Neetel Inside ニートノベル
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 アルペジオの活躍によりローパーは残り一匹となっていた。
「待って。あの口は捕食に使うものではなさそうね。ローパーの生態が知りたいから、誰かあえて口の中に入ってくれない」
 ズゥのとんでもない要求を受けて、メゼツは仲間たちを見渡した。
「くっ、右手が」
「膝が」
「頭が」
 メゼツはローパー要員を求めてガヤと目を合わせた。
「私、伝説の膝医を知ってるから、ヒザーニヤを後送するわね」
「えっ、でも俺、膝くじいてるから動けないって」
「なんでそこで膝を屈するのよ。大丈夫、膝はまだ片方残っているわ」
 ガヤがヒザーニヤに肩を貸す。
「畜生、俺の膝よ、持ってくれ。行こう、伝説の膝医の所へ」
「そいつが聞きたかった」
 ガヤとヒザーニヤは戦線を離脱し、森を出て大交易所に向かう。仲間たちは「あいつらうまいこと逃げたな」と見送った。


 入れ替わりにエルフの一団が森の奥から駆け込む。女ばかりのそのパーティーは、すでに一戦交えた後の様子でくたびれている。赤い服を着た仲間を背負っている眼鏡をかけたエルフが、息絶え絶えに口を開く。
「人。助かった。私は傭兵団ペンシルズのラビット」
 安心して緊張の糸が切れたのか、ラビットはぐったりと倒れこんだ。緑のマントを着たエルフが話を継ぐ。
「私はフロスト。仲間が獣神帝の一味に襲われています。ご加勢いただけませんか」
 獣神帝の勢力を捜索していたメゼツには断る理由はなかったが、一つだけ問題があった。
「お前らエルフじゃん。アルフヘイム人の言うことを甲皇国人が聞けるか! 」
 雑多なメゼツの仲間には、甲皇国軍の軍服を着たアルペジオがいる。それを見るなりフロストは膝をついた。
「そんな」
「待ってくれ」
 赤い服を着たエルフが腹を押さえながら立ち上がっている。
「クルトガ、平気なの? 」
「確かに甲皇国人がエルフを憎むのも分かる。私が逆の立場でも断っただろう。タダで助けてもらおうとは思わない」
 クルトガは首から下げていたネックレスを外した。緑色の宝玉が光っている。それをメゼツの首にかけた。
「その宝玉は獣神帝の居城に入るための鍵。それをよりにもよって甲皇国人に渡すなんて」
 フロストが非難し止めようとするも、クルトガの信念は止まらない。
「仲間の命に勝る宝などない」
 その信念は戦中で止まっていたメゼツの魂をほんの少しだけ揺り動かした。
「ズゥはクルトガとラビットの看護、フロストはシャルロットとアルペジオを敵のところに案内してやってくれ」
 メゼツは加勢するとも、しないとも言わず、ただてきぱきと指示を出した。
「すまない、いや、ありがとう。すべてのエルフになり代わり感謝する」
「礼はいい。それよりも敵の居場所を詳しく教えてくれ。イメージできればテレポートで飛べるんだ」
 クルトガもこの樹海の地理に詳しいわけではない。目印のない森の様子をイメージできるほど詳しく説明することはできなかった。そこでメゼツは仲間の姿を詳しく伝えてもらい、イメージすることにした。
 イーノという名前で、見た目は幼女だが凄腕の召喚士。今はスランプ中で、マン・ボウしか召喚できない。ウェーブのかかった青髪、赤目。へそが見えるほど大きく開いた青い服、短パン、その上に青いマントを羽織り、先端に赤い水晶玉の付いた簡素な杖をかざす。
 イーノが敵と戦う姿をメゼツはイメージし始めた。

       

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