Neetel Inside ニートノベル
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 神がボクに与えた能力、それは。


与能力ゴッドブレス?」
「そうだ。それが今ボクがエイダに見せた能力だ」
 ボクは能力のことをエイダに説明する。
 能力が発現した以上、当初の予定ではこの能力を使い人々を支配するつ
もりであった。ゆえにこのように能力のことを人間に話すなど論外……
けれども、神がボクに与えた能力が『与能力』である以上事情は変わって
くるのである。なんとも厄介なことだ。


「与能力は文字通り、対象とする相手に能力を付与する力。対象となり得
るのは契約を交わした相手。生物であればどんなものであっても対象とな
りうる」
 けれども自分自身にこの能力を行使することはできない。なぜなら、一
人の人間に肉体は一つしかなく、それゆえ元は神の肉体であったこれらの
能力も一人につき一つしか持つことができないからだ。
 能力を持つものが新たに能力を与えられるとそれまで持っていた能力は
消える。つまり与能力を自分に行使しようとすると能力を受け取る容量が
足りないため当然与能力は消えてしまう。けれども与能力がなくなれば能
力の付与は行われない。つまり与能力は正常に発動せず、最悪の場合消え
てしまう。
 とうぜん、そのようなことするわけがない。

「へえ、じゃあボクでもアーエルと契約を交わせば能力が使えるようにな
るの?」
「ああ、もちろんだ」
 ボクは笑顔でそう答える。
 自分に能力が行使できない……ならば、別の対象に与能力を使うしかな
い。そうなると対象選びが重要となるわけだが、まだ与能力について試さ
なければならないことはいくつかある。
 なぜなら、今ボクは人間の体だ。天使だったころならいざ知らずこの体
で能力をどの程度まで引き出せるのかは未知数だ。現に神が行使した与能
力では今ボクが手にしているこの『木野 栄田』と書かれた本は出てこなかっ
た。ボクが推察するに、ボクの現在の状態では与能力の真価を十分に発揮
することができないためにこの本がそのサポートとして具現したのではな
いか、そう考えるのだ。

 つまりこの与能力、万全を期すためには試験運用は不可欠。そしてそれ
には契約者が必要である。
 そして、契約者と選ぶ生物にもいくつか条件がある。まず、人間である
こと。与えた能力の動作確認に言語は不可欠であるからだ。
 次に能力を手にしてもボクの管理下を離れ使用しないこと。野心のある
人間であれば能力を手にした瞬間、暴走を始める。そして最悪ボクの命も
危険にさらされるからだ。
 そして最後、ボクに友好的であること。これは能力の試験運用を円滑に
進めるためにぜひとも欲しい条件である。

 けれども、ボクに人間の知り合いはほとんどいない。この条件が当ては
まるのは現状で2人。木野栄田とその母親だけ。
 母親に関しては関わりが少ないため確証は持てないがエイダに関しては
話して分かった。彼は善人だ。
 そしてボクの話を信じる純真さ、同居人と言う環境。すべてが彼を契約
者に推している。これだけ条件がそろっている彼を契約者としないわけに
もいかないだろう。

「じゃあ、その能力。ボクに使ってよ」
 ここでエイダからの申し出、もはや断るべくもない。彼の純真に漬け込
むようで悪いがこれは向こうも望んだこと。せいぜい利用させてもらうよ、
エイダ。

「わかった、エイダ。契約だ。『与能力《ゴッドブレス》』」
 光を帯びるエイダ。それを見やり、ボクは内心ほくそ笑む・・・・・

「これで、ボクが」
「ああ、あなたは今から能力者だ」
 ボクの言を聞き無邪気に微笑むエイダ。彼はうれしいのだろう、ボクに
手を差し出す。

「アーエル、ありがとう」
「エイダ、こちらこそ」
 手を取り合うボクとエイダ。
 終わらせるためのボクの物語は無垢な少年、エイダとの出会いによって
幕を開けるのであった。

       

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