Neetel Inside ニートノベル
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「そこ座ってて。今飲み物出すね」
 奥から彼女が出してきた紙パックには、なんと大きく「カレー」と書かれていた。
「待って、ちょっと待って」
「え? どうしたの? あっためた方がよかった?」
「冷たいのかよ。それ以前にカレーは飲み物じゃないでしょ」
「え? 違うの? 美味しくない?」
「美味しいことと飲み物であることは関係ないでしょ。違うもの飲ませて」
「分かった」
 一時期ネットのデブの言葉として「カレーは飲み物、主食はピザ」というのが流行ったなと思い出す。しかし彼女はデブとは程遠いのだが……デブ活でも始めたのか。うら若い乙女だというのに。
「うどんでいい?」
「いいわけないでしょ。うどんも飲み物じゃないから」
「でも汁とかすすると美味しいよ?」
「だから美味しいことと飲み物であることは関係ないって言ってるでしょ」
 紙パックを手に取ると確かに「うどん」と大きく書いてある。中を覗くと白いうねうねしたものがどっしりと紙パックの中に入っていた。これどうやって注ぐんだろう。のびたりしないのかな。
「こういうのどこで買うの? スーパーでは売ってないでしょ」
「香川だと普通に作るよ?」
「作るのかよ!」
 そういえばここは香川県だっけ。いやいくらうどん県民でも茹でたうどんを紙パックに入れて保存はしないと思うが。のびるでしょう。
「もう水でいいよ、水道水汲むから」
 コップを持って流しに立つ。蛇口を捻るとオレンジ色の水が流れ出てきた。
「うわ! 水道管ダメになってるよこれ」
「えー本当? そういえば今日から愛媛の方の水系に変わるって言ってた」
「みかんジュースじゃん!」
 香川だから油断してた。臭いをかぐと確かに錆びた鉄じゃない、柑橘系の良い香りだ。
「一息ついたらご飯作ろうか」
 コップに注いで飲んでいると、リビングから彼女が声をかけてきた。
「でも水道がみかんジュースだよ。何も作れないでしょう」
「大丈夫だよ。カレーうどんのつもりだったし」
「飲み物じゃないって分かってるじゃん!」

       

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