Neetel Inside ニートノベル
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 二人の若い学生が、すっかりジュノンボーイのかたちをして、大分都市部の、オフィスビルが林立するところをこんなことを言いながら歩いておりました。
「ぜんたい、ここらの街はけしからんね。スーパーもコンビニも1店舗もありやがらん」
「オークワのすご得市に2、3回巡り合わせたら、随分痛快だろうねえ。店内をぐるぐる回って、それからパーッとやるだろうねえ」
 それは大分のオフィス街でした。始めの学生は、少し顔色を悪くして、じっともう一人の顔を見ながら言いました。
「僕はもう戻ろうと思う何、戻りに牛丼かファミレスにでも寄ればいい」
「マクドナルドも出ていたねえ。そうすりゃ結局同じことだ。では帰ろうじゃないか」

 その時ふと後ろを見ますと、一軒のさびれたバーがありました。ネオンサインには「クラブ・バーYAMANE」と書かれていました。
「君、ちょうどいい。ここはここで中々風情があるんだ。入ろうじゃないか」
「おや、こんなところにおかしいね。しかし何か食事が出来るんだろう」
 入口には張り紙があって、赤い字でこう書いてありました。
『当店は指名の多い店ですからどうかそこはご承知下さい』
「中々流行ってるんだ、こんなオフィス街の中で」
「そりゃそうだ。見たまえ、店の少ないところであれば客を独り占め出来るだろう?」
 ずんずん廊下を行きますとまた戸があって、そこにはこう書いてありました。
『お客様ご指名です。どうかここで服を着替え、化粧をして、それから愛想の一つも覚えてください』
 二人はぎょっとして顔を見合わせました。
「どうもおかしいぜ。指名というのはどうやら向こうがこっちにしているんだ」
「つまり、僕の考えるところでは、このクラブは、来たお客様に指名させて接待させるのではなくて、来た客を指名して接待させる店とこういうわけだ」
「つつつつまり、ぼぼぼぼくらは……」
 がたがた震えてもうものが言えませんでした。
 二人は無事にうちに帰りました。しかしその時に得た心の痛みや、お尻の痛みは、ご飯を食べても、お風呂に入っても、もう消えることはありませんでした。

       

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