Neetel Inside ニートノベル
表紙

女心なんて俺が知るはずないじゃないですか
始まりの前にヘタってます

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結婚とはなんだろう。

愛?
家族?
共同生活?


人生の墓場なんて言う人もいる。

でもそんなこと、正直どうでもいい。



コイツラに今から、
どう言えば良いのか、それだけが俺の頭をうめつくしていた。



「んー?どうした直人。お前さっきから進んでねぇじゃん。」
「何、そんな難しいトコやってるわけ?…って、何?ログインすらしてないんですけど?」


見た目がいいわけでもない。
お金をもっているわけでも、稼げるわけでもない。

ただなんとなく大学を卒業して、
なんとなく採用された会社についた。


そんな俺らが唯一共通していること、


それは、


女にモテない。

悲しい事実が男の絆を強くする。



学生時代から続く、悲しくも儚い、けれどもどこか安心できるこの絆に、俺は今、終止符を打つことになるかもしれないのだ。




「おれ…」


「?」
「どうした?」



「おれ、嫁さんもらいました。」


     

神谷と後原は学生時代からの付き合いだ。
親友というより、ゲーム仲間に近い。

それでも俺にとっては、数少ない理解者たちだった。

神谷はそこそこ整った顔をしている。目が細いのがコンプレックスのようだが、同い年とは思えない大人の考えを言うことがある。
神谷真也というのが本名だが、名前だけでなく、こいつの神すぎる性格からあだ名は神(しん)ちゃんと呼ばれている。収入の大半をゲームの課金に費やするためか、女には縁のない残念な性格イケメンだ。

後原大地。ゲーム以外やる気を見せたことがないこいつが営業職に就いたのは意外だったが、どうやら外回り中にずっとゲームをするのが動機だったらしい。仕事よりも女よりも何よりもゲーム優先の姿には頭は下がるが、こいつのようになりたいとは思えない。



学生時代にはよく三人で集まり、各々が持つ情報の交換を朝方までするのが恒例となっていた。
居心地は良かった。だが、そこには”リア充”なんて世界はありえなかった。




……。

しばらくの沈黙が続いたあと、後原が口を開く。
「なんだ、直人。お前の気持ちは分かる。ちなみにコレ、俺の嫁」

そう言うと後原は、スマホを見せてきた。

「~~~~~っ!」



「これは…」
神谷はそっと後原のスマホ画面に手をやると
「これはっ、魔法少女まるかのひむひむちゃんがないかっ!!?」

いつも冷静キャラの神谷が大声を出す。

「最近の俺の嫁で…」





「えっ、違う。
 そういうことじゃない!俺の嫁三次元‥」


「っ!?」
空気が一瞬張り詰めた。


「直人、お前。」

     

ガタタっ。
2人は思わず席を立つ。

「直人お前っ、妄想じゃないのかっ!?」
「いや、二次元、二次元なんだよなっ!!?」

俺はゆっくり、もう一度、今度は2人の目を交互に見つめた後に
「いや、マジのやつだ。」



「…おめでとう」
「あぁ、そうだな。まずはおめでとうだな。」

意外にも、2人は冷静だった。

「えっ?」
神谷はともかく、てっきり、「とりあえず爆発しようか?」ぐらいのジョブは来ると思っていた。


「それで、お前がガチでおかしくなってないなら、本当にいるかもしれないその嫁さんは?」
神谷は細い目を更に細める。


「直人よ、俺らはもうリア充を憎むガキじゃないんだ。だけどよ、いくら久しぶりの再会だからって、彼女できたの報告の前に嫁さんもらったって、いきなり過ぎな気もするんだけど?」

後原がマシなことを言った←



2人に突き放されるかもしれない…
悩んでいた自分に恥ずかしさを覚えた。同時に、感動した。

「しんちゃん!後原!!」




――やっぱり、こいつら以外に話せるやつはいない――


「その嫁のことで、お前らに相談があるんだ。」






     

「俺の、いや、世間ので良い。…一体嫁さんってなんなんだ?」


神谷と後原は静かにお互いの顔を見合わせ、察したようにうなずきあう。2人は俺の顔を見たかと思えば、
今まで見たこともないドスの効いた表情を出しながら声を揃えた。

「知るかっ」


えっ。ええっ。えっ?
俺は焦った。


後原は俺の顔に迫りながら
「直人よ、俺らはもうリア充を憎むガキではないっ。だからって、 リア充のノロケを聞くほどハートは強くないんですけど?」
「あっ、あれ?耳鳴りかな?耳がキーンってする。
 あっ、違ったや、心だ。心がキーンって痛むみたい‥・。」
「しっかりぃぃぃぃっ!しっかりするんだ!!しんちゃんーっ。」



「ちょっ、お前ら、そんなノリいらないからっ!コレ、ノロケじゃないから。ガチで真剣な相談だからっ!!」



「あぁぁああぁぁあ。もう俺限界かもしれない。大人になったんだって必死に自分に言い聞かせてまともな対応していたけど、ガチなノロケかよっ。俺もう限界なんですけど!」

「分かるよ、しんちゃん。俺も直人の最初の一言から心は一回死んでいたよ。でも爆発しろなんてベタなセリフなんて卒業しようって俺、がんばたよ。脳内で直人一回殺ってからの『おめでとう』をなんとかしぼり出したのにっ。」

「後原ぁぁあぁああぁあ。」
「しんちゃぁぁぁあぁああん!!」




変わってないのか。
社会人になってもこいつらは…。



「とまぁ、心は未だにキーンっとしているが、どうしたんだ?」
「あぁ、脳内ではお前を瞬殺中ではあるが、話なら聞くぞ。
 答えてやるかは別だけどな。」


「お前ら…」

俺は改めて、話を始めた。






     


―――――――――


嫁に出会ったのは半年前。

会社帰り、ゲーム以外することもなかった俺は、
悲しいが
いつものようにまっすぐ帰宅路を歩いていたんだ。

毎日同じ。



たまに誘われる先輩との飲み会も
話すネタも特にない俺はいつも相槌を売っては
下手な愛想笑いを浮かべるばかり。

職場でも一人。
家路も一人。
帰っても一人。

唯一ゲームへのログインが俺のすること/楽しみだった。




いつものように、いつもと同じ駅を降りた時、
ホームで号泣してる娘がいたんだ。


ヘタレな俺は
横目で見つつも通りすぎた。



「あの、」


まさかの、その娘から話しかけてきた。

女子から話しかけられたのなんてかなり久しぶりだったから
緊張した。

「あの、鞄全開ですよ?」



「…」



それが嫁との出会い。







―――――――――




!?

「ごめん、ちょっと待って。
 お前泣いてる女子に何言われているわけ?」

しんちゃんから冷静な突っ込みがくる。

「ごめん、俺は既に状況が理解出来ない。」



「俺もビビった。
 まさかのツッコミだぞ?泣いてる娘が普通ツッコムか?


 …だけど、
 それがきっかけでなぜか結婚することになったんだけどさ、
 今更ながら、この俺が結婚することに俺自身思考が追いついてい ないわけで…。」


「で、久しぶりの再会を集うことになったわけなんだな?」
既に理解が追いつかず頭を抱える後原とは違い、神谷は終始冷静…


神谷からひとしずく血が流れる。



「神谷ーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!?」




「直人、多分それ、マリッジブルーというやつだと思う。
 でもごめん。頑張ったけど、俺やっぱり聞くので精一杯だった… みた…い。」

神谷、お前ってやつは…、
血反吐が出るのを分かっててなお最後まで俺の話を…









後原、神谷

明日からいよいよその嫁さんが新居に引っ越してくるんだ。





そう、新婚生活というものがスタートするんだ。


       

表紙

小野間 はく 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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