「イニシャルコード」 作者:浅途ユカ
【第一印象】
大学デビューをした少女が戦闘シミュレーションをする話? なんというか話がいきなり過ぎて、本筋が何なのかわからなかった。バレットのことが中心か、姉を探すのが中心か、というところに割り込んできた謎の少女。うーん、少しとっつきづらかった。
【ストーリー】
始まったばかりなのでこれといってストーリーはない。というか、初っ端から怒涛の勢いで説明ラッシュがやって来たから理解するので精一杯だった。最初から何をやっているのか逐一説明するのもいいが、もう少し易しめというか、理解のし易い入り方でも良いと思う。
タクティカルバレットの解説は実際のそのシーンを交えながらした方がいい。そうじゃないと実際の戦闘シーンでまた同じような説明をしかねない。というか、しないと恐らく覚えていない。まずはこういうゲームが有る、そのメンバーを探している、ということだけ分かればよいのでは?
【キャラクター】
既に指摘されている通り、キャラクターの印象が薄い。タクティカルバレットの説明もあって、彼女たちの情報はもうどこにもない。服装はとびきり奇抜なものでないかぎり個性とはいえないのでやはり台詞や行動で個性を出すべきだ。
たとえばカフェという場所なら、落ち着きなくコーヒーを混ぜたりだとか、ケーキの苺を最初に食べたりだとか、そういう行動で個性はいくらでも出せる。今のままだと座ったまま全く動かずに話をしている感じなので、もうちょっと人間らしさがほしい。そもそも会話が少なすぎる気もする。世界観の説明よりも、まずは出てくる人物の話を。
【オリジナリティー】
タクティカルバレットは面白いと思う。が、いくら緻密に考えている設定であっても、小出しにしないと覚えきれない。面白くて読み返されるのは作家の至上の喜びだけど、前の話を忘れて読み返すのは喜びではない。キツイ言い方にはなるけど、もう少し自然に解説をしてくれればと思う。
【文章力】
かなり高い。文章力だけなら上位を張れる実力はある。読み手を感心させるキレキレの表現もいくつかあるので、それだけにそれ以外の練り込み不足がもったいない。文章については別段問題ない。ただ、これがラノベというのならば流石に淡白すぎる。
【総括】
かなり高レベルの実力を持っていそうなので、辛口にさせてもらった。現時点では必要最低限の感情しかない人間が指示通り演技しているようにしか見えない。なんというかキャラクターのアドリブがない。のでいくら明るい言動をしていても嘘っぽく見えてしまう。ラノベらしい設定ならばもうすこしキャラクターに重きを置くべき。ラノベはキャラクター小説だと揶揄されているけどその通りだ。個性的なキャラなくしてラノベではない。なので、そのあたりこれから改善があることを祈っています。