『感想』
「平穏世界」 滝杉こげお先生の作品
冗長の方では春恵の視点。簡潔のほうでは憲一の視点で書かれていました。一つ時間軸を二人の人物で書き分けて二作品の間に変化をつける面白さを感じました。
春恵の方では彼女の内面的な描写、憲一への執着から見える憲一の描写が色濃い。そこから春恵のはかり知れない憲一への心配や不安な気持ちがよく伝わってきます。
片や憲一視点からはそのような春恵の気持ちを意に介さない追い求めるものへの固執を感じられます。短くまとめられた憲一の視点では彼の視界の鮮明さがありありとしていました。春恵のことは思っているけども、いつしかそれは建前となり、猛進するだけになっていく自分をどうにもできない様がなんともいいがたい。
こげお先生のもつ独特な静けさはそのまま。終わらない世界がそこにあったと思います。
以下五つ★数で感じた指数(あくまで主観)
冗長さ ★★★
簡潔さ ★★★
相違の魅力 ★★★★
短編としての満足度 ★★★★
「グッドバイ」 ヤマダ=チャン先生の作品
魅力的な文章が多かったです。ヤマダ先生独特の読ませて感じさせる作風。まさにそれが生き生きしていたと思います。移りゆく季節にのせた人物の気持ちの変化が、儚いけれど心に突き刺さる。
長いとは思ったけど、スルスルと読めてしまった。苦痛と感じるところも特にありませんでした。冗長として読み手に苦痛を強いるなら、もっとねっちりとウザイくらいの表現があってもでも良かったかもしれないです。(良かったというのがはたしで適切か微妙w)
簡潔のほうは、冗長作品からの変化後を楽しめました。読み手の推測で残ると思っていた箇所と、作家の意図はまた違っている。そんな対比を楽しめた気がします。あとがきのほうでのべられていた簡潔でのぶったぎった感。確かに感じられます。簡潔でももう少し文章が残されていても良かったかもしれません。終盤少し駆け足に感じました。
推敲の段階を追う面白さ、その難しさを感じさせてくれた気がする貴重な作品でした。
以下五つ★数で感じた指数(あくまで主観)
冗長さ ★★
簡潔さ ★★★
相違の魅力 ★★★★
短編としての満足度 ★★★★
まとめ
おまけ企画の簡潔短編作品企画にも参加くださってありがとうございました! 冗長からの変化は読んでいると本当に面白いです。今回感想〆きりまでの参加作品はわずかだったけど、二点のことがわかりました。
冗長に感じる作品を書くことは難しい。(書いてみて感じた)
作品に対して心底冗長に感じるということも難しい。(読んでみて感じた)
この二つ。
冗長から簡潔にする発想も作品により色々あって当然。
何をどうしたらいけないなんてことはない。
自由な発想、それが企画のミソでもあった。
これからも自由さを楽しめる文芸界隈であったらいいと思います。
感想おわり