけてしまえるなら本当に最高だけどな~。
その良さは一言で語りきれない。それほど深い愛情が伝わってくる。
文章は至って軽く書かれているのに……凄い。
この中で満月がいかに大きな存在であるかそして彼女がいなければ残りの二人はダメッダメになること請け合い。
17
ハルと満月に昔あった出来事それは――。
生きるってのは楽じゃない。だからこそ簡単にそれを捨てるのは美しくないと思います。辛くても足掻き続ける姿が美しい。その辛さや屈辱を味わうことも本人にしかできないことだから。
満月はそんなふうに生き延びた人。彼女のただならぬ魅力はそこにあると思いました。
18
泣く。
19
婦人科医にエロティシズムがあるのではなく、さらにそこにいる女医、それらをふまえてその哲学が埋め込まれているのだと理解できました。笑った。
マルカの娼館で傷めた陰部は順調に回復。ハルと満月は何やらお祝いを計画します。
よき家族です。
20
日本の漫画の英訳を稀に読みます。面白いです。新都社作品の作家さんや読者さんにも中にはWebで英語版の商業漫画を読まれる方もいると思います。翻訳版で「お!」と思わせるセリフがあったりで発見がありますね。英語上達には翻訳版、ぜひどうぞ。さすがにロシア語は無理。わははー。
21
マルカの誕生日に向けプレゼントを考えるハルと満月。この二人、異性ではありますが、置かれている境遇からか全く同じ風味で構成されているように見えます。相変わらず鮮やかな切り口で笑わせてくれます。
どんな贈り物をするのでしょうね。
22
マルカへのプレゼント、なかなか愛情ある物が揃っています。まあ、最初はこれで普通でしょうね。
とっておきともいえる後半のプレゼントはまだ続くようです。
マルカの目の前に現われたのは――。乙女はみんなじゃないでしょうが、どこかでこういうの期待するものなんでしょうか。こういう演出……。男子、素でできるか?
23
言葉が出ない。出したくない。眩しい。(褒めている)
24
満月の言っているハルと互いを思う気持ちが真実であればいいと思いました。現実ではなかなかうまくいかないことも多いのでそういうのがとても美しくこの物語では書かれている。
馬について、マルカのあの誕生日から計算して、数年が少なくとも9年以内ならいいなと思った。(馬の年齢参照)


■富豪に身を買われた少女。ご主人様と先輩メイドと一緒に心温まる愛と官能の日々が始まる。
柔らかく温かみのある官能ギャグ作品。と言ってしまえばそれで済む。しかしそこには壊れそうになるくらい切ない痛みのある人の心や厳しく現実に立ち向かっていく人の意志もしっかりと書かれていました。それでいて読み心地は極めて軽くテンポも抜群に良い。
まぶたが熱くなってどうにもできない、感情が溢れ出てきそうになったかと思うと次の瞬間にはドカーンを爆笑の渦へ蹴落とされ真っ逆さま。声を出し、膝を打って笑うこともしばしば。喜怒哀楽のバランスでいえば喜3怒1哀2楽4のようになるでしょうか。趣のある一作でした。新都社の小説ではエロい作品しか読まない。そういう方も多いと思いますが、エロい物をエロく書くというのは実はそう簡単にはできないです。おっぱいで抜きたい。だから「おっぱい」だけ書いても極端な話それだけで抜けませんでしょう。それを抜かせる「おっぱい」にどう書くか、そこが作家に求められるところだと思います。そしてそれができる作家というのはそう数多くない。文章を書くことがある程度上手でないとできないことなのです。この作家さんは特に官能作品に突出して優れているというわけではありません。ですがやはり既に持っている文章を書く力とセンスがこの作品でも存分に活かされているんだろうと思わされました。う~ん。満足だ。


■作中特に印象深かった箇所
・表情がとても作り笑いには見えないのが恐ろしかった。
想像するとコワイ。こういう人が本当におこると…
・別枠でペットとして飼いたい。
できればそうしたいと思うこと現実でもしばしば。
・後日、撮影していた映像を二人で鑑賞。
こんなことを何て素敵に微笑ましくできるんだ。架空ファンタジー感が凄い。
・繊細にして面倒なメンタルのハル
笑う。不謹慎かもしれないけど笑う。事実を知るまでは。
・人助けとは、他人の力を使ってするものではありません。
ぐさっとくる一文。誰もが分かっていることだけど改めて言われると刺さる。大事にした方がいいこういう意見。
・嫌なことがあっても……セックスに逃げるようにはなるな
ハルが言うとひときわ強く感じる。誰にでもわかる冷静な返しでまっすぐ。現実的でないかもしれないけどこれが実際できればその人は強いと思いました。ただ、それができないくらい弱い人がいるのもまた世の中の暗部で事実。


以上、この短編集13日更新された分含め、読めたところまでの感想でした。