Neetel Inside 文芸新都
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コネリ一高原の頂上に陣地を構え、
トレイシーフォレストという大自然を盾に白黒兎連合軍は丙武の攻撃を防いでいた。敗走と退却を強いられていた白兎軍の面影は最早無い。
トレイシーフォレストまで踏ん張ってくれた部隊のおよそ8割近くがセキーネに率いられ衛生部隊に引き渡たされたため、現在戦っている人員がほぼ一新されたようなものだから、面影が見えないのかもしれない。
それでも敗色濃厚の雰囲気に満ち溢れていた白兎人族兵士の士気が向上したのは事実だ。 それはやはり黒兎軍が友軍として合流してくれたことが大きい。憎しみ合っていた過去を水に流し、まだ諦めるなと手を取り、立ち上がらせてくれたかつての敵。 堪え切れない憎しみを断腸の想いで棄ててくれたことへの感謝・・・
五体は崩壊間際の家屋の様に軋み、肉は疲労で引き千切れ、最早意志とはいえ無関係に 倒れようとも
この気持ちだけで 死ぬまで戦える
「くっ・・・黒兎万歳ぁああい!!」
敵を深追いしすぎ、瀕死の重傷を負った白兎人が歓喜の断末魔をあげ散って逝った
「手こずらせやがって・・・!」
丙武軍団のガタルカナル大尉が血の海に沈んだ白兎人兵の顔をブーツで蹴り飛ばした。 蹴り飛ばされた顔からは血飛沫と歯が飛び散ったが、それでもガタルカナル大尉の気分は散れるどころか より一層曇った。
「クソ・・・! こいつら 満面の笑みで死んでやがる!」
血まみれの亡き白兎人兵の表情は
壮絶な攻撃を受けて絶命したとは思えぬ程 本当に安らかだった。
まるで愛する女の腕や膝枕の中で
死んで逝けたかのように穏やかだった。その穏やかさが逆に不気味だった。
「こいつ・・・断末魔にまでクリッカーの名を・・・」
「元々 こいつらとクリッカーって
敵同士じゃなかったのか?」

末端の兵士である彼等でも白兎人族と黒兎人族が互いに憎しみあっていることは知っていた。ガダルカナル大尉伝てに彼等が同盟を結んだことも薄々は知っていた。
だが、この戦い振りは同盟などという言葉では表現出来ない程異常だ

この白兎人兵だけでなく
他の兵士達の死に様を見てもその大多数が互いの名を叫びながら、互いを庇いながら、互いの手を取りながら戦い散って逝っている
「俺達が何故こいつらに手こずっているのか 分かった気がするよ」
ガダルカナル大尉は苦虫を噛み潰したかのような顔をしながら煙草に火をつけた。

       

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